ヨーロッパの難民危機
最近の難民の急増には、いくつかの背景がある。まずシリアの内戦があげられる。難民の中で最大のグループがシリア人であるからだ。なぜ、この時期に突然にシリア難民がヨーロッパに向かい始めたのだろうか。三つの要因が指摘できる。一つは、難民の増大に、国際的な支援の方が対応していないという現実がある。内戦前のシリアの総人口は2200万人ほどと推定されているが、その過半数が難民化している。日本の人口比に当てはめれば6000万人以上が難民化している計算になる。難民は、故郷を離れたもののシリア国内に留まっている国内難民と周辺諸国に流出した難民に二分できる。ヨーロッパに押し寄せているシリア人の難民の大半は、シリアの周辺諸国に逃れていた難民であろう。最大の難民受け入れ国はトルコであり、200万を収容している。既にトルコ政府は50億ドルを難民支援に支出した。しかし、増大する難民への対応に苦慮している。しかもヨーロッパ諸国を始め国際社会からの支援は十分ではない。難民たちがヨーロッパへと動き出した背景である。ヨルダンにしてもレバノンにしても、人口の何割にもあたる難民を受け入れており、その負担にあえいでいるのが現状である。しかも、この二つの国はパレスチナ難民をも多数受け入れている。その負担の重さが想像できよう。
この記事は有料です。
高橋和夫の中東・イスラム・国際情報のバックナンバーをお申し込みください。
高橋和夫の中東・イスラム・国際情報のバックナンバー 2015年9月
税込275円(記事3本)
※すでに購入済みの方はログインしてください。