中国共産党大会開幕で分かる習近平氏が描く独善的世界観とは?
5年に1度の中国共産党大会が、16日北京で開幕した。大会は、人事を含め今後5年の党の方針を示すものだが、習近平氏は、これまでの2期10年に加え3期目も党のトップを目指すとみられる。習氏が導こうとする国はどこに向かうのか。開幕式で行った演説から、同氏が率いる中国の独善的な世界観がうかがえる。
演説で自画自賛...
習氏が開幕式で行った演説は2時間近くに及んだ。
習氏が党のトップである総書記をつとめて10年。演説の中で披露した、その10年間の成果の自賛ぶりは、中国以外から立場から見た認識とは驚くほど違いがある。
最近緊張が高まっている台湾をめぐる情勢
日本やアメリカの立場からすれば、中国が台湾周辺で軍事演習を活発化させたり、軍用機を頻繁に台湾との中間線を越えて侵入させ、それを常態化しようとしたりする行為は、軍事力を背景に、現状の変更を試みる挑発的なものに見える。日本をはじめとする周辺国との緊張を煽り、偶発的な衝突さえ招きかねない。
しかし習氏は、演説でその行為をこう肯定する。
「我々は、国家の主権と領土を守り、台湾独立勢力に反対する堅い決意と強大な能力を示した」
一国二制度が骨抜きになった香港
香港で、中国大陸への犯罪者引き渡しをめぐる法律の改正をめぐって、市民が反対の声をあげ、香港警察がそのデモ隊を激しく抑え込んだのは記憶に新しい。香港では、その後、政治活動や言論の統制を強める香港国家安全維持法などが施行され、反中国的な新聞が停刊に追い込まれるなどの事態になった。
香港社会や欧米からは、一国二制度が骨抜きにされ、香港の自由が失われると批判が上がった。当時の日本の茂木敏充外務大臣も、一連の状況に対し、次のようにコメントし強い懸念を表明した。
「香港が享受してきた民主的、安定的な発展の基礎となります言論の自由や、報道の自由にもたらす影響等について、重大な懸念を強めている」
ところが習氏の演説では、香港の変化はこうなる。
「“愛国者が香港を統治する”の原則を実施し、香港情勢において混乱から統治という重要な転機をもたらした」
中国が堅持してきた「ゼロコロナ政策」
国内で生じている歪みのみならず、外国にとっても、中国経済の失速やサプライチェーンへの影響がすでに懸念材料となっている。
しかし習氏は演説で「人民を至上とし、生命を至上とし、ゼロコロナは揺るぎない」とした上で、弊害を顧みず成果のみを強調する。
「防疫対策と経済社会の発展の調整で、大きな成果を上げた」
戦狼外交は...
2010年にGDPで日本を抜いた中国は、現在に至る10年余りの間に、世界経済とより深くつながり、軍事的にも大きな力を手にした。海洋強国を目指し積極的に海洋進出を進めるようになった。その結果、アメリカをはじめ、諸外国との軋轢を多く抱えるようになり、国際的には厳しい現実に直面している。
周辺国から見れば、なりふり構わぬ覇権主義的な対外姿勢。それは時に「戦狼外交」などと外国メディアなどから揶揄されてきた。ちなみに「戦狼外交」は、外国で大暴れする中国の特殊部隊員を描いた映画に因むもので、中国国内では、「外国に屈しない外交」というイメージでポジティブに使われる。
その「戦狼外交」は、習氏にはこう見えるそうだ。
「国家の尊厳と核心的利益を守る闘争の中で、我が国の発展と安全の主導権をしっかりと握った」
中国はどこに向かう?
こうした認識に基づく中国は、「社会主義現代化強国」を今世紀半ばまでに建設することを目標としている。習氏の演説の後半は、その実現に向け今後解決すべき課題を多岐に亘って示したものだ。経済や軍備の強化のみならず、国民の生活や教育水準の改善なども含まれる。
ちなみに台湾をめぐっては、「祖国統一の大事業を揺るぎなく推進する」とした上で、習氏は従来の方針を改めて強調した。
「平和統一に向けて最大の努力を尽くすが、武力を使う選択肢は決して放棄しない」