Yahoo!ニュース

元宝塚歌劇団月組トップスター・珠城りょうが語る矜持と覚悟

中西正男芸能記者
元宝塚歌劇団月組トップスターの珠城りょうさん

 元宝塚歌劇団月組トップスターの珠城りょうさん(33)。昨年8月にタカラヅカを退団し、初のソロコンサート「CUORE(クオーレ)」を今月、来月と開催します。2016年、天海祐希さんに次ぐ入団9年目という早さでトップに就任し、重責を担う年月を過ごしてきました。その中で得た矜持。そして、新たな一歩を踏み出す中で定めた覚悟とは。

“売り”は何なのか

 昨年8月に退団して感じているのは、本当にありきたりな表現かもしれませんけど、タカラヅカは夢の世界だったということでした。

 辞めてまだ半年ちょっとですけど、自分がタカラヅカにいたことがもう信じられないというか。

 あんな衣装を着て、あんな舞台に本当に自分が立っていたのか。やっていた当人でさえ、その感覚がフワフワしているくらい、本当に夢の世界だったことを出てからまた改めて感じています。

 ただ、一つ確実に身に着いたと感じることもあります。タカラヅカでは日々2500人のお客さまが入る場で舞台をやらせていただきました。生の舞台ですからいろいろなこともあります。その結果、ちょっとやそっとのことではたじろがない(笑)。そこは鍛えられたと思います。

 責任を感じる。だからこそ緊張する。でも、お客さまはいらっしゃるし、何があってもやるしかない。他の選択肢はない。その時の「よし、やるぞ!」という覚悟の決め方はタカラヅカの日々の中で身に着けてきたものだと思います。

 退団して、そこから何をするのか。全く決まってなかったんですけど、改めて思ったのが自分は表現するのが好きだということでした。

 ただ、それと同時に強く思ったのが「自分から男役という要素を取ったら、何ができるんだろう」という思いでした。

 これまでやってきたことは、歌にしても、踊りにしても、芝居にしても、タカラヅカの男役としてのものだったので、そこがなくなると何が残るのか。

 「今の私という商品は、ここが売りです」と言い切れるポイントは何があるのか。そこが見いだせない。分からない。

 ご縁をいただき、今の事務所にお世話になることになったんですけど、その迷いみたいな部分は正直にお伝えしました。そこで、逆に事務所の会長さんから言っていただいたんです。

 「ということは、逆に『なんだってできる』ということだし、なんだってやっていいんだよ」

 この言葉がスッと胃の腑に落ちたというか。心が晴れた感覚になりました。

 だったら、自分にできることは何なのか。何をすれば求めていただけるのか。自分を知ってもらうためには何をすべきなのか。そこを一生懸命に考えながらやっている。今はそんな感じなんです。

「良かった」と思えるために

 タカラヅカを辞めると、いろいろなことを感じるということも聞いてきました。これまで男役の技術を身に着けるために日々努力をしてきて、またそこから女優になるのでより女性であることを意識するようになったとか。ただ、私は意外と「女性に戻らなきゃ」という感覚にはならなかったんです。

 タカラヅカにいた頃から、男役としての自分は意識しつつ、本名としての自分もしっかりいたんですよね。一歩家を出たら男役という“コート”を羽織るけど、家に戻るとそのコートを脱いで素の自分として存在していたというか。

 なので、今はそのコートは常に着ることなく、ずっと素の自分として生きている。それだけというか、自分という芯をもう一回改造するみたいな感覚はないんですよね。これまで通り、自分は自分でいるだけというか。

 これはタカラヅカの時も、今も同じなんですけど「自分の信念に従う」。ここはずっとブレずにきたところだと思います。

 別の言い方をすれば「何があっても自分が後悔しない生き方をする」ということなのかもしれませんけど、それはこれからも貫いていくところだと思っています。

 この先、60歳、70歳になった時に、どんなことをしていたいか。タカラヅカを出たことで、こういう取材の場でも聞かれることが増えました。

 ただ、答えとしては面白くないかもしれないんですけど(笑)、先のことは何が起こるか分からないし、どうなるかも分からない。ましてや60歳、70歳なんてことは想像すらできないので、今目の前にあることをとにかく一生懸命にやる。

 そして、逆に、いつどうなっても後悔しない毎日を送っておく。その覚悟を持ってやりきる。それしかないのかなと思っているんです。

 そんな中でも、一つ間違いないのは、毎年歳はとりますからね…。そして、タカラヅカを出て運動量が激減したので、最近ジムに通い始めました。

 タカラヅカの時は、日々歌って踊ってをしているだけでかなりのトレーニングになっていたんですけど、今は自分からそれをやらないとダメですしね。

 本当に今できることを全力でやっておく。ジムもそうだと思いますし、それが結果的に後々の自分の「良かった」になるのかなと思っているんです。

(撮影・中西正男)

■珠城りょう(たまき・りょう)

1988年10月4日生まれ。愛知県出身。2008年、宝塚歌劇団に入団。16年、天海祐希に次ぐ早さ(9年目)で月組トップスターに就任した。21年8月退団。ケイパークに所属する。初のソロコンサート「CUORE」を開催。4月30日から5月3日まで大阪公演(梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)、5月13日から15日まで東京公演(東京国際フォーラム)が行われる。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

中西正男のここだけの話~直接見たこと聞いたことだけ伝えます~

税込330円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

中西正男の最近の記事