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新宿区は前倒しで本日終了!20%から30%も得するキャッシュレス支払いの還元セールってなに?

中村智彦神戸国際大学経済学部教授
各地の自治体でキャッシュレス還元キャンペーンが実施されている。(写真:當舎慎悟/アフロ)

・住民でなくても割引で購入可能

 秋頃から、各自治体でキャッシュレスで支払うと、15%から30%のポイントが還元されるというキャンペーンが始まっています。すでに終了している自治体もありますが、現在、開催中のところや2月以降に開催するところもあります。

 このキャッシュレス支払い還元キャンペーンは、プレミアム商品券などのように実施自治体の住民に限定されていたり、事前に購入する必要があったりということがありません。つまり、誰でもその自治体の対象店舗で商品を購入したり、飲食代金を支払ったりする際にキャッシュレスで支払えば、15%から30%がポイントで還元されます。つまりは、大幅な割引で購入、飲食ができるのです。

 ちなみにこの原資は、政府が地方自治体に交付する新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金や、地方自治体の財源です。要するに税金です。

・新宿区は、終了予定を前倒し。25%還元は本日(1月25日)まで

 このキャッシュレス支払い還元キャンペーンは、自治体によってその実施方法や還元率、期間などが異なっています。

 新宿区は1月7日から、「がんばろう!新宿応援キャンペーン 第1弾(アンコール)キャッシュレスで最大25%戻ってくる」を実施しているが、利用者が多く、予算上限である3億円に達する見込みとなったため、予定していた終了日である1月31日から1週間前倒しした25日23時59分で終了すると発表しました。

 他の自治体でも、予算に達した段階で終了となるので、「最終日行けば良い」と考えている人は注意が必要です。

還元キャンペーンは各地の自治体で実施されている。利用できるキャッシュレス・アプリも様々だ(各地の自治体のホームページより)
還元キャンペーンは各地の自治体で実施されている。利用できるキャッシュレス・アプリも様々だ(各地の自治体のホームページより)

・延長する自治体も

 昨年秋から末にかけて第1回目を実施し、今年に入って第2回目、第3回目を実施する自治体も出ている。先に書いたように、自分の居住する自治体では実施していなくても、近隣の自治体や在勤、在学している自治体で実施されていれば、そこで還元の恩恵を被ることができるので、実施自治体と期間をネットなどでチェックするのが重要だ。

 利用者が少なく、期間が延長される自治体も出ている。例えば「神奈川県キャッシュレス・消費喚起事業 総額70億円還元キャンペーン」は、当初、ポイント付与終了日が1月31日だったものが、4月30日に延長。ポイント利用終了日も2月28日から5月31日へ延長された。

 利用者が伸びていない理由は、使い方のややこしさにある。他の多くの自治体の場合、PAYPAYとD払いとAU払いなど既存のキャッシュレスシステムで支払うと、ポイント還元が受けられるというシンプルなものになっている。ところが、神奈川県の場合、県独自の「かながわPay」アプリをダウンロードして、そのアプリを通じて、au PAY、d払い、はまPay、LINE Pay、楽天ペイで支払う。さらに、還元されるポイントは、「かながわPay」に付与されるため、それぞれのアプリでは使用できない。

 神奈川県に居住する会社員の男性は、「それでなくてもアプリでいっぱいだし、還元したポイントを神奈川県内で使わせたいという意図は判るが、特に高齢者に対してハードルを高くしてしまっている」と話す。さらに、やはり県民の30歳代の男性は、「一番使われているPaypayが外されている。なんか事情があるのでしょうけれど、めんどくさいなあ」と言う。さらに、対象店によって10%から20%と還元率に幅がある。「調べてみると、意外と使える店が少ないし、よく行く店は10%還元対象なので、モティベーション低いですね」とこの30歳代の男性は笑う。

 「かながわPay」は利用者が少ないために、12月にはポイント付与上限を1万ポイントから3万ポイントに引き上げられており、今回、期間延長もされたので、考えようによっては、スマホアプリに使い慣れた人には狙い目かも知れない。

高齢者にとっては、まだまだキャッシュレス・アプリはハードルが高い(撮影・筆者)
高齢者にとっては、まだまだキャッシュレス・アプリはハードルが高い(撮影・筆者)

・飲食店だけではない

 15%から30%といった還元率は、値上げが続く昨今においては非常に大きい。新型コロナのオミクロン株の感染者急拡大で、飲食店への出足は鈍るかもしれないが、自治体によって飲食店以外のスーパーやドラッグストア、コンビニエンスストアでも還元を受けられる場合もある。

 昨年末12月31日まで、大阪市ではスーパーやドラッグストア、ホームセンターなどでも最大20%の還元率の「買い物応援キャンペーン」が実施された。大阪市内のあるドラッグストアには、電卓片手に「あといくらだ」と計算している男性や、「まだいけるわよ、なにか欲しいものはないの、早くいいなさい」と言っている女性など、還元目当て客で混んでいた。トイレットペーパーやティッシュペーパー、洗剤など買い置きできる商品を中心に購入している人が目立った。

 このようにお得に買い物するために、実は準備が必要なのだ。それはとにかくややこしく、アプリも使い勝手が良いとは言えないからだ。

・効率よく「お得」を味わうには準備が必要

 その自治体の住民でなくても、その自治体で買い物すれば、還元される。しかし、まずキャッシュレス支払いのアプリをスマホに導入し、利用できるように登録し、そして必要な金額をチャージしておく必要がある。

 さらに、注意すべき点を整理してみよう。

①自治体によって実施方法、期間、対象店舗が異なる。飲食店のみの自治体も多いが、スーパー、コンビニ、ホームセンターなども対象になっている自治体もある。

②PAYPAYとD払いとAU払いなど、どれが使えるか自治体によって異なる。さらに、自分の利用する店がどれを使えるかを事前に調べておく必要がある。さらに、仮にPaypayとd払いとauPayの三つを兼用できる自治体では、還元上限がそれぞれ1万円あるとすると、最大3万円還元される。

③第一弾、第二弾と実施している自治体もあれば、全く実施しない自治体もある。期間も異なる。

④第一弾と第二弾では対象になる店舗が異なる。自治体によっては、コンビニ、スーパー、フランチャイズの店舗でもOKのところもあれば、地元の中小企業でないとダメだったり、物販はダメで飲食だけだったりというところもある。

⑤一回の買い物当たりの還元ポイントに上限がある。だいたい3000円とか2000円と定められている。この計算がめんどくさい。

 例えば還元ポイント上限が一回につき3,000円で、還元率が25%だとすると、一回の買い物金額が12,000円で3,000円戻ってくる。この場合、一度に20,000円分買っても、上限を超えているので3,000円しか戻らない。しかし、買い物を二回に分け、10,000円分を二回に分けて買えば、それぞれ2,500円相当のポイント還元が受けられるので、合計で5,000円となるので、注意が必要だ。

・最後の難関は、どの店に行くか

 最後の難関は、対象店を見つける作業だ。それぞれのアプリから対象になっている店を探すのだが、いずれも非常に使いにくい。準備する期間が短かったせいなのか、地図や一覧で出てきた対象店をクリックしても、一体何の店なのかすら判らない表記が多い。

 20歳代の女子大学生は、「店名が間違っていたり、なにより情報量が少なすぎて、店を見つけるまでに疲れてしまった」と言う。 

 筆者も使ってみたが、支払いのアプリを立ち上げて、そこで対象店を検索しながら、地図アプリも立ち上げて、それを見比べなければ充分な情報が入ってこない。出たとこ勝負で、その場で店を見つけるのは難しいので、事前にどの店に行くのか、支払いアプリは対応しているのかなどを調べていくことをお勧めしたい。

 正直言って、このキャッシュレス支払い還元キャンペーンについては問題点も多いが、まずは利用してみることが大切だ。物価が上昇傾向にある中、10%から30%という還元率は、消費生活の自衛手段の一つとして、まずはキャッシュレス支払い還元キャンペーンを利用してみるべきだろう。

※実施自治体を調べるには、各キャッシュレスサービスのホームページで↓

Paypay「PayPayであなたの街を応援しよう!いろんな街でキャンペーン開催!」

d払い「街のお店を応援!d払いで安心キャッシュレス」

auペイ「あなたの街のauPayキャンペーン」

神奈川県キャッシュレス・消費喚起事業

神戸国際大学経済学部教授

1964年生。上智大学卒業後、タイ国際航空、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、神戸国際大学経済学部教授。関西大学商学部非常勤講師、愛知工科大学非常勤講師、総務省地域力創造アドバイザー、京都府の公設試の在り方検討委員会委員、東京都北区産業活性化ビジョン策定委員会委員、向日市ふるさと創生計画委員会委員長などの役職を務める。営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に経済調査を担当。企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担う。

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