アストロズ青木の登板は、彼が主力とは見做されていないことの証明でもあった
アストロズの青木宣親が現地時間6月30日のヤンキース戦でメジャー初登板を果たした。1回3失点ながら、今季メジャー最大のセンセーションであるアーロン・ジャッジを打ち取ったこともあり、日本の媒体では例によって「絶讃」のオンパレード状態にある。
確かに、野手でありながら球界最強のスラッガーを打ち取ったことは素晴らしい。しかし、この日の青木のパフォーマンスの裏には、否定しようがない厳しい現実も潜んでいる。
そもそも、メジャーでは大差の試合において、救援投手の負担を軽減するために野手を登板させることは珍しくない。しかし、その場合にもゴールデン・ルールがある。それは、主力の野手には原則としてその役回りを負わせない、ということだ。野手に登板させることは、故障のリスクを背負わせることでもある。万が一にも、中軸打者がどこかを痛めて故障者リスト入りすることがあってはならない。したがって、その役は控え野手が務めるのが一般的だ。日本のファンには、2015年の最終戦でイチローが投げたことをご記憶だろう。「イチローのようなレジェンドだって、登板しているではないか」という声もあるだろう。しかし、あの試合はシーズン最終戦だった。ここで故障されても、チームとしては長いオフの間に完治してくれれば良い、というマージンもある。
今季、アストロズは6月30日時点で全日程のちょうど半分の81試合を消化していたが、青木がスタメン出場したのは47試合で約6割弱だ。そして、その47試合中、ゲームセットまで出場し続けたのはその半分の24試合でしかない。要するに、青木は貴重なバイ・プレーヤーではあるが、決してレギュラーとは見做されていない。その事実がベースにあったこそ、AJ・ヒンチ監督は青木に登板させたのだ。
今回の青木の登板は、彼のチーム内の位置付けを期せずして証明してしまった。そのことに触れず例によって日本人絶讃に終始した媒体は、肝心のところはわかっていないか、不都合な真実から目を背けているとも言えるだろう。