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「食中毒」が増える季節、9月は細菌性の食中毒が1年で最も多い #専門家のまとめ

石田雅彦科学ジャーナリスト
(提供:イメージマート)

 気温と湿度の高い状態が続いています。高温多湿を好む細菌などが増殖しやすい季節となっており、各地で食中毒や中毒症状の報告が多くなっています。

ココがポイント

▼黄色ブドウ球菌によるもので調理器具などの管理には要注意

お盆のおはぎで36人食中毒、群馬・桐生の和菓子店に3日間の営業停止処分(2024/08/21、読売新聞オンライン)

▼温暖化や輸送技術の進歩が影響か

魚介類に寄生 アニサキスによる食中毒が福岡県内で急増(2024/08/23、NHK福岡)

▼食中毒が出ると飲食店などは営業停止処分に

金沢のアパホテル飲食店で72人食中毒 患者からノロウイルス検出 衛生環境に問題か(2024/08/27、産経新聞)

▼水遊びの水質が原因とは限らず検疫は継続

【専門家は】轟の滝の水質検査でノロウイルス 患者の便から検出も遺伝子型は一致せず(2024/08/27、くまもと県民テレビ)

エキスパートの補足・見解

 9月は細菌による食中毒事故の発生件数が最も多い月ですが、食中毒は1年を通して危険があり、暑い時期に限らず寒い時期にもノロウイルスによる食中毒に注意が必要です。

 食中毒の原因には、植物などの自然毒、寄生虫、化学物質、細菌、ウイルスなどがあります。細菌性の食中毒の原因菌にはカンピロバクターやサルモネラ菌などの食肉に付着する細菌、多種多様な食品にいるO157などの腸管出血性大腸菌といった細菌類があり、寄生虫による食中毒はアニサキスなどによるものが多い一方、ウイルス性の食中毒は、件数でも患者数でもノロウイルスによるものがほとんどです。

 食品や食器、手指などをよく洗い、包装するなどして食中毒の原因微生物を付けず、素早く調理して食べ、10度以下の冷蔵や冷凍で保存して原因微生物などを増やさないようにし、75度以上で加熱したり消毒して原因微生物を殺す、という「付けず・増やさず・殺す」の3原則が食中毒の予防には重要です。

 また、食中毒を予防には調理中のマスクや頭巾などの着用も有効で、それは無意識に髪や顔を触った手で食品などを汚染しずらくさせるからです。

 温暖化などの気候変動が、食中毒の原因となる細菌やウイルスに影響をおよぼしているという研究もあります。例えば、海水温の上昇などの影響で、アニサキスによる食中毒が福岡県内で急増しているという報告もあります。

 いずれにせよ、9月は細菌性の食中毒が1年で最も多い月でもあります。くれぐれも注意が必要です。

科学ジャーナリスト

いしだまさひこ:北海道出身。法政大学経済学部卒業、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、医科学修士。近代映画社から独立後、醍醐味エンタープライズ(出版企画制作)設立。紙媒体の商業誌編集長などを経験。日本医学ジャーナリスト協会会員。水中遺物探索学会主宰。サイエンス系の単著に『恐竜大接近』(監修:小畠郁生)『遺伝子・ゲノム最前線』(監修:和田昭允)『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』など、人文系単著に『季節の実用語』『沈船「お宝」伝説』『おんな城主 井伊直虎』など、出版プロデュースに『料理の鉄人』『お化け屋敷で科学する!』『新型タバコの本当のリスク』(著者:田淵貴大)などがある。

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