レノファ山口:熱闘復活。岐阜に4得点快勝! オナイウは今季20点目
J2レノファ山口FCは10月7日、下関市営下関陸上競技場(山口県下関市)でFC岐阜と対戦し、オナイウ阿道などのゴールで4点を挙げて快勝した。2連勝となり勝ち点を51に伸長。暫定10位に浮上した。
明治安田生命J2リーグ第36節◇山口4-1岐阜【得点者】山口=オウンゴール(前半34分)、高木大輔(同39分)、オナイウ阿道(後半26分)、岸田和人(同27分) 岐阜=山岸祐也(後半22分)【入場者数】3936人【会場】下関市営下関陸上競技場
思わぬ形での先制
レノファは前節の横浜FC戦でシステムを3-6-1に変更。3バックの中心で楠本卓海を初出場させ、右には「守備になれば必ずプレッシャーを掛けるし、危機察知能力もある。ボールを持てば攻撃の起点になれる。そういうところが今年、最も成長した部分。右サイドであれば安心して任せられる」と霜田正浩監督が評価する前貴之を置いた。
左には日本語を覚えている最中のヘナンが入ったがディフェンスラインの連係は崩れず、横浜のFWの動きを抑えて試合を優位に展開。攻撃でも3得点が入り、レノファはリーグ戦15試合ぶりの勝利を飾った。
3バックゆえに守備で重くなる時間帯もあったが、試合を通してみれば攻撃に進み出す機会も多く手応えのあったシステム変更。戦い方の全く異なる岐阜を迎えた今節も、レノファは同じフォーメーションを継続した。スタメンの顔ぶれもそのままで、今年2回目の開催となった下関市営下関陸上競技場でキックオフを迎えた。
試合会場は前日に過ぎ去った台風の影響が残り、風はやや強め。ピッチコンディションは8月の育成マッチデー開催時は固めだったが、大幅に改善していた。しかし維新みらいふスタジアムに比べればイレギュラーバウンドしやすく、ボールの動かし方には慎重さも求められた。
主導権を握ったのはレノファで、早い時間帯からボールを保持し、狙いとした逆サイドへも展開。前半10分までにオナイウ阿道や大崎淳矢が積極的にシュートを放つなど、攻撃をシュートやCKの獲得で終わらせ、押し込んだ状態で試合を進める。
前半は同24分に飲水タイムが入る蒸し暑さとなったものの、ハードワークを続けたレノファに立て続けにゴールが生まれる。
同34分、岐阜のDFがGKにグラウンダーのバックパスを送ると、それがゴール前でイレギュラーにバウンド。不意を突かれたGKビクトルの脇を抜けてゴールに入り、思わぬ形でレノファが先制する。その6分後には裏に抜け出した瀬川和樹のクロスに、高木大輔が合わせてリードを拡大する。「自分の得点に関しては9割、セグくん(瀬川)のパスで決まった。セグくんに感謝したい。勝ちたい気持ちが強ければ強いほど、得点につながると思う」(高木)。両ウイングバックが縦へのスプリントと両翼を横断するパスを組み合わせてゴールにつなげ、前半を2-0で折り返した。
流れを引き戻したFWのゴール
後半は岐阜が先に交代カードを切り、スタートから長沼洋一を投入。岐阜の持ち味のポゼッションでレノファを揺さぶった。レノファにとっては嫌な時間帯にはなったが、プレッシャーを掛けて相手のシュートをペナルティーエリア外からに抑制する。しかし後半22分、ワンタッチプレーの連続からゴール至近で山岸祐也にヘディングシュートを決められてしまう。
これでゲームは1点差に。ただその後の試合展開は対照的だった。
レノファは失点したことで再びスイッチが入り、比重をもう一度前線に置くようになる。「失点のことは話さず、次にどうしようという前向きな声を掛け合った」(楠本)。失点直前からレノファは前線を組み替えてオナイウと岸田和人の2トップとし、明確に3点目を取りに行く形にしていたが、失点はその意識をいっそう高めるものとなった。
一方で岐阜は「2-1にしたくらいまでは悪くなかったが、そのあとでゲームを投げているような選手が何人かいたという気がする。そのあたりをやり直していかないといけない」(大木武監督)と気持ちが切れてしまう。もちろんメンタル面だけでなく、ポジションを流動的に入れ替えながらサイドアタックするレノファを物理的にもつかまえられなくなり、それが出足の鈍さに直結。以降のゲームは岐阜のハーフエンドで進むことになる。
同26分、三幸秀稔のロングフィードを受けた高木が間髪を入れずにクロス。「大輔が僕とカズくん(岸田)が触れられるところに出してくれたので、落ち着いてゴールに転がすだけだった」とボール精度をたたえたオナイウがゴールに振り抜き、レノファが3点目の奪取に成功する。オナイウにとってはこれが今季20点目で、大前元紀(大宮)を追撃するゴールとなった。
1分後には高い位置に上がった前から、再び右サイドの高木にスルーパスを送る。高木はこの場面ではグラウンダーのボールを最終ラインの背後に出し、今度は抜け出した岸田が合わせた。「セカンドでうまく取れて、(パスを)大輔に。逆が空くというウィークをうまく突けた」(前)と狙い通りにボールを動かしてマークをはがし、「アウェーの勝ちの流れを無駄にしないようにしたい」と気持ちが入っていた岸田がゴール。レノファは試合を決定づける4点目を手中に収めた。
その後も危ないシーンをほとんど招かず、レノファが4-1で快勝。ホーム戦としては6月9日のファジアーノ岡山戦以来約4カ月ぶりの勝利を飾った。複数得点差での勝利は3月11日の栃木SC戦以来。
3バックでも攻撃力を落とさず
ロースコアの得点が続いていたレノファが前節は3得点、今節は4得点と復活を感じさせる躍動となった。ウイングバックが下がってきて5バックになりやすい3バックを採用したにもかかわらず、ゴールに向かう攻撃が戻ってきた。
システムの見た目は3-6-1や3-5-2でも、狙うサッカーは積み上げてきた4-3-3の変形版と捉え、霜田監督は練習で「状況的に5枚になることはあるが、後ろを重くするために3バックにしたのではない。守備的に戦うのではないという話をした」と確認。同サイドでゲームを作りつつ、常に逆サイドやディフェンスラインの背後を見るという基本姿勢を変えなかった。ゴールシーンこそ高木のアシストが目立ったものの、前や高木から左ウイングバックの瀬川への展開も多く見られた。
3バックの一角に前を置いた点や、ベンチメンバーのDF枚数を減らした点からも、常に攻めに出るという意欲は感じ取れる。
特筆したいのは冒頭で触れた前で、試合途中からはボランチでもプレーしてゴールの起点になった。前節はジュリーニョ、今節は佐藤健太郎がアクシデントで交代したが、前を中心に彼らの動きをカバー。「相手にプレッシャーを掛けて蹴らせ、セカンドボールを拾うまでプレスバックする。3バックを出させないように、僕ら(ボランチ)がスライドして遅らせる。そういうところは意識した」とボランチにポジションを変えても冷静にプレーし、主導権掌握に貢献。最終ラインのストレスを軽減して、前節でデビューしたばかりの楠本の動きもサポートした。
レノファは勝ち点を51に伸ばし、プレーオフ圏内との勝ち点差は9に縮小。このあともホーム戦が続き、10月13日に4位アビスパ福岡と、同17日には3位FC町田ゼルビアといずれも維新みらいふスタジアム(山口市)で対戦する。上位勢とのゲームとなり、可能性を残す昇格圏進出に向けてはここで勝ち点をつかむことが重要になる。
台風のために延期となった試合を含めリーグ戦は残り7戦。このうちホームゲームが4試合と多く、アウェー戦も3試合のうちの2戦は中四国勢との対戦だ。「久しぶりにホームで勝てて、それもうちらしいサッカーをやれて結果を出せた。今年の残り試合はホームでたくさんできるので、全部今日みたいなゲームをやりたい」(霜田監督)。
再び無敗街道を歩み出したレノファ。3バックにして復活の攻撃的なサッカーで、もう一度、上位へと挑戦していく。
※大崎の「崎」は異体字(大の部分が立)が登録名