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下馬評が高くWBC連覇を目指す米国代表に見え隠れする不安要素

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
監督未経験のマーク・デローサ氏が米国代表を率いる(写真:ロイター/アフロ)

【優勝オッズでは2大人気の米国代表とドミニカ代表】

 新年を迎えてからというもの、日本のスポーツ報道はすっかりWBCが中心になっている感がある。

 大谷翔平選手、ダルビッシュ有選手、鈴木誠也選手の侍ジャパン入りが正式発表され、さらに吉田正尚選手に加え、チーム史上初の日系人選手のラーズ・ヌートバー選手の内定が報じられ、過去最多のMLB在籍選手が加わることが確定的な侍ジャパンに対し、第2回大会以来のタイトル奪取に周囲の期待は高まるばかりだ。

 もちろん米国でもWBCへの関心は高まっており、すでに日本でも報じられているように、スポーツ・ベッティング(日本でいうところのスポーツくじ)の世界では早くも優勝オッズが発表されている。

 とりあえずオッズを発表している3社の優勝オッズを見てみると(別表参照)、人気4チームの顔触れはすべて同じで、中でも米国代表とドミニカ代表の下馬評が突出しているのが理解できるかと思う。

日時はオッズが公表された日(筆者作成)
日時はオッズが公表された日(筆者作成)

【すべて現役MLB選手で構成されそうな2ヶ国代表チーム】

 2ヶ国代表チームがダントツ人気なのは、当然といえば当然だろう。

 2022年シーズン開幕時点でMLBに在籍している選手を国別で見ると、ドミニカ人選手は米国(700人)に次いで2位の99人に上っている。ここ数年はずっとこの傾向で推移しており、今やドミニカが米国以外で最大のMLB選手輩出国になっているからだ。

 この2ヶ国代表チームはまだ30人のWBC出場選手ロースターを正式発表していないが、おそらく全選手が現役MLB選手で構成される公算が強く、必然的に優勝オッズの人気も高くなっているというわけだ。

【WBC史上最強との呼び声が高い米国代表】

 中でも米国代表チームは、WBC史上最強のチーム構成になるとの声が出ている。

 昨年7月に米国代表入り第1号として、マイク・トラウト選手がチーム・キャプテンを務めることが発表されて以来、ブライス・ハーパー選手、ムーキー・ベッツ選手、ピート・アロンソ選手等々、次々にMLBで大活躍するスター選手たちの代表チーム予備登録が発表され、一部では「野球版ドリームチーム」が完成するとの声も挙がっているほどだ。

 残念ながらハーパー選手は今オフにトミージョン手術を受けており、WBC参戦は絶望的になっているが、第4回大会に続き連覇を目指す米国代表として、強力な陣容で本番に臨んできそうだ。

【米国代表を率いるのは監督未経験のデローサ氏】

 そんな下馬評も高くスター軍団の米国代表だが、不安要素がないわけではない。今大会米国代表を率いるのが、これまでプロ、アマ問わず監督経験がまったくないマーク・デローサ氏だという点だ。

 MLB在籍16年を誇り、選手として第2回大会でWBC出場経験もあるデローサ氏だが、2013年シーズン終了後に現役引退して以降、MLBネットワーク等で解説者として活躍してきたが、現場に戻りコーチもしくは監督をした経験はまったくないのだ。

 一方でデローサ氏は、現役時代からMLB屈指のナイスガイとして知られ、選手の間でも絶大な信頼を受ける人柄で在籍した計8チームでチームのまとめ役を担ってきた人物だ。

【過去の優勝チーム監督はすべて経験者】

 チーム集合から強化試合を経て大会終了までわずか2週間で実施されるWBCの場合、デローサ氏のようなまとめ役がいるのは理想的だと考えられるが、逆に短期決戦なだけに、監督の采配が試合を左右することにもなりかねない。

 実際過去4大会の優勝チームの監督を見ても、王貞治監督、原辰徳監督、トニー・ペーニャ監督、ジム・リーランド監督と、MLBもしくはNPBで監督を経験したものばかりだ。

 ちなみにドミニカ代表の監督は、第3回大会から3大会連続でペーニャ氏が務めることになっている。

 一応米国代表はデローサ氏の補助として、MLB通算704勝を誇るジェリー・マニュエル氏をベンチコーチに迎え入れているものの、打撃コーチを務めるケン・グリフィーJr.氏、投手コーチを務めるアンディ・ペティット氏もデローサ氏同様、監督、コーチの経験がないというのも気になるところだ。

 果たしてデローサ氏の采配は、米国代表にどんな影響を及ぼすのだろうか。こればかりは大会本番を迎え、実際の采配を見守るしかなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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