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みんな大好きドクターイエローはどんな車両で、なぜ引退するのか #専門家のまとめ

梅原淳鉄道ジャーナリスト
東海道新幹線を走行中のドクターイエロー。2027年以降は姿を消すという(写真:イメージマート)

ドクターイエローとは東海道・山陽新幹線の軌道(線路)、電気、信号、通信といった設備を走行しながら検測(検査・測定)する機能をもつ車両です。鉄道愛好家だけでなく、一般の人たちのなかにもファンの多いドクターイエローは2024(令和6)年6月13日になり、がぜん注目を浴びるようになります。車両を保有するJR東海、JR西日本とも近い将来の引退を発表したからです。ドクターイエローとはどのような車両で、なぜ人気があるのかを探ります。

ココがポイント

▼子ども向けに書かれた記事と侮るなかれ。ドクターイエローの歴史、機能などのあらましがこの記事1本でよくわかります

・ドクターイエロー8つのひみつ(朝日新聞)

▼ドクターイエローに添乗してまとめた記事です。車内の様子であるとか、具体的に何をどのように検測しているかが理解できます

・幸せになれる!? ドクターイエローに潜入! その車内の秘密に新聞記者が迫る(交通新聞社「トレたび」)

▼筆者が執筆しました。ドクターイエローの検測精度は一体どの程度かや、なぜ人気があり、なぜ引退するのかなど、読者が知りたい点を中心にまとめています

・ドクターイエロー引退へ 人気の検測車両は技術の塊(日本経済新聞「鉄道の達人」)

エキスパートの補足・見解

今回紹介した3記事とも、ドクターイエロー引退後になぜ営業用の車両で検査・測定できるのかは触れられていません。実は電気、信号、通信といった設備は技術の進歩でドクターイエロー搭載と同機能の検測装置が小型、軽量化された結果、営業用の車両に搭載可能となりました。しかし、軌道検測はドクターイエローが実施する3点以上の地点を測定して軌道のゆがみを見つける差分法では装置の小型、軽量化が困難です。営業用の車両は慣性測定法と言って加速度を2回積分してレールの位置、つまり軌道の形状を求めており、装置はコンパクトになるものの、精度は低く、低速時には検測できません。近年慣性測定法の欠点を補った方式が開発されました。筆者は今後、こうした新しい技術について寄稿していきたいと考えています。

鉄道ジャーナリスト

1965(昭和40)年生まれ。大学卒業後、三井銀行(現在の三井住友銀行)に入行し、交友社月刊「鉄道ファン」編集部などを経て2000年に鉄道ジャーナリストとして活動を開始する。『新幹線を運行する技術』(SBクリエイティブ)、『JRは生き残れるのか』(洋泉社)、『電車たちの「第二の人生」』(交通新聞社)をはじめ著書多数。また、雑誌やWEB媒体への寄稿のほか、講義・講演やテレビ・ラジオ・新聞等での解説、コメントも行っており、NHKラジオ第1の「子ども科学電話相談」では鉄道部門の回答者も務める。2023(令和5)年より福岡市地下鉄経営戦略懇話会委員に就任。

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