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開幕戦でNTT東日本の新人・上出拓真が好投【第46回社会人野球日本選手権大会デイリー・リポート1】

横尾弘一野球ジャーナリスト
NTT東日本の新人・上出拓真は、ヤマハの強力打線を相手に8回1失点の好投。

 2年ぶりの開催となる第46回社会人野球日本選手権大会が、ほっともっとフィールド神戸で幕を開けた。開幕戦に登場したNTT東日本とヤマハは、5月の東北大会決勝と同じ顔合わせだ。その東北大会決勝では、ヤマハが8回コールドの12対4で圧勝した。ただ、NTT東日本がルーキーの上出拓真、ヤマハは2年目の清水 蓮と、東北大会準決勝で白星を挙げた若手の成長株が先発するだけに、ロースコアの接戦が予想された。

 ヤマハの清水は出端を挫かれる。プレイボールの初球を下川知弥に二塁打され、火ノ浦明正を歩かせて無死一、二塁。桝澤 怜の2球目に重盗を決められると、桝澤の遊ゴロと向山基生の中前安打で2点を奪われる。序盤は力みもあったか制球に苦しんだが、それでも追加点は与えない。対するNTT東日本の上出は、丁寧に先頭打者を打ち取り、毎回ヒットを許すも無失点で凌ぐ。

 ヤマハは4回裏二死から矢幡勇人の二塁打と笠松悠哉の中前安打で1点を返したが、上出は最少リードを必死に守る。果たして、8回表に向山がソロ本塁打を放つと、その裏を3者凡退に斬って取る。春先から順調に経験を積んできた上出は、8回を8安打6奪三振の好投で、最終回のマウンドをベテランの大竹飛鳥に譲る。試合前に大会10回出場の表彰を受けた大竹は、ヤマハの反撃で1点差に迫られたものの、何とか逃げ切ってルーキーに白星を贈った。

「野球を楽しめた」

 全国の舞台での初登板をそう振り返った、上出の次の登板も楽しみだ。

日本一の味を知るベテランが存在感を示す

 第2試合は、ENEOSの新人・関根智輝とJR九州の左腕・井上翔夢が立ち上がりから安定した投球で、3回まで互いにゼロを並べる。4回表に四番・山田遼平が左中間スタンドへ運ぶソロ本塁打でJR九州が先制すると、その1点が重くなりかけた6回裏二死二塁から山﨑 錬の中前安打でENEOSが追いつく。そこからはともに決め手を欠き、1対1のままタイブレーク(今大会は一死満塁から任意の打順)の延長に突入する。10回表のJR九州は、ENEOSの四番手・柏原史陽にクリーンアップが打ち取られて無失点。その裏のENEOSは、先頭の山﨑が高いバウンドで内野手の頭を越える右前安打を放ち、サヨナラで激闘を決着させた。

延長10回裏一死満塁でサヨナラ安打を放ったENEOSの山﨑 錬(右)は、篠原 涼(左)の出迎えを受ける。
延長10回裏一死満塁でサヨナラ安打を放ったENEOSの山﨑 錬(右)は、篠原 涼(左)の出迎えを受ける。

 2013年に入社した山﨑は、即戦力ルーキーとして51年ぶりの都市対抗連覇に貢献。その後も主力としてチームを牽引しているが、4年連続で都市対抗出場を逃すなど苦しさも嫌というほど味わってきた。昨年、黄金時代を築いた大久保秀昭監督が慶大から復帰し、都市対抗通算100勝を達成して復活への手応えをつかんだだけに、この大会でも上位に食い込みたいところ。その出足となる試合で4安打2打点の活躍は、山﨑が悔しさの中でも着実に進化してきたことを示したと言っていい。

「ボールが見えている感覚があった。ベスト4以上に進出し、常勝ENEOSを見せたい」

 山﨑の頼もしい言葉は、若手が多いチームを勢いづけるはずだ。

復活したエースが今大会のシャットアウト一番乗り

 日本製鉄広畑とJFE西日本による第3試合は、静かに回を重ねていく。3回まで走者をひとりも許さないJFE西日本の左腕・中川一斗に対して、日本製鉄広畑の先発は3年目の川瀬航作。変則の右サイドハンドから投げ込むキレ味抜群のボールで、新人だった一昨年に8年ぶりの都市対抗出場に導く活躍で注目された。だが、ドラフトの有力候補と目された昨年は、なかなか思い通りの投球ができなかった。

 迎えた勝負の3年目は、4月の岡山大会で優勝の原動力に。最高殊勲選手賞と最優秀投手賞に輝く投球には、ルーキーの時のキレ味が戻っていた。ライバルチームのアナライザーも「去年はモデルチェンジが上手くいかなかったという印象でしたが、今年は2年前のいい時に戻っている。都市対抗予選に向けても、警戒しなければいけない存在です」と、懸命にデータを集めていた。そうして、真価を問われるマウンドでも、辛抱強く味方打線の援護を待つ。

4月の岡山大会で最高殊勲選手賞を獲得した川瀬航作(日本製鉄広畑)は、JFE西日本を完封した。
4月の岡山大会で最高殊勲選手賞を獲得した川瀬航作(日本製鉄広畑)は、JFE西日本を完封した。

 すると、6回裏二死から、川瀬の同期で岡山大会では首位打者賞を手にした堀口裕眞がショートへの内野安打で出塁し、続く岡 勝輝が初球を振り抜く。レフトスタンドまで届く2ラン本塁打でほしかった先制点をもぎ取ると、援護はそれで十分とばかりに終盤もスキを見せない。結局、120球の熱投でJFE西日本をシャットアウト。散発の5安打6奪三振で、完全復活を強く印象づけた。

(写真提供/小学館グランドスラム)

【6月30日の対戦カード】

9:00 北海道ガス×東邦ガス

12:30 三菱重工East×伯和ビクトリーズ

16:00 日本通運×王子

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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