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がん検診受診率、増加傾向だがまだ3~4割台

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 「検査で見つかるのがイヤ」という人もいるが、検査で病気が発生するわけでは無い

他の傷病の治癒方法の発見や治療法の改善が進むに連れ、相対的に研究進捗の歩みが遅い「がん」の発症率、そしてがんを起因とする死亡率は増加の一途をたどっている。厚生労働省の人口動態調査の結果を見ても、死亡率は寿命の延びと共に、老化で発生しやすくなる肺炎、心疾患、そして悪性新生物(がん)によるものが増加をしている。

↑ 主要死因別にみた死亡率の年次推移(人口10万対)(戦後限定)(-2012年)
↑ 主要死因別にみた死亡率の年次推移(人口10万対)(戦後限定)(-2012年)

最新のデータ(2013年、月報年計)によれば、全体ではトップ、男性では45歳から89歳、女性では35歳から84歳において、がんを死因とする人が最上位の比率にある。

↑ 2013年人口動態統計月報年計における死因順位(人口10万人対、総数)
↑ 2013年人口動態統計月報年計における死因順位(人口10万人対、総数)

がんへの最良の対応策は、健康的な身体作り、定期的な検診による早期発見・早期対応にある。がん検診の詳細は「国立がん研究センターの「がん検診について」」などを参考にしてほしいが、早期発見によるリスク軽減効果に関する啓蒙が進んでいることもあり、検診率(受診率)は少しずつではあるが上昇傾向にある。

次に示すのは直近2013年における受診率。男性は肺がん検診がもっとも受診率が高く1/3超、女性は乳がん検診がもっとも高く4割を超えている。女性は子宮がん検診も4割超え。女性特有の2検診が「過去2年間の回答」なのは、両検診が2年おきに行うことを基本としているため。

↑ 性別にみたがん検診を受診した者の割合(2013年)(過去1年間、但し子宮がんと乳がんは過去2年間)
↑ 性別にみたがん検診を受診した者の割合(2013年)(過去1年間、但し子宮がんと乳がんは過去2年間)

各部位別の検診率の違いを見ると、男性は肺がん・胃がんが高めで大腸がんは低め、女性は子宮がん・乳がん・肺がんは高めで胃がん・大腸がんは低めと出ている。一方、直近2013年の詳細データで確認すると、がんの場合男性は「肺」「胃」「大腸」、女性は「大腸」「肺」「胃」の順に死因部位率が高い(2013年時点)。

男女とも高めの死因率の肺がんには強い関心を抱いて検診を行い、また女性は女性特有の子宮がん・乳がんが気になり検診率が高いとの動きが確認できる。もっとも女性では一番死因部位率の高い大腸がんに関して受診率が低めなのが気になるところではある。逆に受診率が低いからこそ、発見が遅れて死因率が上になっているのかもしれない。

続いて示すのは3回分の「国民生活基礎調査」大調査における各部位のがん検診受診率の推移。1997年の女性特有のがん検診は「過去1年間」でのみ問い合わせているので、値が少々低いものとなってしまっている。当然男性は子宮がん・乳がんに関する検診は無い。

↑ 性別にみたがん検診を受診した者の割合(男性)(過去1年間、但し子宮がんと乳がんは過去2年間)
↑ 性別にみたがん検診を受診した者の割合(男性)(過去1年間、但し子宮がんと乳がんは過去2年間)
↑ 性別にみたがん検診を受診した者の割合(女性)(過去1年間、但し2010年と2013年の子宮がんと乳がんは過去2年間)
↑ 性別にみたがん検診を受診した者の割合(女性)(過去1年間、但し2010年と2013年の子宮がんと乳がんは過去2年間)
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2010年から2013年にかけて大きく検診率の向上が見られるが、これは各自治体における受診勧奨事業などの効果が表れていると考えれば道理は通る。ただしそれでも検診率は半数に届かず、半分以上ががん検診を直近で受けていない状態にある。

「がん検診」は100%がんを見つけられる万能なものではない。しかし、がんによるリスクを減らせるもっとも良い手立てであることにも違いない。がんは目に見えるものでは無く、特定の病状を有するものでは無い。仮にがんによる病状を覚えても、その病状を他の病気によるものと思い違いしてしまうことも多い。是非とも積極的に、がん検診を受診することをお勧めしたい。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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