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藤井聡太NHK杯選手権者、2連覇か? 佐々木勇気八段、リベンジで初優勝か? 3月17日、NHK杯決勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 3月17日。第73回NHK杯将棋トーナメント決勝、藤井聡太NHK杯(八冠)-佐々木勇気八段戦が放映されます。

 決勝戦で解説を務めるのは、名誉NHK杯選手権者・羽生善治九段です。

昨年決勝は藤井勝ち

 2022年度決勝▲佐々木七段-△藤井五冠(竜王・王位・叡王・王将・棋聖)の棋譜は公式ページで公開されています。

 佐々木七段先手で、戦型は相掛かり。角交換を経て、互いの金が7七と3三に配される、新時代を思わせる序盤となりました。

 戦いが始まって、中盤の68手目。藤井五冠は自陣の端に角を据えます。

 73手目。佐々木七段は戦いが起こっている8筋の歩を放置して、5筋の歩を取ります。以下藤井五冠の攻めを呼び込み、カウンターに出て、一気に激しい終盤戦へと入りました。

 佐々木七段は2枚の飛車で、中央の藤井玉を左右はさみうちの形にします。

 102手目、藤井五冠はと金で銀を取りました。自玉の詰みを防ぎながら、相手玉へ詰めろをかける「詰めろ逃れの詰めろ」になっています。

 対して105手目。佐々木七段は、中段に角を打ちます。これも「詰めろ逃れの詰めろ」。

 106手目。藤井五冠は7筋に桂を打ちます。8筋の飛車の利きを止めながら角取りに当て、そしてなんとこれもまた「詰めろ逃れの詰めろ」になっていました。

 早指しの中でのすさまじい最終盤を制し、116手で藤井五冠が勝利。NHK杯初優勝を飾っています。

そして今期も両雄が勝ち上がる

 今年度は両者ともにシードで藤井NHK杯はAブロック、佐々木八段はBブロックに配されました。

 藤井NHK杯は2回戦から順に出口若武六段、久保利明九段、伊藤匠七段、羽生善治九段に勝って決勝に進みました。

 佐々木八段は服部慎一郎六段、古森悠太五段、佐藤天彦九段、増田康宏七段(現八段)に勝って決勝に進んでいます。

 決勝で藤井NHK杯が勝てば2年連続、2回目の優勝。佐々木八段が勝てば全棋士参加棋戦で初めての優勝となります。

 両者は過去に公式戦で5回戦い、佐々木1勝のあと、藤井4連勝。非公式戦での対局は何度かありましたが、公式戦では昨年の決勝以来の対戦となります。

藤井NHK杯、早指し4棋戦のすべてで決勝進出(2年連続)

 現在おこなわれているトーナメント制の早指し4棋戦。藤井NHK杯は2022年度、史上初めてそのすべてで優勝を果たしています。今年度は4棋戦すべてで決勝へと進み、日本シリーズは優勝。銀河戦と朝日杯では準優勝でした。

 はたしてNHK杯はどうなるでしょうか。

藤井聡太NHK杯、史上最高勝率記録の更新なるか?

 藤井NHK杯の今年度勝率は0.865(45勝7敗1持将棋)です。

 3月17日には棋王戦五番勝負第4局、伊藤匠七段との対局もおこなわれます。

 藤井NHK杯は午前に放映されるNHK杯決勝で勝って優勝し、夕方から夜にかけて決着がつく棋王戦第4局でも勝って防衛を果たせば、勝率0.870(47勝7敗1持将棋)。中原誠五段(現16世名人)が1967年度に記録した史上最高勝率0.855(47勝8敗)を上回ります。

 藤井NHK杯がNHK杯決勝で敗れた場合には、その時点で新記録、およびタイ記録の可能性もなくなります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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