商標権と著作権の関係について世間でよく見られる誤解
「新バスケット「B.LEAGUE」にホリエモンが仰天公約!」という記事に以下の記載がありました。
五輪組織委もベルギー劇場側が著作権侵害訴訟を提起した後に「商標調査を行なっていたから大丈夫」を連発していました。どうやら商標権と著作権の関係についての理解が全然浸透していないようです(顧問弁護士の先生ちゃんと教えてあげてください)。
この機会に基本的ポイントをおさらいしておきましょう。商標権と著作権はどちらも知的財産権(無体財産権)のカテゴリーに属する権利です。現実世界に存在する物理的な物ではなく、情報そのものに関連する権利です。
商標権は、商品やサービスの名前やマークを保護する権利です。特許庁に出願(メディア等でよく「申請」という言葉が使われますが「出願」が正しいです)して審査を受けて登録査定を受けることで権利が生まれます。
著作権は、(広義の)芸術作品を保護する権利です。出願等の手続なしに自動的に権利が生まれます。
このように商標権と著作権は互いに独立した別の権利ですが、同じもの(たとえば、エンブレム)が、商標権と著作権の両方で守られることはあり得ます。つまり、商品のマークとしても、アーティストの作品としても守られるということです。
では、商標権と著作権が衝突するとどうなるのでしょうか?
重要なポイントとして、日本では著作権侵害を直接的理由として商標が登録できないということはありません。特許庁の審査で世界中のあらゆる著作物をチェックできるわけではないことからやむを得ません。つまり、商標登録できたからと言って著作権侵害がないことが保証されるわけではないのです。
では、商標権と著作権が衝突した時はどうなるのでしょうか?商標法では以下のように規定されています(読みやすくするために重要でない部分を...で略しました)。
つまり、商標権と著作権が衝突した時には商標は登録はされているものの実際には使えないという状況になります(もちろん、著作権者の許諾を受ければ別です)。
なお、審査段階で明らかな著作権侵害が認められる場合(たとえば、ミッキーマウスの絵を含む商標をディズニー関係者以外の人が出願したような場合)には、公序良俗違反(商標法4条1項7号)により登録されないケースもあり得ますが、例外的です。
ということで、著作権侵害が疑われている時に、「商標調査をしたから大丈夫」、あるいは、「商標登録できているから大丈夫」と答えるのはまったく意味がないということになります。