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渡辺明王将(35)失冠の大ピンチ? 王将戦第6局は1日目終了時点で広瀬章人八段(33)リードの展開

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月13日9時。佐賀県上峰町・大幸園において第69期大阪王将杯王将戦第6局▲広瀬章人八段(33歳)-△渡辺明王将(35歳)戦が始まりました。

 七番勝負はここまで渡辺王将2勝、広瀬八段3勝。第5局では広瀬八段が勝って、王将位獲得まであと1勝と迫りました。

 第6局は広瀬八段が先手で、戦型は角換わりとなりました。現代の流行は互いに腰掛銀に組む形ですが、渡辺王将は右玉に構えました。

 角換わりでは互いに左側に堅い囲い(城)を作って、そこに玉を収めることが多い。対して右玉は逆サイドに玉を配置して、バランス重視で指す方針です。渡辺王将が右玉を採用するのは、相当にレアです。

 右玉側は、相手の出方をうかがってじっとしている場合が多いのですが、渡辺王将は積極的に玉頭から盛り上がります。このあたりは、棋風も表れるようです。

 広瀬八段は相手の動きに自然に応じます。そして頃やよしと見るや、桂を跳ね出して、強く反撃に転じました。その時点ですでに、広瀬八段がリードを奪ったようです。

 広瀬八段の攻めが始まると、渡辺玉は早くもピンチに陥ったように見えます。

 66手目。渡辺王将は桂を打って広瀬陣に迫ります。ここで広瀬八段が次の手を指さずに封じ手とし、18時過ぎ、1日目の対局が終わりました。

 2日制の対局では、1日目で大きく差がつくケースは、あまりありません。しかし本局の場合は、広瀬八段が大きくリードしていると言ってよさそうです。現在は広瀬八段が初の王将位獲得に迫りつつあります。

 ただし、まだ勝敗が決するような段階ではありません。渡辺王将は第3局で苦しい展開を耐え抜き、最後に逆転勝ちを収めています。まだまだどうなるかはわかりません。

 はたして明日2日目、どのような結末が待っているでしょうか。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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