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「今が一番死にたくない」。「I Don't Like Mondays.」YUの告白

中西正男芸能記者
「I Don't Like Mondays.」のボーカル・YUさん(事務所提供)

 キャッチーかつ研ぎ澄まされたサウンドで注目される4人組バンド「I Don't Like Mondays.」。新型コロナ禍での閉塞感を打破すべく昨年は5カ月連続で新曲を配信するなどチャレンジングな試みを見せてきましたが、先月には4枚目のアルバム「Black Humor」もリリースしました。さらに今月18日からは全国16都市を訪れるツアーも開催しますが、ボーカルのYUさんが語る「今が一番死にたくない」という言葉の意味とは。

音楽の意味

 本当は去年の夏にアルバムを出せればと思っていたんですけど、コロナ禍という特殊な状況で延期せざるを得なくなりました。

 ただ、延期になった分、楽曲制作やバンドと向き合う時間も増えたので「こうした方がいいんじゃないか」というチャレンジングな思いも新たに出てきて、それも含めて再構築したのが今回のアルバムなんです。

 こういう環境で気づかされたこともたくさんあって、それを「Black Humor」というタイトルにも込めました。

 笑うに笑えない状況が音楽業界のみならずいろいろな業界に広がっている。ただ、そんな状況でも笑えるような希望は見つけていかないといけない。

 「これはユーモアなんだ」と考えにかかるということ半分、アイロニック(皮肉)な思い半分という感じでタイトルをつけました。

 あと、中身で言うと、今回は日本語の歌詞が増えました。

 なぜ僕らが音楽をやっているのか。そこから始まって、僕らが奏でる音楽はライブが中心で、皆さんに集まってもらって、みんなで楽しく共有するためのものだということを改めて再確認しました。

 でも、集まることが難しくなった中で、音楽が他にどういった機能を果たせるのか。そこで考えたのが、音楽自体が誰かを癒したり、誰かに寄り添ったりできるものだということでした。

 その要素をよりダイレクトに伝える。そこを考えると、日本で活動をして、日本の人に聞いてもらうことが中心になっている以上、必然的に日本語の曲が多くなっていったんです。

踏み出さない限り一歩はない

 もちろんコロナ禍は大変なことなんですけど、今までの人生で最も音楽に向き合えている時間かもしれませんね。

 私生活で誰かと会ったりとかいう時間はすごく減っている。その分、じっくりと音楽を聴いたり、家の音響機材もリニューアルして大きなスピーカーを購入したり。そういう時間の使い方になっている気がします。

 今までは自分たちが音楽を作っているにもかかわらず、音楽を消費的に聞いていたというか。コロナ禍で時間ができた中で、これまで「いつかできれば」と思っていたレコードをお店で買ってきて聴くという流れも繰り返しやるようになりました。

 ストリーミングで音を楽しむというのも手軽で便利なんですけど、わざわざお店に行って、レコードを手に取って、ジャケットを見て、音を想像して買う。それを持って家に帰るまでのワクワクも含めて音を楽しむ音楽なんだなと。

 テクノロジーが進化して便利になった分、本来あった楽しみがそぎ落とされているところもあるなと思ったんです。

 家に帰って聴くまで中身が分からない。思っていたような曲じゃない曲が入っていることもあるけど、もうお金を出して買ってしまっているので(笑)、せっかくだからしっかりと聴いてみようと思う。

 そういう楽しみ方をすっかり忘れていたというか。プロとして音楽をやらせてもらっているのに、音を楽しむことの幅が決して広くなかったんだなと改めて痛感した時間でもあったと思います。

(撮影・中西正男)
(撮影・中西正男)

 そうやっていつも以上に広く、深く、音楽と触れる中で感じたのが自分の無力さでした。

 世の中、天才ばっかりだなと。今、流行っている若い人たちもそうだし、過去のレジェンドももちろんそうだし、本当に天才がどれだけいるんだと。

 そういう人たちに勝つには、相当なことをやらないといけないし、楽器のスキルも、歌作りのスキルもこれでもかと高めないといけない。それも感じました。その思いからジャズにも取り組み、ピアノも本格的に勉強しだしました。

 それと同時に、音楽って死ぬまでできるものだとも感じたんです。体が動きさえすれば、命が尽きる前までピアノも弾ける。

 今、30歳を超えてからピアノを始めるなんて遅いという感覚もありますけど、今日から始めれば、10年後には10年のキャリアがあるわけだし、50歳、60歳になった時にはそれ相応の腕前にもなっているはずだと。

 踏み出さない限り一歩にはならないし、踏み出せばキャリアになっていく。そこは強く思いましたね。ある種の開き直りかもしれませんけど(笑)。これまでも音楽が好きでしたけど、今は10倍くらい好きになったと思っています。

死にたくない

 僕は歌も上手くないですし、楽器も下手くそです。でも、積み重ねをしようと思うのに遅いということはない。

 今はとにかく時間が足りないんです(笑)。やらなきゃなんないことが多すぎて。まさに強化合宿中というか、ひたすらトレーニングをしている感じです。

 自分が実現したい、表現したいと思っていることを具現化するために歌や楽器のスキルがある。そこを高めて、やりたいことを一つでも多くやる。そのための鍛錬を続けている。そんな日々です。

 だからね、今、死にたくないんですよ。もちろん、これまでも死にたくなかったんですけど、今が一番死にたくない。ここから思いを叶えていこうとしているところなので、ここで死ぬわけにはいかない。そう思うんです。

 あっちこっちまとまりのない話になったかもしれませんけど(笑)、今思っていることをストレートにお伝えしたつもりです。

(撮影・中西正男)
(撮影・中西正男)

■YU

1989年2月26日生まれ。愛知県出身。CHOJI(ギター)、KENJI(ベース)、SHUKI(ドラム)と2014年に結成したバンド「I Don't Like Mondays.(アイドントライクマンデイズ)」でボーカルを務める。19年からavexに所属。今年8月にはアルバム「Black Humor」を発売した。9月29日にはABCテレビ・テレビ朝日のドラマ「それでも愛を誓いますか?」主題歌「音楽のように」をデジタルシングルとしてリリースする。また、9月18日、19日の大阪公演(梅田CLUB QUATTRO)からスタートする全国ツアーを開催。16都市で24公演を行う予定。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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