開発途上国への支援姿勢は「現状維持」が約半数(2018年版)
日本が新興国などに行っている資金協力や技術協力などの開発協力による支援は、今後どのような姿勢で臨むべきなのか。国民の意思を内閣府の「外交に関する世論調査」(※)から確認する。
日本も含めた先進諸国などは開発途上国(新興国)に対し、資金協力(借款、無償援助)や技術協力などの開発協力を行っている。多様な影響などを考慮した上で、日本では今後これらの開発協力に関してどのような方針で臨むべきかを4択、具体的には「(現状以上に)積極的に進めるべきだ」「現在程度でよい」「(協力は進めるべきだが規模は現状より)なるべく少なくすべきだ」「やめるべきだ」から1つ、回答者の考えにもっとも近いものを選んでもらったところ、直近年において最多回答率を得たのは「現状維持」だった。48.2%と半数近くの人がこの選択肢に同意を示している。
あくまでも今件設問上の開発協力の対象は「開発途上国」が前提であり、自前で宇宙にロケットを打ち上げる技術・経済力を持ち、さらに他国へ積極的な資金援助や軍事力の示威行使を行う国は対象外と見なすとの判断をするのが当然で、その上で対象国の情勢を分析し、結局は国毎にケースバイケースで決める必要がある。それを前提とし、全般的な戦略としては、「現状程度」を最良とする考えが支配的なようだ。この考えに同意する人の割合は多少の上下を繰り返しながらも、中長期的に増えつつある。
一方、「積極的にすべき」「なるべく少なくすべき」と相反する意見は、直近ではそれそれ32.0%・12.5%。歴史的な経緯をたどると、いわゆるバブル崩壊あたりから「積極派」が漸減し、「消極派」はそれ以前から漸増していた。その結果、今世紀に入り互いの立ち位置が一時逆になったのは興味深い。
しかしそれも2003年から2004年を転機に、再び「積極派」の増加、「消極派」の減少の動きを見せ、現在に至っている。各国、特に近隣諸国における積極的な対外支援が伝えられるようになり、海外市場で日本企業の入札が失敗する事例が報じられ、国際的な日本の立ち位置が低下する気配を見せ始めたのが遠因だろう。
なお属性別に回答動向を見ると、直近分では男性、18歳~20代と50~60代で積極的協力を求める声が大きい一方で、消極姿勢や停止を求める声は30~40代と70歳以上で高い動きを示している。
30~40代と70歳以上で積極姿勢が見られなくなるのは、日本国内の限られたリソースをどこに配すべきかとの観点で、他の社会保障関連の調査結果同様、将来を見据えるか、自分の手元に残すかなどの判断の違いが表れた結果、つまり「海外への経済協力より、まずは自分自身に」だと考えれば、道理が通る傾向ではある。
■関連記事:
中国・習主席の外交は大よそ否定的、アフリカなど一部諸国では高く評価
※外交に関する世論調査
直近分は2018年10月18日から10月28日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を持つ人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、調査員による個別面接聴取法によって行われたもので、有効回答数は1663人。男女比は806対857、年齢階層別構成比は10代42人・20代127人・30代206人・40代286人・50代286人・60代300人・70歳以上416人。過去も類似の方法で実施されている。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。
(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。
(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロで無いプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。
(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。
(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。