2018年度グッドデザイン大賞 おてらおやつクラブが受賞 お寺のおそなえをおさがりとしておすそわけ
2018年度グッドデザイン大賞が2018年10月31日に発表され、おてらおやつクラブがグッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)を受賞した。
おてらおやつクラブは、全国のお寺の「おそなえ」を、「おさがり」として、さまざまな事情により生活に困窮している世帯(特に子どものいる家庭)へ「おすそわけ」する活動だ。
2014年に奈良県の安養寺(あんようじ)の住職、松島靖朗(せいろう)さんが始めた。今では、この活動に賛同する寺院は全国47都道府県に及び、975のお寺が賛同している(2018年10月31日現在)。連携している支援団体は392団体。毎月9,000人の子どもたちが、おてらおやつクラブからおやつを受け取っている(2018年10月31日現在)。
筆者は、日本初のフードバンクであるセカンドハーベスト・ジャパンの広報を務めていた2014年に、この活動を知った。全国には78,000以上のお寺がある。そのお寺でも、食べられるのに無駄になる食品(食品ロス)が出てしまっているということを知り、それを無駄にしないで必要とする家庭(特に子どものいる家庭)につなぐ、という活動に共感した。
それ以来、全国の食品ロスの講演では、おてらおやつクラブの理念や活動を紹介している。2015年には、奈良の松島さんに会いに行った。
この活動は2017年にNPO法人化し、監事を仰せつかったので、理事会にも参加し、2017年5月に奈良・東大寺で開催された報告会でも講演した。
4,789もの応募の中から選ばれた大賞
公益財団法人日本デザイン振興会(東京都港区)の公式サイトの2018年度グッドデザイン賞受賞概要によれば、2018年度のグッドデザイン賞への応募は4,789件あったそうだ。
そこから審査され、1,353件のグッドデザイン賞が決定。さらに、独自性・提案性・審美性・完成度などの観点から審査され、これからのモデルとなるデザインとして位置づけられる「グッドデザイン・ベスト100」が選ばれた。おてらおやつクラブが選ばれ受賞したのは、その100の中の「大賞」だ。
審査委員には、おてらおやつクラブの仕組みや考え方自体が評価された。
授賞式当日にはTwitterにも祝福の声が
10月31日の授賞式では、Twitterにも祝福の声があふれた。
あるもの(食品ロス)とないところ(貧困)をつなぐ
2014年から、おてらおやつクラブの活動を見てきて思うのは、肩の力が抜けている自然体の活動であることだ。
ともすれば、こういう社会貢献や支援活動というのは、力が入り過ぎることがある。お金がない、人がいない、場所がない、など、ないないづくしで人が去っていったり、活動が消滅したり、団体がいなくなったり・・・
自然な形で、宗派を超えて賛同者がじわじわと増え、気づけば全国47都道府県すべての900以上ものお寺が賛同していた。
支援を受ける家庭はもちろん、お寺の方からも、無駄に捨てないで済むようになったという喜びの声があるという。
松島さんが2013年に抱いた思いと行動が一つの花として開いた
おてらおやつクラブは、2013年に大阪で発生した、母子餓死事件がきっかけで始まった。28歳の母親と、3歳の子ども。アパートで餓死した姿で発見された。
母親が書き残していた言葉がある。
当時、父親になったばかりの松島さんは、ショックを受けた。「お寺でも何かできることがあるのでは」と考え、それが、お供え物を無駄にして捨てずに必要なところへつなげるという「おてらおやつクラブ」になった。
新しいことを始めると、周りにいるのは理解してくれる人ばかりではない。時には心無い言葉もあったかもしれない。今回の受賞で、いろんなことが報われて、一つの花が開いた。これを機に、より多くの人に、おてらおやつクラブの活動を知ってもらえるようにと願っている。