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オープン戦初勝利の阪神、しかし小虎はわずか2安打で2戦連続完封負け

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

東日本大震災から3年が経った11日、鳴尾浜球場でのファーム教育リーグは半旗を掲げて行われました。2年前のこの日は9回裏2死でゲームを中断したのですが、ことしは試合開始前に黙祷。3年の時が過ぎてもなお深く傷は残り、まだまだ助けは必要です。オープン戦が行われた甲子園球場では試合前、多くの皆さんに義援金のご協力をいただいたとのこと。悲しみや痛みは忘れても、あの震災を風化させることなく次の世代へ伝え、支え合っていかなくてはならない、と私は思います。

《春季教育リーグ》3月11日

阪神-ソフトバンク(鳴尾浜)

ソフ 000 010 101 = 3

阪神 000 000 000 = 0

◆バッテリー

【阪神】西村-玉置-吉見-渡辺 / 日高-岡崎(5回表~)-原口(7回表~)-小豆畑(9回表)

【ソフ】オセゲラ(4回)-伊藤大(1回)-川原(2回)-山中(2回) / 拓也

◆打撃(打数-安打-打点/三振-四死球/盗塁/失策)

1]右一:中谷  ( 4-1-0 / 2-0 / 0 / 0 )

2]遊二:北條  ( 3-0-0 / 1-1 / 0 / 0 )

3]中右:伊藤隼 ( 4-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

4]指:一二三  ( 1-0-0 / 1-2 / 0 / 0 )

5]一:森田   ( 2-0-0 / 1-1 / 0 / 0 )

〃走遊:阪口  ( 0-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

6]左:高山   ( 1-0-0 / 1-0 / 0 / 0 )

〃打左:柴田  ( 2-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

7]捕:日高   ( 1-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

〃捕:岡崎   ( 1-0-0 / 1-0 / 0 / 0 )

〃三:荒木   ( 1-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

8]二:黒瀬   ( 2-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

〃捕:原口   ( 1-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

〃捕:小豆畑  ( 0-0-0 / 0-0 / 0 / 0 )

9]三遊一:陽川 ( 2-1-0 / 0-0 / 0 / 0 )

〃打中:横田  ( 1-0-0 / 1-0 / 0 / 0 )

◆投手(安打-三振-四死球/失点-自責)最速

西村  4回 59球 ( 3-1-1 / 0-0 ) 136キロ

玉置  2回 25球 ( 3-3-0 / 1-1 ) 140キロ

吉見  2回 57球 ( 3-2-0 / 1-1 ) 135キロ

渡辺  1回 20球 ( 1-0-0 / 1-1 ) 140キロ

寒さを倍増させてしまった打線…

試合は雁の巣で連敗したソフトバンクが相手でした。雪の舞った前日に比べ気温が高めだったにもかかわらず、風は冷たくて震えながらの観戦。そのうえ試合は2回に一二三選手が四球で出ただけで、5回までノーヒットです。その一二三も盗塁を刺されたため3人ずつで片付けられ、投手は2人ですが…つまり“準完全試合”?6回2死から陽川がようやく初ヒットを放つも、また盗塁死で6回を打者18人という状況。

7回に先頭の中谷がヒット、そのあと3四球などで2死満塁となったものの無得点。8回、9回はまた三者凡退でした。より寒さが身にしみたのは言うまでもありません。

ソフトバンク亀澤に4打数4安打

先発の西村は1回に1番・亀澤のヒット、2死後の四球で一、三塁としますが猪本は遊ゴロで0点。3回も先頭の亀澤に打たれるも日高が盗塁阻止。4回は先頭の塚田に二塁打を浴び(センター伊藤隼が捕るかと思ったら急に足を止め、ライトから来た中谷が飛び込んだけど届かず)1死三塁のピンチ。続く猪本の三ゴロを捕った陽川が、クルッと体を回転させてバックホームして塚田はアウト!ナイスプレーです。西村は4回3安打無失点でした。

ついで玉置と岡崎のバッテリー。5回は先頭から続けて初球を打たれて無死一、三塁。9番の拓也は空振り三振で1死となりますが、亀澤のピッチャー返しを玉置も内野も捕れずに中前タイムリーとしてしまいます。そのあとを2人で片付けた玉置は6回を三者凡退。2回イニングを投げ3安打1失点。

吉見と原口のバッテリーに代わって、7回は2死から内野安打(当たりが弱すぎたため)された拓也を暴投で二塁へ。そして、またしても亀澤に中前タイムリーを許しました。8回は先頭の安田にヒットと盗塁を決まられるも後続はしっかり断って、吉見は2回3安打1失点。9回は渡辺と小豆畑と、このところピッチャーとキャッチャーがセットで登場するパターンが多いですね。キャッチャーも先発ローテ争いしなくてはなりません。

試合経過に戻ります。渡辺は先頭の釜元に右翼線三塁打(この回からファーストを守る中谷が捕れず、ライトの伊藤隼も返球が遅く…)、暴投で1点を失っています。なお2死から、ここまで4打数4安打2打点の亀澤に回りましたが、最後は一ゴロで終了です。

悪いなりにもゲームを作れる西村

試合後はまず西村投手に話を聞きました。同じソフトバンクを相手に2イニングを投げ、1安打無失点だった前回(5日・雁の巣)と比べて「感覚はそんなによくなかったんですが、悪いなりに考えながら投げることができたのでよかった」と言います。低めをボールと判定されることが多かったような…。「あれは僕の球質が悪かったから(ストライクを)取ってもらえるコースも取ってもらえなかったんだと思います。腕が自然に振れていなかった。抑えたいという気持ちが強すぎて、最初から力んでしまった」

西村投手の先発は昨年のフェニックスリーグ以来。10月11日の休日に行われたDeNAとの練習試合がプロ初で計3試合、5イニングずつを投げました。このフェニックス3試合は、いずれも失点したので、今回が“先発でプロ初の無失点”というわけですね。長いイニングを投げれば収穫も多いのでは?「できることがたくさんありますし、やらなきゃいけないことも増えてくる。やりがいはあります。今、状態はいいので続けていくことが大事。そっちを意識してやりたい」と話していました。

久保投手コーチによれば「調子よくないといっても、ゲームを作れていたから。スピードボールがまだ戻っていないけど西村は先発の特性、ゲームを組み立てる能力を持っている。これからも長めのイニングを投げて、休んで間隔を空けて、という感じでいきますよ」とのこと。今後も先発での登板になりそうです。

「ここからは結果勝負」玉置、吉見

次は玉置投手。2月21日に安芸から宜野座へ移動し、23日のオープン戦(中日)は1イニング無失点でした。ところが25日の練習試合(LG)、3月1日のオープン戦(ソフトバンク)と2試合連続で1死も取れずに降板。それ以来のマウンドだったんですが、この日もビシッとはいかず。ただし2イニング目はいつもの玉置投手でした。「そんなに悪い感じではなかったですよ。勝負できましたし」と言ったあと「捕れましたねえ、センター前」。タイムリーになった亀澤選手の打球を悔しがります。

「1軍では真っすぐが高かった。ボールをしっかり叩けていれば甘くてもファウルが取れる。改めて、真っすぐの使い方ですね。真っすぐを入れるタイミングやコース、高さ。変化球に自信持っているので、その使い分け。狙ったとこでファウル取れたら一番いいので。 (2イニング目は)しっかり腕を振れて、置きにいくボールはなかった」

そして「ここからは結果勝負。試行錯誤している時間はない。まとめに入らないと。ゼロを並べていくことだけ考えてやっていきます!」とキッパリ。10年目の1軍初勝利、期待していますよ。球団記録を塗り替えると言っていましたからね。

吉見投手は「きょうは相手より自分と戦っていたかもしれません。ストライク取ること意識がいってしまって」と反省の言葉です。7回34球、8回23球という球数に「めっちゃファウルで粘っていたバッターいたでしょう?」と苦笑い。はい、7回は先頭の釜元選手と、タイムリーの亀澤選手が10球ずつでした。「結果も求められる時期なので、自分の状態を上げていくことが1軍への近道。1軍でもストライクが入らない日はある。その中で最低限のピッチングができるか。自分の持ち味を出していければ」とのことです。

初安打&守備が光った陽川

なんせ2安打完封負けで、なかなか野手のコメントを取りにくく…でもチーム初安打の陽川選手だけは聞けました。まずヒットについて「外の真っすぐです。簡単に追い込まれてしまったので、変化球を頭に入れ、右打ちを意識した結果だと思う」と振り返ります。いや~よく打ってくれましたよ。それに4回の守備もよかった。「今までずっと回転も練習してたし、徐々に体も動いてきて体が勝手に反応したかなと。ああいう場面、ピッチャーが苦しいところでしっかり守れたら、チームも自分も盛り上がるので」

あちこち守備変更があるものの「苦手意識を持っていたら守れない。出場機会も増えてくるから、どこでも守れるように、もっともっとレベルアップしていきたい」と意欲満々でした。試合中、サードからショート、ファーストと陽川選手の「ナイスボール!」「1アウト!」という、誰よりも大きな声も移動します。ぜひ楽しんでください。

もう1本のヒットを放った中谷選手に話は聞けませんでしたが、試合前の打撃練習でいい当たりもあり、掛布DCは「悪くないよ」と言っています。1番って珍しいなあと思ったら、昨年9月の公式戦で1試合だけありますね。ファーストも今季初ですけど、昨年は結構やっていました。

最後に、8回2死で代打出場した横田選手は、アンダースローの山中投手にかなり苦労したようです。「高校では見たことない」と。そうでしょうねえ。いつもにゆったりした構えではなく「三振したくなかったので当てにいこうとした」らしく、かなり前かがみ。「でも三振していまいました…。とにかく見逃し三振がダメ!」と自分に腹を立てるルーキーです。これからも未知との遭遇は結構あるはず。また“横田語録”を集めておきます。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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