【パラアイスホッケー】直接対決は0-10。三大会連続金メダルのアメリカと日本の最大の差は何か?
NHLのレギュラーシーズンが佳境に差し掛かりましたが、今季は例年にも増して、プレーオフ進出を懸けた各チームの戦いが激しさを増しています。
来月9日(現地時間)のレギュラーシーズン最終日まで、あと二週間を残すのみとなっているにもかかわらず、プレーオフ進出を決めたチームは、イースタン カンファレンスでは、タンパベイ ライトニング と ボストン ブルーインズ。
対してウエスタンは、ナッシュビル プレデターズ だけと、プレーオフに進むことができる「16」のイスのうち、まだ「3つ」しか決まっておらず、最後の最後まで激しい戦いが繰り広げられそうです。
▼金メダルメンバーがやってきた!
激しい戦いを期待してスタンドへやってきたNHLのファンたちから、昨夜の試合前に大きな歓声が上がったアリーナがありました。
スタンドを大いに沸かせたのは、ピョンチャン(平昌)パラリンピックのパラアイスホッケーで、史上初の三大会連続優勝を達成したアメリカ代表の金メダリストたち!
セントルイス ブルースのホームアリーナのスコットレードセンターには、“世界一の守護神” と呼ばれる スティーブ・キャッシュ(GK・28歳)に加え、キャプテンの ジョシュ・ポールス(DF・25歳)と 、ビリー・ハニング(DF・33歳)という守りの要を担った各選手が来場。
セレモニアル パックドロップ(=試合開始前に両チームのキャプテンの間にパックを落とすセレモニー)を行いました。
▼最下位チームのファンからも金メダリストへ歓声
さらに東へ目を転じると、全31チーム中、最下位に低迷し、スタンドに空席が目立つようになってしまったバッファロー セイバーズのホームアリーナ(キーバンクセンター)でも、ルク・マクダーモット(FW・30歳)と、アダム・ペイジ(FW・26歳)が招かれました。
両選手はバッファローのホームゲームに先駆けて、セレモニアル パックドロップに臨むと、こちらもスタンドから大きな歓声が送られたそうです。
▼NHLのチームがパラアイスホッケーチームも運営している!
NHLの試合を観戦に来たスタンドのファンが、大きな歓声を送ったのには、もちろん理由があります。
それは、お気に入りのNHLチームの傘下に、パラアイスホッケーのチームがあるからです。
紛争地などに派兵され傷ついた者のアフターケアを、国を挙げて支援しているアメリカでは、ほとんどのNHLチームがパラアイスホッケーチームを設立。
しかも、NHLのチームと同じユニフォームを選手たちに与え、練習や大会などを通じて、プレーをする場を提供するなど、本腰を入れたサポートを続けています。
さすがに、NHLのような長丁場のリーグ戦まではいかないものの、全米規模の大会を積極的に開催して実戦の場を多く作り、レベルアップの機会を提供。
前述したセントルイスと、バッファローのセレモニアル パックドロップにやってきた選手は、いずれも地元のパラアイスホッケーチームから選ばれた金メダリストなのです。
▼”金メダルゴール”を決めた選手も!
このようなアメリカの強化策によって頭角を現したのが、今月開催された「ピョンチャン パラリンピック」の決勝戦で、同点ゴールと決勝ゴールを決めたアメリカの デクラン・ファーマー(FW・20歳)
ファーマーは、フロリダ州タンパの生まれ。
脚に先天性の障がいを有していましたが、小さい頃からスポーツが大好きで、フットボールやスノーボードなどにもトライしていたとのこと。
しかし、「最も楽しくて気に入ったのが、パラアイスホッケーだった」ことから、地元のNHLチームである タンパベイ ライトニング のパラアイスホッケーチームで腕を磨き続け、才能が開花。
16歳でソチの、そして20歳になってピョンチャンの金メダルを、アメリカにもたらせるエースプレーヤーへ成長を遂げたのです。
▼NHLも、パラアイスホッケーも、同じ「ホッケー」!
残念ながら日本では、王子イーグルスや日本製紙クレインズといったアイスホッケーの企業チームが、パラアイスホッケーチームを持つことはなく、管轄する競技団体も異なります。
しかしアメリカでは、NHLも、パラアイスホッケーも、ホッケーアメリカ(アメリカホッケー協会)が統括運営。
オリンピック競技も、パラリンピック競技も、同じ「ホッケー」なのです!、
そのため選手たちの中には垣根がなく、オフシーズンにNHLのスター選手がパラアイスホッケーに興じるシーンも見られます。(カナダ人選手ですが、当サイトで昨年7月10日に配信した記事をご参照ください)
スケート靴と異なり、スレッジに乗った選手が激しいプレーをすることから、リンクの氷面などを傷つけてしまうこともあり、練習環境もままならなかったり、レベルアップのためには欠かせない海外の強豪との対戦に伴う遠征費の捻出など、日本の課題は少なくありません。
しかし何よりも、まずは、
NHLも、パラアイスホッケーも、同じ「ホッケー」!
だというアメリカをはじめとする強豪国では当然となっている意識の広まりが、その差を縮めていくための第一歩になるはずです。