三陸鉄道 「特別列車運転」 のお知らせ
6月1日から8月7日までの計68日間、岩手県で「三陸防災復興プロジェクト2019」が開催されます。
震災から9年目を迎えた2019年は、三陸鉄道が久慈から盛間が全通し一貫経営になり、
陸前高田市で整備が進められている東日本大震災津波伝承館の開館、
ラグビーワールドカップ2019の釜石開催など、三陸地域が日本国内のみならず世界的に注目される年となります。
この機会を捉えて、東日本大震災の風化を防ぎ、国内外からの復興への支援に対する感謝を示し、さらには、東日本大震災の記憶と教訓を伝えることにより、日本国内はもとより世界の防災力向上にも貢献していくこと。また、併せて豊かで多彩な自然環境、地形・地質、風土に根差した歴史の中で育まれた文化遺産や伝統芸能、多種多様な食材や郷土料理など、三陸地域の多様な魅力の国内外への発信と交流の活発化により、三陸地域への関心や認知度を高めながら、新しい三陸の創造につなげていくことを目的とする。
これがこのプロジェクト開催の趣旨(抜粋)です。
三陸鉄道で運転される特別列車
さて、この三陸防災復興プロジェクト2019の期間中に三陸鉄道で運転される三陸鉄道の特別列車をご紹介します。
【三陸プレミアムランチ列車】
運転日 6月15日 (現在申込受付中)
運転区間 盛-宮古
募集人員 40名
運転日 7月14日 (6月12日申込受付開始)
運転区間 久慈-宮古
募集人員 40名
両コースとも要予約。参加費用10000円
【三陸プレミアムランチ・うほほ列車】
運転日 6月30日 (6月12日申込受付開始)
運転区間 久慈-宮古
募集人員 30名
【復興の今・学習列車】
運転日
第1回:6月8日(申込受付中)
第2回:7月6日(6月12日 申込受付開始)
【三陸縦断夜行列車・さんりくあさかぜ号】
運転日
第1回:7月20日~21日(6月12日申込受付開始)
第2回:7月27日~28日(6月12日申込受付開始)
運転区間 盛-久慈
今回の特別運転の列車の中でハイライト的存在なのがこの夜行列車です。
三陸鉄道が盛から久慈まで全通し、全長163km、日本一長い第3セクター鉄道になりました。
その長さをたっぷりと楽しめるのが夜行列車。
一晩列車の中で過ごすことができる貴重な経験ができる特別運転です。
上記の列車のうち、すでに予約受付をしているものはまだ空席があるようです。(5月29日正午現在)
6月12日予約受付開始のものは6月12日午前9時受付開始です。
詳細につきましては三陸鉄道のホームページにてご確認ください。
三陸鉄道の課題
今年3月に旧JR山田線区間を引き継いだ釜石-宮古間が開業して「リアス線」163kmが全通しました。
これによって今まで南北に分かれていた路線が一つにつながり、運行管理の面では効率的になったと感じています。
筆者は3月23日の全通式からしばらく経って、お祭りムードが一段落した4月中旬に三陸鉄道を訪ねました。
三陸鉄道の中村一郎社長さんとは、筆者がいすみ鉄道社長時代からの旧知の間柄ですので、全線開通の祝辞を述べると、中村社長さんがこう切り出されました。
「いや、厳しいですよ。何しろ、震災と津波で家が無くなってしまったところに線路を敷きなおしたのですから、お客さんになるはずの住民が戻って来ていないんです。」
「今年は防災復興プロジェクトがありますし、ラグビーワールドカップも釜石で開催されますから、皆様の脚光を浴びることができます。来年はオリンピックもありますから何とか行けると考えますが、問題はその後ですね。その後、継続的に三陸鉄道から情報発信し、皆様にいらしていただかなければなりませんから、全通したと言っても喜んでばかりはいられません。」
確かにそうですね。
筆者もローカル線がどれだけ大変かは十分理解しているつもりですが、地域住民がまだ戻って来ていない沿線を見ると不安がよぎります。
「三陸鉄道が走ることが復興のシンボルですから、三陸鉄道が復活したから故郷に戻れるとか、三陸鉄道があるから移住してみようといった皆さんは多いと思います。そういう皆様方に夢と希望を持っていただくことが三陸鉄道の役目ですから、頑張って行くしかありません。」
中村社長さんが付け加えます。
「でも、ありがたいことに、今回運転再開した区間もそうですが、地域の皆様方が一生懸命鉄道を応援してくれています。とても心強いですよ。やはり、地域と一体になって震災復興を継続していくためには、本当に鉄道は必要なんだと思います。」
田舎のローカル鉄道は、今までの考え方からすると、自動車へ移行してしまった地域住民の皆様方にどうやって列車に乗っていただこうかということが課題でした。
でも、ここ、三陸鉄道は、これから新しい町づくりをしていくためには鉄道が必要である。
鉄道の駅が核になって新しい町ができていく。
そのためになくてはならない存在として三陸鉄道があるわけです。
だから、今までの考え方を変えなければならないのだと思います。
昔の都市開発ではありませんが、まず道路と鉄道を作り、そこに町が出来上がっていく。
筆者が子どもの頃開通したばかりの田園都市線は原野の中を走っていました。
それが今では沿線にたくさんの住民が住んでいます。
そこまで極端ではないにしても、三陸鉄道が新しい需要を開拓し、ここに新しい町ができていくきっかけになる。
気が長い話ではありますが、インフラとしての大きな役割を担っているのが三陸鉄道だと実感しました。
当面は赤字経営必至の三陸鉄道ですが、運賃収入から経費を差し引けば鉄道本体は赤字かもしれませんが、この鉄道が地域に利益をもたらすことは間違いありません。
皆様も、ぜひ、三陸鉄道の旅をご計画くださいますようお願いいたします。
まずは三陸防災復興プロジェクト2019の特別列車からいかがでしょうか。
沿線には美しい景色とおいしい食材や郷土料理、そしてそれを育む温かな人情が満ち溢れていますから。
三陸鉄道と沿線地域に今後も末長いご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。
※本文中に使用した写真はすべて筆者が撮影したものです。