動静途絶えた金正恩「謎の呼吸器疾患」で危機的状況か
ソウルに拠点を置く北朝鮮専門サイト「NKニュース」は25日、北朝鮮の首都・平壌で今月29日まで5日間の都市封鎖令(ロックダウン)が下されたと伝えた。呼吸器疾患の患者数増加を受けたものとされるが、当局は疾患の詳細を示さず、新型コロナウイルスとの関連にも言及していないという。
同サイトはまた、平壌市民が厳格な防疫措置に備え、物資の買いだめをしているようだとも報じていた。
北朝鮮は現在、1990年代の大飢饉「苦難の行軍」以来の食糧難の中にあるとする分析も出ており、そこに新型コロナウイルスの再拡大が重なったとすれば、体制の危機につながりかねない状況と言える。
本人感染の可能性
一方、金正恩総書記は3週間以上にわたり、動静が伝えられていない。元日に、祖父と父の遺体が安置された錦繡山(クムスサン)太陽宮殿を訪問。また朝鮮少年団の代表らと記念写真を撮るなどして以降、公開の場に現れていないのだ。
金正恩氏は、今月中旬に開かれた最高人民会議(国会)第14期第8回会議にも出席しなかった。同氏は代議員(国会議員に相当)ではないが、2019年から最高人民会議に出席し、施政演説を行うなどしてきたにもかかわらずだ。
報道が事実ならば、これも「謎の呼吸疾患」拡大に対応した動きである可能性がある。
北朝鮮では昨年8月、金正恩氏が国内で感染が広がった新型コロナウイルスとの闘いである「最大非常防疫戦」に勝利したと高らかに宣言。これにより、発熱者などが増加しても新型コロナウイルスの感染を認めることができない状況が生まれてしまった。
その一方、北朝鮮当局は2020年1月から続けてきた極端な国境封鎖を徐々に緩めている。中国との貿易途絶でモノ不足が深刻化し、これ以上は耐えられなくなったのだ。
(参考記事:北朝鮮国民が目を背ける「見せしめ射殺体」の衝撃の現場)
そのような状況下で、新義州(シニジュ)など中国と国境を接する地域や、貿易港を擁する南浦(ナムポ)を中心に発熱、高熱、咳、呼吸困難、喉の痛みなどを訴える人が最近になって急増していると、複数のデイリーNK内部情報筋が伝えていた。
そしてこの間、金正恩氏は数百人規模の政治行事に複数回、参加している。金正恩氏本人が「謎の呼吸器疾患」に感染していたとしても、不思議ではなかろう。