ペンタゴン、議会に続き対北武力行使容認に傾く米世論
差し迫る北朝鮮のICBMの脅威にペンタゴンだけでなく、議会でも北朝鮮への軍事オプションを求める声が高まりつつある中、米世論もまた北朝鮮への軍事力行使容認の方向に流れていることが一連の米世論調査の結果、浮かび上がってきた。
(参考資料:勝者は?「予測不能のトランプ」VS「統制不能の金正恩」)
北朝鮮で1年3カ月以上拘束され、昏睡状態となって6月13日に送還された米大学生のオットー・ワームビアさんが死亡した際の6月の世論調査では、米国民の49%が「北朝鮮に罰を与えるため行動を取るべき」と考えており、「その必要はない」(35%)を上回った。また、「行動を取るべき」との回答者のうち3分の1が「より強力な経済制裁」を挙げ、「軍事行動を取るべき」は6人のうち一人に過ぎなかった。
ところが、北朝鮮が7月4日に初のICBMを発射するや、政治専門媒体のポリティコと世論調査機関「モーニングコンサルタント」が約一週間後に共同で実施した調査では「北朝鮮」が米国民にとっての一番の脅威対象に躍り出た。北朝鮮(40%)がトップで、驚いたことに2位の「イスラム国」(30%)、3位の「ロシア」(16%)を大きく引き離していた。
ちなみに4年前の世論調査では「北朝鮮の核開発は脅威である」(67%)と、米国人の3人のうち2人が受け止めていたが、当時はそれでも米国人にとっての一番の脅威は「アルカイダ」等イスラム過激派集団(75%)で、「北朝鮮の核開発」はイランの核開発計画(68%)よりも下回っていた。また、「米国にとって最大の脅威の国」の質問でもイランと中国がそれぞれ16%で最も多く、北朝鮮はイラクと並んで7%であった。
米国民の間で北朝鮮脅威が高まったのは、ブルムバーグ紙(7月17日付)によれば、北朝鮮のICBM発射により米国民の55%が「北朝鮮の対米核攻撃は現実性がある」とみなしていることに尽きる。
有力紙「ワシントン・ポスト」(7月20日付)の世論調査によると、米国民の81%が「北朝鮮は米国にとって脅威」と回答し、そのうち66%が「深刻な脅威」と認識していた。続く「米国と北朝鮮の全面戦争が心配か」と尋ねる質問には回答者の74%が「懸念」と答えたという。
北朝鮮の核・ミサイル問題の解決手段としての軍事力行使については前出の政治専門媒体のポリティコと世論調査機関「モーニングコンサルタント」の共同調査では米国民の49%が支持していた(共和党支持者63%、民主党支持者40%が支持を表明)。
(参考資料:北朝鮮に対する米軍の先制攻撃はいつでも可能な状態)
一方、共和党系のFOXニュースが7月18日に行った世論調査では半数を上回る55%が武力行使を支持し、「外交手段だけで解決できる」と答えたのは約半分の29%に留まった。共和党員に限ると、73%が武力行使に賛成だった
トランプ大統領も米議会共和党の重鎮、リンゼー・グラム上院議員が8月1日、NBCに出演し、明かしたところよると、トランプ大統領は「北朝鮮がICBMによる米国攻撃を目指し続けるのであれば、北朝鮮と戦争になる」と述べたようだ。
支持率急落のトランプ大統領にとっては今が、北朝鮮攻撃のチャンスとみなしているならば、予測不能の行動に出るかもしれない。