アジアやアメリカは安倍外交をおおむね評価、中韓のみ反発
「日本の外交施策の評価はアジアで二分」は本当か
日本の外交施策に関して米調査機関Pew Research Centerによる調査結果として「アジアの評価分かれる」との報道がなされている。果たして本当に、日本の外交施策はアジア内で二分されているのだろうか。その実情を調査報告書「Global Opposition to U.S. Surveillance and Drones, but Limited Harm to America’s Image」そのものをたどり、確認していく。
今調査は2014年3月から4月に渡り、電話による対話、あるいは対面方式で18歳以上の人に対し行われたもので、有効回答数は各国とも約1000人。電話での調査ではRDD方式が採用され、また多くの国における調査結果では国勢調査結果によるウェイトバックが行われている。今件対象項目にあたる部分は、アメリカ、バングラデシュ、中国、インド、インドネシア、日本、マレーシア、パキスタン、フィリピン、韓国、タイ、ベトナムの計12か国が回答対象国。
それらの国に、日本の安倍総理における外交政策に関する印象を聞いている(日本の中長期的な外交施策ではないことに注意)。国際情勢と照らし合わせ、日本の外交施策が正しいように見えるか、信頼を寄せることが出来るか否かを、「強い肯定」「肯定」「否定」「強い否定」の4段階、「意見留保あるいは無回答」の計5選択肢から選んでもらっている。要は「今の日本の外交施策を支持できるか否か」である。
日本自身における判断は、強い肯定は9%、肯定は49%、合わせて58%が肯定派。否定派は40%。強いて言えば肯定派が過半数となる。
他国に目を向けると、強い肯定意見でもっとも多いのはバングラデシュで26%、次いでベトナムの23%、マレーシア・フィリピン・タイの13%が続く。また肯定派が全体の過半数に達しているのはベトナム・日本・マレーシア・バングラデシュ・フィリピン・タイの6か国、肯定派が否定派を上回っているのは中国と韓国以外の10か国。おおよそ日本の外交施策は(アメリカやアジア諸国から)支持を集めていることになる。
特異な動き関する解説は報告書でもいくつかなされている。まずマレーシアやベトナム、フィリピンなどでの高い支持率は、単に高い値が出ているとのみの特記で理由は特に記されていない。しかし現状をかんがみるに、南シナ海などで展開中の中国による領域侵犯問題をはじめとする強圧的外交施策に対し、日本の対応に期待を寄せていることがうかがえる。
他方インドやパキスタンなどの西アジア諸国では、肯定派は少ないが否定派も少ない。日本の外交施策に関してあまり興味がない、あるいは認識そのものがされておらず、無回答・回答留保が2/3近くを占めているのが特徴的。
一方、中国と韓国は特異な動きを示している。報告書ではこの点についてスペースを割き、「両国は日本が今なお第二次世界大戦に関して十分な謝罪をしていないと認識していること、安倍総理が靖国神社に何度も足を運んでいることを毛嫌いしている」とした上で、それらが否定派多数となる結果を導き出した原因であると説明している。中国ではまだ肯定派が15%、回答留保派が14%いるが、韓国ではそれぞれ5%・2%しかいない。そして否定派はそれぞれ70%・94%に達しており、特に韓国で今の日本の外交施策が気に食わない、支持できないとの意見が強いことが分かる。
意見を明確に表明した人のみで再計算
パキスタンやインドのように過半数が無回答・回答留保のような姿勢も、日本に対する評価の一つ。しかし一方で、明確な意見を持つ人において、どれほどの人が肯定的なのか、あるいは否定しているのかも気になるところ。そこで報告書の基データを用い、意見留保・無回答者を除外し、肯定派・否定派のみで全体を再調整し(つまり明確な意見を表明した人のみで)、その上で賛成派のみをカウントした結果が次のグラフ。
中韓以外でもっとも低い値を示しているのはインド、次いでアメリカ、日本。高い値はベトナム、マレーシア、タイ、フィリピン。ベトナムの88%はやや抜きんでているが、概して6割から7割程度に収まっており、いずれにせよ過半数に届いている。一方、中国と韓国は極めて低い値に留まっていて、反発心の強さがうかがえる。
冒頭で触れたように今報告書の内容について、一部報道で「アジアの評価分かれる」「外交施策への評価は二分されている」のようなと、意見が真っ二つに分かれているかのような表現がなされている。
実際のところは上記にある通り。好意的、肯定的評価が大部分であり、反発姿勢を示しているのは、今件調査項目の対象国に限れば、中国と韓国のみ。「二分」には違いないものの、実状はイメージとは随分と異なることを、念のため記しておきたい。
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