アジアNo.1に輝いてから2年。元侍ジャパンU-15代表戦士たちが甲子園で全国制覇狙う
8月10日に開幕する第103回全国高校野球選手権大会。2年ぶりに開催される夏の甲子園の夢舞台に臨む選手たちの中には、中学時代に日の丸を背負って戦い国際大会で活躍した選手たちも複数出場する。
今回はその中から2019年8月19日から25日まで中国広東省深セン市で行われた第10回BFA U15アジア選手権に出場し優勝を果たした侍ジャパンU-15代表(※軟式)の選手たちを紹介する。
※同選手権では、アジア地域における野球の普及と発展のため、硬式球に近い性質でありながらも安全性が高く、表面が革でなくゴム素材のため雨の多い国でも長持ちするKENKO WORLD BALL(通称Kボール)を使用。そのため、U-15代表の選手たちは一般財団法人日本中学生野球連盟が主管し、中学校の野球部やクラブチームで軟式野球をしている選手たち約18万名から18名を揃えてこの大会に臨んだ。
プロ注目のスラッガー
2年生ながら既に高校通算34本塁打を記録しプロ注目のスラッガーとなっているのが浅野翔吾(高松市立屋島中→高松商)だ。
アジア選手権では1番・左翼手で全試合に出場し6割を超える出塁率を記録。山場となった対台湾・韓国の両試合でも安打を記録し、韓国戦では相手投手の暴投を見逃さずに本塁へ激走し虎の子の1点を挙げた。筋骨隆々の体格ながら足も速かった。そして、そのパワフルな打撃は硬式に移行する高校でより本領を発揮しそうだと感じたが、その目論見通りの活躍を現在見せている。
香川大会では2番・右翼手を任され、準々決勝で満塁本塁打、決勝戦で勝ち越し本塁打を放ち、ここぞの場面での勝負強さを発揮。打率も.412、盗塁も5試合で3個と、打撃以外でも活躍し2大会連続21回目の出場に貢献した。身長は170センチと小柄だが、体重83キロの中に詰まった馬力と身体能力は甲子園でも大いに目立つ可能性を秘めている。
結成5年目の優勝バッテリー
アジア選手権優勝に欠かせない存在だったのが、ともに強豪・門真ビックドリームスから代表に選出された上加世田頼希・渡辺優斗のバッテリーだ。上加世田は台湾戦と韓国戦に先発。台湾戦では4回1安打無失点で抑えて試合を作り、韓国戦では長打や四死球で出塁を許し苦しい投球にはなったが球数制限の上限に達した3回途中までの登板で相手にホームを踏ませなかった。
一方、正捕手の渡辺は要所で盗塁を刺し、リードで投手の特長を引き出し大会通じての無失点優勝に貢献した。台湾戦では好投手たちから2安打を放ち、韓国戦では中継プレーからの返球が難しいショートバウンドになったがミットを低い位置から丁寧にすくい上げて、そのままタッチ。間一髪アウトにして上加世田を助けた。こうした攻守での活躍が認められて、大会の最高殊勲選手にも選出された。
「甲子園でもまたバッテリーを組みたい」という夢を持って共に敦賀気比高校に進み、今春のセンバツ甲子園も出場。初戦の常総学院戦で上加世田は6番・一塁手として先発出場し、8回の1イニングは登板もし、途中出場の渡辺ともバッテリーを組んで夢を叶えた。だが試合は延長13回の激闘の末に5対9で敗れ、上加世田は2打数1安打と1回1失点、渡辺は盗塁を刺す場面もあったが3打数無安打に終わり、悔しさを味わった。
今夏の福井大会で渡辺は1試合のみの出場だったが、上加世田は4番・三塁手として12打数6安打3打点8得点と大活躍を遂げた(投手としての登板は無し)。ともに甲子園で春の借りを返したい。
高い技術力光る好内野手
アジア選手権で内野手として好守が光った金田優太(川口市立芝西中→浦和学院)と大森駿太朗(松戸市立常盤平中→専大松戸)も甲子園に出場する。
金田は主に三塁手として出場し、スーパーラウンド最終戦の中国戦では先発登板。酷暑の中で3回無安打無失点と好投し、打っても犠飛による1打点でチームのコールド勝ちに貢献した。
今夏は主に2番・遊撃手として出場し27打数8安打4打点と活躍し、投手としても9回3分の1を投げて2失点と好投し埼玉大会優勝に貢献した。
大森は1年秋から正二塁手の座を掴み、さらに精度を高めた守備力と秋季大会通算.361の巧打でセンバツ甲子園に出場に貢献。センバツでは中京大中京のドラフト候補右腕・畔柳亨丞の前に自身は4打数1安打、チームは完封負けと悔しさを味わったが、この夏再び臨む大舞台で高い技術力を走攻守に発揮したい。
中学生にして日の丸の重みを背負い、普段の生活とは勝手の異なる異国で集団生活をしながら野球に打ち込んだことは彼らにしかない財産だ。その貴重な経験を生かし、さらなる飛躍に期待したい。