これでは「成田離婚」ではなく「偽装結婚」だ。日本未来の党に政党交付金を支給するな
12党が乱立した先の総選挙で脱原発勢力の結集を目指した日本未来の党で、代表人事をめぐって嘉田由紀子代表(滋賀県知事)と小沢一郎氏ら旧「国民の生活が第一」メンバーが対立し、分裂することが決定的となった。
元国民新党の亀井静香氏はすでに未来の党からの離党を表明している。
27日付読売新聞によると、嘉田代表は周辺に「小沢さんとは『成田離婚』ですね」と自嘲気味に語った。未来の党に残る国会議員は元社会民主党政策審議会長、阿部知子氏一人となるが、その阿部氏は「(分裂劇は)結婚する時は予想しないでしょうね。成田離婚」と語っているが、有権者をバカにするのもいい加減にしろと言いたい。
党内主導権をめぐる対立とはいえ、嘉田代表と小沢氏の対立は最初から予想できたことで、これでは「偽装結婚」と批判されても仕方あるまい。
政党助成制度によると、国会議員が5人以上、もしくは国政選挙での得票率が2%以上の場合、政党交付金が支給される。
旧「国民の生活が第一」系は衆参で計15人の議員を有するため、新党を結成すれば政党交付金が出る。また、未来の党も総選挙で小選挙区の得票率が5%、比例代表が5・6%だったため、政党交付金が支給される。
政党交付金については、国民一人当たり250円を負担しており、選挙前にあわただしく結党して選挙が終わった途端、分裂するような政党に果たして政党交付金を受け取る資格があるのか。受け取ることができたとしても、直ちに返納すべきである。
こうした政党は容赦なく淘汰すべきである。
また、未来の党に合流することで「脱原発」票を集めようとした旧「国民の生活が第一」の行為は、有権者を欺く「選挙詐欺」に等しい。エネルギー政策をめぐる議論にとっても大きなマイナスだ。こんなデタラメがいつまでも許されて良いわけがない。
衆参両院とも小政党に有利な比例代表が導入されているため、選挙目当ての離散集合、野合が後を絶たない。
二大政党が定着している英国では、小選挙区で有効投票数の5%に達しなければ没収される供託金はわずか500ポンド(約6万9000円)、選挙期間中の費用は1万2000ポンド(約166万円)のため、志と資質さえあれば、だれでも政治家を目指すことができる。
選挙期間中だけ会社を休んで、落選すれば、また会社に戻る人も多い。供託金300万円、法定選挙費用でさえ優に1千万円を超える日本に比べて、英国は政治の間口が格段に広いのだ。
しかし、その一方で、単純選挙区で勝つには保守党か、労働党から立候補する必要があり、まず、党の厳しい審査とライバルとの競争を勝ち抜かなければならない仕組みが定着、政策本位の政党政治の基盤を強固なものにしている。
日本では、政治への敷居がやたらと高い一方で、政界では政党とはとても言えないような徒党集団が大手を振っている。
選挙ごとに繰り広げられる徒党集団の「偽装結婚」を防ぐには、衆参とも比例代表の比率を下げるか、比例で得票率が一定の基準に達しない小政党には議席を与えないなどの措置が必要だ。
自業自得とはいえ民主党が総選挙で壊滅的な敗北を喫し、日本の二大政党による政権交代システムは危殆に瀕している。二大政党制には健全野党の存在が不可欠だ。
市民の政治参加の間口を広げる一方で、小党乱立を防ぐことで政党政治を強化することが急務である。
(おわり)