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第5回WBCで優勝候補筆頭のドミニカ代表を表裏から支えているGM兼任ネルソン・クルーズの思い

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
マニー・マチャド選手(左)はネルソン・クルーズ選手に絶大の信頼を寄せている(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ドミニカ代表が初の強化試合でブレーブスに圧勝】

 米オッズメーカーで第5回WBCの優勝候補筆頭に挙げられているドミニカ代表が現地時間の3月8日、11日から始まる第1次ラウンドを前に初の強化試合に臨み、ブレーブス相手に9-0で圧勝した。

 7日にチームとして初練習を行ったドミニカ代表だが、最近になって不安材料が続いていた

 今大会の主力選手と期待していた、ブラディミール・ゲレロJr.選手が右ヒザ負傷で出場辞退が決まり、ふくらはぎの張りでフアン・ソト選手もチームに合流できておらず、戦力ダウンが懸念されていた。

 そんな懸念を払拭するかのように、自慢の強力打線が大爆発。3回と6回に3本の本塁打を絡めて大量得点を生み出すなど、計14安打を放ちブレーブスを圧倒した。

 ちなみにドミニカ代表は9日にツインズと強化試合を戦い、2度目の優勝を目指しWBC本番に臨む予定だ。

【侍ジャパンに負けない陣容を揃えたドミニカ代表】

 今大会の侍ジャパンは4人のMLB選手を揃えるなど史上最強と騒がれているが、ドミニカ代表も選手招集には万全を期している。

 今回のドミニカ代表のチーム構成を見ても、現時点で未契約のロビンソン・カノ選手とゲイリー・サンチェス選手を除き、すべての選手が各チームの40人枠に入っている現役バリバリの選手たちだ。

 もちろんこれだけの陣容を揃えている代表チームは、40人枠入り選手のみでチームを構成している米国代表以外存在しない。外国籍選手としては最大数のMLB選手を輩出している野球大国ならではの贅沢なチーム編成といっていいだろう。

 ゲレロJr.選手、ソト選手が合流できていないとはいえ、昨年のサイヤング賞投手のサンディ・アルカンタラ投手、同じく昨年の新人王選手のフリオ・ロドリゲス選手、ワールドシリーズでMVPを獲得したジェレミー・ペーニャ選手など、MLBの将来を担っていく若手スター選手たちが集結している。

【チームのまとめ役はGMを兼任するクルーズ選手】

 今大会のドミニカ代表を象徴する存在が、現役選手として初めて代表チームのGMを兼任しているネルソン・クルーズ選手ではないだろうか。

 侍ジャパンではダルビッシュ投手がチームのまとめ役を担っているが、その役目を担っているのがクルーズ選手になるだろう。彼はカノ選手とともに第3回大会の優勝経験者でもあり、若手選手にとっては貴重な相談役といえる。

 米国代表のキャプテンに就任したマイク・トラウト選手が、自ら選手たちに連絡をとり選手集めに協力したように、クルーズ選手もチーム編成の責任者として自ら選手集めに奔走している。

 特にクルーズ選手を心酔しているマニー・マチャド選手との親密ぶりは球界でも有名で、マチャド選手がパドレスにクルーズ選手の獲得を働きかけたと報じられているほどだ。

 チームとして連覇を目指していた第4回大会で、初出場のマチャド選手はドミニカ代表の中心選手になっていたが、惜しくも準決勝進出を逃しており、是が非でも前回の雪辱を果たすべく朋友クルーズ選手に呼応している。

MLB公式サイトによれば、チームミーティングでもマチャド選手、カノ選手に続きクルーズ選手が締めくくりのスピーチを行い、チームを結束させているようだ。

 ブレーブス戦で6回に先頭打者としてチームの大量得点に繋げる貴重な本塁打を放っており、42歳のベテランは選手としても順調な調整ぶりを見せている。

【ソト選手のチーム合流を目指しパドレスとの交渉を継続】

 チームが始動した後もチームを強化していくため、クルーズ選手は今もGMの仕事を継続させていた。パドレスのキャンプ施設に調整を続けているソト選手がなんとかチームに合流できるように、ボブ・メルビン監督らと交渉を続けていたようだ。

 同じくMLB公式サイトによれば、メルビン監督は9日に行われる練習試合にソト選手を出場させ、そこでふくらはぎに問題なければ、ドミニカ代表に合流させる考えを明らかにしている。

 合流後にソト選手がWBCでフル稼働できるかどうか定かではないが、クルーズ選手のはたらきかけで、大きな戦力が加わりそうなことだけは間違いない。

 「我々はドミニカ出身であることを誇りに思っている。そして我々は野球を愛している。土曜日(第1次ラウンド初戦)は我々の周りを国旗が埋め尽くすことになるだろうし、もちろん我々の気分は高まることになる。

 とにかく大賑わいになるのが楽しみだ。そうした雰囲気を満喫しながら戦っていきたい」

 選手として、GMとして、クルーズ選手は万全の状態で2度目の優勝を狙っている。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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