医療従事者が答えます、医療従事者は人の死に慣れているの?
こんにちは。
病院PTケイシーです。
本日は、医療従事者である私が
病院で8年働いてきて
人の死に慣れたのか?ということについて
お話していきます。
結論から言うと、
慣れます。
入職した当初、朝カルテを開いて
自分の担当患者様が亡くなったあとの
何とも言えない苦い気持ち、
なにかできなかったのかという後悔、
自分がしたリハビリが引き金になっては
いないかという不安。
そういった感情とはある程度
折り合いをつけられるようになりました。
それは、働く中である程度
知識がつくことで
カルテから読み取れる情報が
増えたことに加え
患者様の状態の変化などから
その患者様の予後を多少なりとも
予測することができるようになり
心構えをすることができるように
なってきたからだと思います。
そのため、
「まさかこの人が」という
感情になることが少なくなり、
「穏やかに、苦しまずに
命を閉じることができたかどうか」
ということが気になるようになり
人の死との向き合い方が
変わってきたように感じます。
そんな私ですが先日、
担当患者様が突然亡くなり
久しぶりに家に帰るまで
少し落ちこんでしまった
出来事がありました。
※個人を特定されないよう
一部脚色して書いています。
その方は、
お会いするといつも穏やかに
迎えてくれて、
楽しい話をしてくれる
素敵な患者様でした。
その日は少し呼吸が苦しそうで
それでも
「いつも通りマッサージしてよ」
とおっしゃったので
静かにマッサージをしました。
私は理学療法士なので
基本的には退院に向けて体を良くする
ためのリハビリを提供することが仕事です。
なので、その方の調子が良い頃は
「退院に向けて頑張りましょう」と
運動指導を行っていましたが
状態の改善がみられず
毎日の検査と治療で
ご飯はもちろんお水も飲めない
生活が続いていました。
私は、
治療がある程度落ち着くまでの期間は
少しでも体が楽になることを優先し
不安で退屈な時間が紛れるようにと思い
たびたびお部屋に伺いマッサージがてら
お話し相手になっていました。
病院で一番長い時間を患者様のそばで
過ごせる職種はリハビリスタッフなので
患者様から色んなお話を聞けることを
私自身もとても楽しんでいました。
帰り際、その方は横になったまま
「ありがとねー」と片手をあげて
おっしゃって、私も
「また明日来ます」と言って別れ
その翌朝、亡くなりました。
突然の状態悪化でしたが、
主治医の英断で
ぎりぎり家族の面会が間に合い
家族に見守られながら最後はとても
穏やかに命を閉じたようでした。
今は、このコロナ渦で
ご家族は一切面会に来られず
本当に残念なことに
今回のように主治医の判断で面会が許され
家族が看取れることはあまり
多くないように感じます。
そういったご時世を鑑みると
最後にその方がご家族に会えたことは
とてもよかったのだと思います。
ですが私は、ふと不安になりました。
今ご家族は、どんな気持ちなんだろうと。
日頃の差し入れや、まめな連絡から
ご家族様にその方がとても大切に
思われていることは
私にも伝わっていました。
ですが、一度も面会はできず
どんな入院生活を送っているかも
分からないまま、
検査のために何日も食事が
できずにいることは
ご家族にも伝わっていて
酸素のマスクをつけた苦しそうな
患者様の最後の姿だけを見た
ご家族は、どんな気持ちなんだろうと
不安に思ったんです。
私は、入院エリアから
降りることができないので
外来に来ていたご家族の
お顔も知りません。
ですが、お会いしたかった。
たとえば、
その方がリハビリそっちのけで
夢中でマラソン中継を見ていて
あきれて笑いつつ
転んだ選手を一緒に心配したことや
家族で行った美ら海水族館の話を
5回も聞かされたこと、孫と行った
うまい店を教えてやると、私の
仕事用の手帳に北海道やら福岡やら
なかなか行けないだろう遠方の
居酒屋の名前をメモしてくれたこと。
そんな他愛のないお話をしたことを
伝えたかったと思いました。
患者様のしてくれたお話のなかには
ご家族が知っている入院前の
その方らしいお話がきっとたくさん
散らばっています。
苦しいばかりの入院生活ではなく
ご家族との素敵な思い出が
その方を明るくしてくれて、
支えてくれていたから、
治療のなかでも笑顔の時間が
確かにあり、生き生きとした目で
私を楽しませてくれたことを
伝えたかった。
でも、朝仕事に来たらすべてが
済んでしまった後で、
それはかなわず私はなんともいえない
悔しい気持ちでした。
「死」というものに直面した時
私たち医療従事者にできることは本当に
少ないと思います。
ですが、
それまでの短くない入院生活の日々には、
私たち医療従事者がそばに居たこと、
そしてなにより、
その方のお話の端々にはいつも
ご家族や友人などと過ごした
大切な日々があり、お守りになり
希望となり、その方らしさを
守ってくれていたように
感じたこと。
そんなことを、このブログを通して
誰かに伝えられたらいいなと
思っています。
読んでくださり
ありがとうございました。
病院PTケイシーより
愛をこめて