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夏のコロナ病棟 最前線の看護師が汗だくで熱中症リスク

倉原優呼吸器内科医
(写真:WavebreakMedia/イメージマート)

焼け石に水の冷房

真夏のコロナ病棟で問題になるのが、暑さです。冷房をかければいいじゃないと思う人もいるかもしれませんが、低めに温度設定しても暑いのです。

その理由が感染対策用の「個人防護具」です。白衣などの上からビニール製の長袖エプロンを着ている施設が多いのですが、通気性がほとんどなくて、ビニールの内側にべっとりと汗がくっついてしまうのです。

「タイベック」といって、つなぎで上下に着るタイプの個人防護具もありますが、あれもなかなか大変です。防寒具じゃないのか、というくらい熱がこもりますので、業務中に熱中症になるリスクは高いです。

図. 通常の個人防護具・タイベック(イラストACより使用)
図. 通常の個人防護具・タイベック(イラストACより使用)

ある研究では、タイベックを装着した状態で、座位安静20分間・階段昇降20分・座位安静20分間のテストをおこなうと、体温が上昇し、汗で体重が200g以上減ることが分かりました(1)。まさに、強制ダイエットスーツと言えます。

暑いなら病棟で冷房をガンガンにかけてもよいのですが、やはり発熱でしんどい新型コロナ患者さんが寒い思いをするのは忍びないですし、医療従事者が耐えるしかないのが現状なのです。

ドライブスルーでPCR検査をおこなっている医療従事者は、炎天下の中で個人防護具を着ているわけですから、冷房という緩和策が一切ありません。灼熱の太陽とガチンコ勝負です。

変異ウイルスにより地獄のような惨状に陥った東南アジアで働く知り合いの医療従事者がいるのですが、恐ろしい気温で冷房も効かず、個人防護具を装着して10分足らずで、砂漠で遭難したように全身がカラカラに渇いた状態になるそうです。院内を歩くだけでヒットポイントが1ずつ減っていく、ロールプレイングゲームの毒の沼地のような感じです。あまりに暑くて、個人防護具の着脱も杜撰になり、医療従事者に多数の感染者が出てしまったと聞きました。

写真:CavanImages/イメージマート

最前線の看護師の疲労

新型コロナの患者さんがいるレッドゾーンに一度入ると、基本的には数時間は出てくることがありません。マスクや手袋を外すわけにはいかないため、その間、喉が渇いてもなかなか水分補給ができず、肉体的にも精神的にも疲労がたまっていきます。

高熱でうなされている新型コロナの患者さんではなく、病棟の中で彼らをケアする看護師自身が熱中症になるという本末転倒な事態も起こりえます。

また、医療従事者が個人防護具を着ることの何が一番つらいかというと、汗がぬぐえないところです。あと、顔がかゆくてもかけない。特に目がかゆいとき、ゴシゴシしようものなら、新型コロナウイルスがダイレクトに目に入ってきてしまいます。

2020年第2波の夏ですでに新型コロナ病棟で活躍していたのが、衣服用の冷却スプレーです。個人防護具を着る前に、プシューっと体全体に冷却スプレーをかければ、1~2時間程度は「いけるかも!」と思えます。

とはいえ、しばらくして効き目がなくなってくると、結局暑さとの戦いになるのですが・・・。

(参考文献)

1) 内田幸子, 他. 繊維製品消費科学. 2021;62(1):44-53.

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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