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コロナ禍で躍進する公営競技、「ひとり負け」するパチンコ

木曽崇国際カジノ研究所・所長
(写真:アフロ)

さて、年明け早々ボートレース業界から以下の様な朗報が届きました。以下、東スポwebからの転載。

ボートレースの2020年次総売り上げが史上5位に

https://news.yahoo.co.jp/articles/4996eb26c201093902fa78004b5623c936f6cc1b

ボートレースの2020年次(2020年1月1日~12月31日))の総売り上げが1兆9014億8760万2100円(前年比123.9%)を記録したと1日、日本モーターボート競走会が発表した。この売り上げ額は1993年以来となる1兆9000億円超えで、ピークだった1991年(2兆2200億円強)、第2位=90年、第3位=92年、第4位=93年に続く、史上5位の記録となった。

公営競技が最も好調だった時期である90年代冒頭の頃に迫る勢いで売上を伸ばしたボートレース業界からの一報ですが、これに先立つ形で昨年末には中央競馬の方からも以下の様な報道が行われました。以下、中スポからの転載。

【中央競馬】JRA年間売り上げ2兆9834億円…コロナ禍も9年連続アップ

https://www.chunichi.co.jp/article/177458

JRAの年間売り上げは9年連続でアップとなった。日本中央競馬会は27日、2020年の中央競馬の総売り上げが、2兆9834億5587万2000円で前年比103・5%となったと発表した。新型コロナウイルス禍の中、9年連続の増加となった。

ということで、コロナ禍にも関わらず大変好調な公営競技業界でありますが、その大きな要因となったのがオンライン投票の普及。コロナ禍の発生により競技の開催中止に追い込まれたあらゆるスポーツ競技をしり目に、公営競技はこの1年の間「無観客試合&インターネット投票」という組み合わせで競技の開催を継続。外出自粛要請などによる「巣ごもり消費」を寧ろ追い風としながら、ガンガン新規の顧客を取り込み、売上を伸ばしてきました。

この辺りの構図は、実は弊社が昨年末に実施した「各ギャンブル型産業、コロナ影響調査」の結果にも明確に現れておりまして、間近1年で中央競馬以外の公営賭博に参加した人の中で「今年初めて参加した人、もしくは昨年は参加していなかった参加復帰者」は全体の12%と、中央競馬の」8%、パチンコの6%を大きく上回ることとなりました。

実施日:2020年12月7日

対象:間近一年でパチンコおよび公営賭博に参加したユーザー150人

調査手法:インターネット調査

(出所:筆者作成)

この様に好調な公営競技と対照的に、我が国に存在する既存のギャンブル型レジャー産業の中で圧倒的な「ひとり負け」状態が明らかになったのがパチンコ業界です。パチンコ業はコロナ禍にあえいだ間近一年での新規顧客、もしくは復帰者の取り込みが全体の6%程度と公営競技と比べると振るわなかったのに合わせて、参加頻度においてはユーザーの53%が「一昨年よりも参加頻度が減少した」と回答、中央競馬や中央競馬以外の公営競技と比べると、全体の参加頻度を減らしていることが判りました。

この理由は明確で、各種公営競技がネット投票によってコロナ禍の最中においてもファンのゲーム参加の維持が出来たのに対して、法制上、オンラインでのサービス提供が認められていないパチンコ業界はそれが出来なかったこと。また、特に昨年の前半ではパチンコ店でのクラスタ発生などは確認されていなかった状況下であったにも関わらず、国の主要閣僚や一部の都道府県知事などがパチンコを名指しして一種の「吊るし上げ」を行い、事業者やそのファンが社会的糾弾のターゲットとなったことなどの影響もあるのだろうと思われます。

上記調査に関する詳細に関しては、以下リンク先のYouTubeチャンネルにて詳細報告を行っておりますので、ご興味のある方はそちらも併せてご覧頂けましたら幸いです。

「大人の遊び」研究所/木曽崇

https://www.youtube.com/channel/UC0UueKrYPGueHItKNUthRWw/videos

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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