日本ヘリコプター護衛艦「いずも」、中国空母と並走
12月30日、中国国営メディア中央広播電視総台の軍事チャンネル央広軍事(央广军事)は外洋訓練に出ていた空母「遼寧」が母港の青島に帰還したことを報じました。
訓練期間中、外国の軍艦や航空機が空母艦隊に繰り返し接近して監視を行ってきたと伝えていますが、紹介されている写真には日本護衛艦「いずも」が中国空母の直ぐ近くで並走している様子が映っていました。一番上の、中国海軍の艦載ヘリコプターから撮影された写真です。
手前に中国空母「遼寧」、中央に日本護衛艦「いずも」、その後方に中国フリゲート「054A型(ジャンカイⅡ級)」。(※054A型フリゲートは2隻確認されており、片方は艦番号598「日照」と判明済み。)
「いずも」は正式な艦種はヘリコプター護衛艦ですが、実質的に就役当初からヘリコプター空母であり、現在はF-35B垂直離着陸戦闘機が搭載できるように軽空母への改造と運用試験が実施されている最中です。事実上、日本と中国の空母が接近して並走していたことになります。
実は中国空母「遼寧」を日本護衛艦「いずも」が追尾している様子は、民間衛星が撮影した写真によっても捉えられています。
民間衛星画像サービス「プラネット・ラボ(Planet Labs)」の光学衛星が、沖縄本島と宮古島の間にある宮古海峡を南進する中国空母「遼寧」とその付近に居る日本護衛艦「いずも」の姿を捉えていました。
ただしお互いがこれほどまでに接近していたとは、中国海軍の撮影した写真が公表されて初めて判明しました。
日本側が12月21日に公式発表した写真(撮影日時は12月19日)では中国空母に大胆に接近して撮影した構図のものがあったので、護衛艦が接近して撮影していたのだろうとは推測されていましたが、まさか事実上の空母である「いずも」が接近していたとは思いませんでした。
確かに防衛省統合幕僚監部12月21日発表には中国空母を「いずも」が追尾していたことが書かれていますが、書かれていないだけで他の護衛艦も一緒に居るのだろうと推測していました。しかし本当に書かれてある通りに「いずも」がこの時期から単艦で追尾していたようです。
「いずも」は搭載ヘリコプターの武装を別とすると、自艦の火力は近接防御兵器くらいしかありません。そのような空母がまるで本当の駆逐艦のように外国軍艦を警戒・監視するために接近・追尾を積極的に実施するという、あまり他では聞いたことのない大胆な行動を実施しています。
なお中国空母機動部隊は、日本防衛省統合幕僚監部の発表によると12月16日に太平洋(フィリピン海)に進出、12月25日には東シナ海に戻って来ています。中国側の発表では12月30日に母港の青島に戻っています。
- 12月15日・・・男女群島(長崎県)の西350kmを南東進。
- 12月16日・・・沖縄本島と宮古島との間の海峡を南進、太平洋へ。
- 12月19日・・・北大東島(沖縄県)の東約300kmの海域で訓練。
- 12月20日・・・沖大東島(沖縄県)の南東約315kmの海域で訓練。
- 12月25日・・・沖縄本島と宮古島との間の海峡を北西進、東シナ海へ。
今回の空母「遼寧」の太平洋での行動期間は約10日間。中国近海での航行期間を含めると、青島から出港した日時は12月9日で帰港は12月30日、連続行動期間は約20日間でした。(※出港日時が判明したので日付けを修正)
今年4月にアメリカ海軍のイージス駆逐艦が中国空母を追尾して写真を撮影した時に大胆に接近していたことが話題となりましたが、おそらくこの程度の距離の接近監視は通常の監視行動の範疇であり、以前から日常的に行っている行動なのだと思われます。