「#安倍晋三の不起訴処分に抗議します」の拡散の半分は3%のアカウントによって行われている
「#安倍晋三の不起訴処分に抗議します」というツイートが広く拡散しているというニュースがありました.
「#安倍晋三の不起訴処分に抗議します」16万件超投稿 ネットで抗議次々 - 毎日新聞
しかし,トレンドに乗ったからといって一部のアカウントが多数の拡散をしている可能性があるため,中身をちゃんと見ずに数字だけ示しても意味がないことが良く知られています.
そこで,どのくらいのアカウントがどのくらいの拡散を行っているのかを分析してみました.
2020年12月19日6時~25日7時までの「#安倍晋三の不起訴処分に抗議します」が含まれる48,863アカウントによる298,153ツイートを分析してみました.このうち,238,283ツイートがリツイート,すなわち拡散されたツイートです.
このうちオリジナルツイートを行ったアカウントは24,955あり,拡散したアカウントは33,430ありました.最もたくさん拡散したアカウントは1355回拡散しています.
1時間ごとのツイート数はこんな感じ.
これを見ると,おおよそ23日の夕方くらいからこのタグの利用が活性化していることが分かります.
下の図は,横軸がリツイート回数で,縦軸がその回数以上リツイートしたアカウントの割合(累積アカウント率)と,その回数以上リツイートしたアカウントによって拡散されたツイートの割合(累積拡散率)を示しています.
これを見ると,累積拡散率が50%のとき,累積アカウント率が3%程度となっています.これはつまり,20万ちかく拡散されたツイートのおよそ半分は33回以上拡散した3%のアカウントによって行われたことを意味します.具体的には1,263のアカウントが117,825回の拡散を行っていました.
さらに,アカウントごとに過去のツイートから政治的姿勢が「政権支持」「政権批判」「その他」なのかを推定し,どのグループのアカウントが多く拡散を行っているかを分析しました.
一日後との各グループの割合の変化が下の図です.
ここから,拡散の80%以上が,もともと政権批判的なツイートを拡散していたアカウントによるものでした.
これまでも,「#スガやめろ」や「#国会を止めるな」などハッシュタグを使った運動がありましたが,いずれとも類似した動きであるといえそうです.
もちろん,拡散総アカウント数48,863というのは決して少ない数ではありませんが,安倍総理の不起訴処分に不満を持っている人はもともと政権批判的だった人以外にももっといるような気もしますので,それがデータから見えてこないのは,こういった動きが身内以外にリーチしてないということかもしれません.事実,change.orgのキャンペーンでは12月25日夜の時点で100,000人以上が賛同しているわけですから,ポテンシャルとしてはもうちょっとあるんじゃないでしょうか.
今年の春にあった「#検察庁法改正案に抗議します」はある程度成功したといってよいと思いますが,単にハッシュタグを決めるだけでは,なかなか同じようにはいっていないように見えます.そろそろ同じやり方を続けるだけではなく,よりコミュニティ外まで広がるような方法を考えたほうが良いのではないかなと思ったりしています.水増ししているように見える(失礼)ことはたいした問題ではないと思いますが,実態と離れた数を見て「自分たちの考えが多くの人に届いている」と勘違いしてしまう可能性を危惧しています.
とはいえ,まだこれから拡散がさらに広がる可能性もありますので,今後の展開に注目していきたいと思います.
いつもと違う結果が出てくれば分析のし甲斐もあるし(個人の感想です).