「LGBTQ+の人は変われる」個人の性的指向や性自認を矯正する「転向療法」ノルウェー禁止へ
「転向療法」、英語で「コンバージョン・セラピー」、ノルウェーでは別名「ホモセラピー」を今後は禁止とすることをノルウェー国会が12日に賛成多数で可決した。
ジェンダー平等が進んでいるとされている北欧ノルウェーで未だにこのような法案があったことに驚くかもしれないが、「同性愛者やトランスジェンダーなどの性的指向や性自認を変えることを目的としたセラピー」はこの国ではこれまで合法とされていた。
転向療法は医療、代替医療、宗教的な方法によって、他人に性的指向や性自認を変えさせることを目的としたものだ。
その人のセクシュアリティ、性的行動、性自認、性表現を変えたり、抑圧したり、否定しするもので、その根本的な前提は「LGBTQ+の人々は変われるし、変わるべきだ」というものだ。
個人が自分らしくあるための基本的な権利を侵害するものであり、否定的な結果や有効性の欠如を示す証拠が増えているために、このような行いは廃止するようにという声はノルウェーでは以前からあがっていた。
4人に1人が転向療法のような試みを体験
今年10月に発表された調査によると、宗教的背景を持つノルウェーのLGBT(その多くはキリスト教徒)を対象とした2024年の調査では、4人に1人が転向療法のような試みを体験したことがあると回答した。これには、祈祷、カウンセリング、屈辱的な会話、公の場での叱責、悪魔祓いなどが含まれる。
調査の回答者の何人かは、特に青少年指導者や説教師から同性愛を「罪」と言われ、「それを聞くのがつらかった」という子ども時代を語っている。ジェンダーやセクシュアリティの規範に違反すると、家族から追い出されたり、治療するために他国の「キャンプ」や収容所に送られたりするという恐怖、「汚れた思い」を取り除くはずの祈祷会、悪魔に取り憑かれたという罪悪感などの体験が報告された。
信仰や宗教のネットワークがいかに未だにクィア当事者にとって生活の一部としても重要であり続けているか、宗教的コミュニティほど他者のセクシュアリティや性自認を変えさせようとする問題点も浮き彫りとなった。
若い世代からホモセラピーの異常性を訴える声強く
ホモセラピーの禁止はノルウェーで選挙が開催される度にも対応が叫ばれる社会問題のひとつであり続けた。
特に小学校~大学という教育機関に子どもや若者に関係する政策を「学校政策」と呼ぶが、学校政策のひとつとしてもホモセラピー禁止は各政党の青年部から求められていた。
国会議員にも右派左派に限らずクィア当事者はいるために、「この時代遅れなセラピーをなくさなければいけない」というのがノルウェー社会全体を代表する声だった(宗教関係者は別の意見だったろう)。
賛成多数で可決
12日の国会でホモセラピーの禁止に賛成した国会議員は85人、反対は15人だった。
セラピーは今後禁止され、3年以下の罰則が課され、犯罪が深刻な場合は6年の罰則が課される。
禁止令は「性的指向や性自認を変更、否定、抑制するよう影響を与える意図で、心理療法、医学、代替医療、宗教に基づく方法、または同様の体系的な手順を用いて他人を不快にさせる者」に影響する。
ホモセラピーがまだ必要だと考える人々に向かって「クィアであることは治療が必要な状態ではない」とノルウェー国会は強烈なメッセージを送った。