北朝鮮「陸の孤島」で大量死…社会情勢の不安定化も
韓国の聯合ニュースは22日、北朝鮮消息筋の話として、「北朝鮮の地方にある刑務所で食料不足に苦しむ囚人の集団脱獄が起きている」と報じた。
聯合は「深刻な財政難により刑務所に配られる食料が不足していることに加え、入ってきても職員などが着服する」としながら、「この2年間で北朝鮮内の3カ所の地方刑務所で約700人の囚人が餓死または病死した」とも伝えた。
どうしてこのような状況が起きるか、補足説明が必要だろう。
北朝鮮で「教化所」と呼ばれる刑務所は、ただでさえ食糧事情や衛生状態が劣悪だ。受刑者に対する人権侵害も横行している。長期刑に服すことになれば、五体満足で生きて出るのは難しいとされる。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
そんな状況で、収監者の命綱となっているのは、外にいる家族だ。家族からの差し入れなしには栄養失調で死んでしまう。また、差し入れの一部は看守らに対するワイロの役割も果たすのだ。
ところが、新型コロナウイルスがそれさえも難しくした。
北朝鮮の教化所では従来、受刑者と家族の面会が3カ月に1回、許可されていた。しかし当局は、新型コロナウイルスの感染防止対策の一環として、2020年2月中旬から受刑者面会のための旅行証の発行を中止した。旅行証とは、居住地から他地方に行くのに必要な一種の国内用パスポートだ。
北朝鮮の刑務所の多くは、陸の孤島のような、外部から隔絶された場所にある。旅行証が発行されなければ、誰も刑務所にアクセスできないのだ。
また、同年2月末からは家族から受刑者への食べ物の差し入れも全面中止されたとされる。現在の北朝鮮において、最も食べ物に困っているのは軍の末端兵士と教化所の受刑者たちだ。兵士はドロボーに化けることもできるが、受刑者たちはそれさえ出来ない。
その後、当局は一時的な旅行証の発行や差し入れの許可を繰り返したが、受刑者の餓死を防ぐには不十分だったのかもしれない。また国の食糧事情が悪化する中で、家族に差し入れを続ける余力がなくなったことも考えられる。
聯合の報道が事実ならば、最近の北朝鮮の食糧不足は、治安の混乱から社会情勢の不安定化につながっていく危険すらはらんでいる。