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26歳で芸歴20年。大久保祥太郎を支える3つの教訓

中西正男芸能記者
仕事への思いを語る大久保祥太郎さん

日本舞踊家元の家系に生まれ6歳から芸能活動を始めた大久保祥太郎さん。26歳の今、早くも芸歴20年となりますが、ワタナベエンターテインメントの俳優集団「D-BOYS」のメンバーでありながら、2018年から劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」にも加入するなど、まさにマルチな活動を見せています。今月、来月と東京、愛知、大阪で上演されるミュージカル「ドッグファイト」にも出演。多角的に前進を続ける背景には長いキャリアの中で得た3つの教訓がありました。

「もう、辞めるしかないのか」

 「ドッグファイト」の稽古場でもみんなマスクをしての稽古なので、顔の半分が隠れた状態で歌ったり、踊ったりしているので、息苦しいですし、表情も見えないし、いろいろと新型コロナ禍でのやりづらさは感じています。

 これまでも舞台が中止になったりとか影響はあるんですけど、劇場を開けることができても、入っていただけるお客さまの数が半分になっていたり、客席がマスク姿のお客さまで真っ白になっていたり、これまで20年やってきても見たことがない光景をこの1年半でたくさん見ることになりました。

 そして、強く再認識したのが、自分はやっぱり芝居が好きなんだなあということでした。

 6歳から子役としてこの仕事を始めたんですけど、これまで「もうやめたい」とか「学校でみんなと遊びたい」と思うことがほとんどなくやってきたんです。

 子役を始めるきっかけというのは、家が日本舞踊の家系で父が林啓二という者なんですけれども、父の義兄が俳優の林与一という人間でして。

 そんな環境でもあったので、周りも舞台に立たせたかったというのはあったようです。周りも優しい人たちばっかりだったので、ありがたいことにそのままの流れで今に至るという感じだったんです。

 ただ、今回のコロナ禍で本当にいろいろなことを考えました。特に去年の3月から6月頃まではほとんど仕事ができないということも経験し「もう、辞めるしかないのか」ということを心底考えました。

 これは本当にありがたいことですけど、今までそれだけお仕事が空いたことがなく、取材の時などに「今の仕事をしてなかったら、何をしてたと思いますか?」みたいなことを聞かれることはあったんですけど、その時に想像するような感じとは全く違う感覚で、自分は本気で何が好きなのか。それを考えました。

 お酒を飲むことや食べることは好きだけど、今はエンターテインメント以上に飲食の皆さんは本当に大変な時期となっている。それ以外だと、ラジオが好きなので、ラジオ局で働くならどんな仕事内容になるのか。そんなこともいろいろと調べたりしていました。

 その思いを経て、これこそありがたいことに今もこのお仕事が続けられている。その中で、当たり前のことなんですけど、お客さまがいてくださってこその演劇なんだなということをこれでもかと再認識しました。

3つの教訓

 また、今回のことをきっかけに、これまでのお仕事を振り返ってみると、これも本当に恵まれているというか、要所要所でターニングポイントとなるお仕事をさせてもらってきたなと感じました。

 まず、2005年。10歳の年に「レ・ミゼラブル」に出してもらって、そこで子供ながらも役者としての心構えを持たせてもらえたのが大きかったと思っています。

 次に15年には舞台「三匹のおっさん」で松平健さん、中村梅雀さん、西郷輝彦さんと共演をさせていただき、僕は松平健さんの孫の役をさせてもらいました。

 この役が誰よりもしゃべって、反抗期の口の悪い高校生の役だったんですけど、実は場をまわすような役割も担っていたんです。今までに経験のない役どころでもあったので、かなり苦戦していたんですけど、演出の田村孝裕さんからさりげなく言っていただいた言葉が今も胸にしっかりと残ってまして。

 「ずっと背伸びしてたら、そのうち、かかとがついてくるから」

 この公演が東京・明治座からスタートして全国6カ所で公演をするロングランだったこともあって、この言葉が迷いの中で大きな指針になってくれましたし、今でもあらゆる局面で反芻する言葉でもあります。

 そして、18年から劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」のメンバーになったというのも本当に大きなことでした。

 昔から好きで見ていた「阿佐ヶ谷スパイダース」が劇団として新メンバーを募集していると聞いてオーディションを受けたんですけど、入ってみて、これまでの“当たり前”がことごとく覆されました。

 それまでは稽古場に行って稽古をして、稽古期間が終わったら劇場に入ってセットの前で稽古をして、本番をして、本番が終わったら帰ってくるというのが当たり前でした。

 でも「阿佐ヶ谷スパイダース」では、まず稽古場の環境を作るところから始まり、稽古場を作るのも、バラすのも自分たち。セットを作るのも自分たち。チケットのモギリをするのも自分たちで片づけをするのも自分たち。

 それまでも甘えていたつもりは全くないんですけど、実は、周りの方々がどれだけ大変なことをやってくださっていたのか。どれだけ支えていただいていたのか。それを身をもって痛感しました。

 小さな話かもしれませんけど、それまで当たり前のように使っていた小道具でも、一つ一つさらに丁寧に扱うようになりました。周りの皆さんへの感謝という思いは当然持っていたんですけど、その意味がやっと本当に分かった気がしました。

 そうやって支えていただきながら、改めて、自分は面白い仕事の仕方をさせてもらっているなと思います。

 日本舞踊の家系なので時代劇もできるし、商業演劇のようなエンタメ性のあるお仕事もさせてもらっていますし、劇団に入って小劇場でもやらせていただき、最近は多くのミュージカルもさせてもらっています。

 自分くらいの年代でこうやって、あれもこれもとお仕事をさせてもらうことは珍しいことだと思いますし、できたら、映画やドラマといった映像でもやっていきたいですし、そうやっていろいろなところで頑張ることが自分の存在感の見せ方なのかなと思っています。

 …ま、かなり欲張りなやり方でもあるんですけど(笑)、こういう振れ幅の人もなかなかいないですし、それをさらに強く、大きくしていけたらなと思っています。

(撮影・中西正男)

■大久保祥太郎(おおくぼ・しょうたろう)

1995年8月27日生まれ。東京都出身。若手男性俳優集団「D-BOYS」のメンバーであり劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」にも所属。子役として6歳から活動を始め、舞台を中心に「レ・ミゼラブル」、「マリー・アントワネット」、「ピーター・パン」など数々の作品に出演する。その後ワタナベエンターテイメントスクールを卒業し、2011年に出演した「ミュージカル・テニスの王子様」をきっかけにワタナベエンターテインメント所属となる。18年から劇団「阿佐ヶ谷スパイダース」の団員としても活動している。ベトナム戦争前夜、海兵隊員たちの間で行われたというゲームを題材にしたミュージカル「ドッグファイト」に出演。公演は9月17日から10月4日まで東京・シアタークリエ(9月17日~10月4日)、愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール(10月6日)、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(10月21日~24日)で上演される。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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