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若手2投手の台頭で大変貌を遂げたエンジェルス先発陣!再認識されるべきエプラー前GMの功績

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
先発陣の中でチーム最高の防御率1.91を誇るパトリック・サンドバル投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【アストロズと首位争いを演じるエンジェルス】

 エンジェルスの快進撃が止まらない。

 開幕カードこそアストロズ4連戦を1勝3敗とし厳しいスタートを切ったが、それ以降は現地時間の5月15日が終了し時点で10カードを戦い、9カードで勝ち越しもしくは引き分けている。

 ここまで24勝13敗でアストロズとア・リーグ西地区首位に並び、ペナント争いで早くも2チームが抜け出した感がある。まだシーズンが始まったばかりだが、エンジェルス・ファンとしては2014年以来のポストシーズン進出に期待が高まるところだろう。

【チームの好調を支える予想外の先発投手陣】

 チーム好調の要因はいくつか考えられる。まず真っ先に挙げられるのが、ようやく機能し始めた打線だろう。

 昨年はマイク・トラウト選手とアンソニー・レンドン選手が負傷により長期離脱を余儀なくされ、本来の攻撃力を発揮することができなかった。

 ところが今シーズンは開幕から上記2選手が打線に並び、大谷翔平選手を加えた黄金トリオがようやく揃ったこともあり、MLB屈指の強力打線を形成している。MLB公式サイトによれば、現時点で本塁打、打点、得点の3部門でMLB首位、もしくは首位タイにつく爆発力を見せている。

 ただ打線に関しては、元々その潜在能力が高いことは誰もが認識していたことなので大きな驚きはないだろう。むしろ予想を上回る活躍でチームを支えているのが、長年チームの弱点だと指摘され続けた先発投手陣だ。

 ここまで先発投手陣の防御率は2.97と、MLB4位につけている。昨オフに大幅補強したリリーフ投手陣の防御率が同12位の3.45ということからも、期待されたリリーフ投手よりも先発投手の方が好調だということが理解できるだろう。昨シーズンの先発投手陣防御率が同22位の4.78と低迷していたことを考えれば、すっかり様変わりした感がある。

 つまり現在のエンジェルスは投打ともにMLBトップクラスの活躍をしているのだから、快進撃を続けているのも当然といえるわけだ。

【若手2投手の台頭が先発投手陣を安定化】

 先発投手陣の防御率が低いということは、バランス良く投手が揃っていることを意味している。

 大谷選手に加え、昨オフに獲得したノア・シンダーガード投手が先発投手陣の柱になると期待されていたが、それ以外の投手たちも健闘しているからこそMLB4位の防御率を誇っているのだ。

 エンジェルスは6人でローテーションを回しているため規定投球回数に達しておらず、MLB公式サイトの防御率ランキングには誰一人登場していないが、パトリック・サンドバル投手の1.91を筆頭に、シンダーガード選手が2.45、大谷選手が2.78、マイケル・ロレンゼン投手が3.57、リード・デトマーズ投手が3.77──と、かなり安定しているのが理解できる。

 ただ開幕からローテーションに入っていたホゼ・スアレス投手が、防御率6.35と不振だったためマイナーに降格している。だが彼の代わりにスポット登板で起用されているジョナサン・ディアス投手が、2試合に登板し無失点を続けており、十二分にその穴を埋めている。

 ロレンゼン投手に関しては、主にリリーフ投手としてだがレッズ時代にある程度の実績があることを考えると、現在の先発投手陣の好調を支えているのは、サンドバル投手とデトマーズ投手という若手2投手の台頭が挙げられるだろう。

【2投手を獲得していたのがエプラー前GMだった】

 サンドバル投手は2018年にアストロズとのトレードで獲得した投手で、またデトマーズ投手は2020年のドラフトで1巡目指名した選手だ。2人ともチームの期待通りに成長し、先発投手陣を支える存在になろうとしているわけだ。

 特にデトマーズ投手に関しては、22歳の若さで開幕ローテーションに大抜擢され、5月10日のレイズ戦ではノーヒットノーランを達成。まだまだ完成された投手とはいえないが、その潜在能力の高さを遺憾なく披露している。

 この2投手がシーズン最後まで現在のような投球を披露できるかはまだまだ未知数だが、彼らの活躍が今後のエンジェルスの行方を大きく左右することになりそうだ。

 そしてこの2投手の獲得を主導した人物こそ、ビリ・エプラー前GMだ。残念ながら就任5年間でポストシーズン進出を果たせずチームを去ることになったが、こうしてエンジェルスに大きな財産を残していたのだ。

 改めてエプラー前GMの功績が評価されるべきではないだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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