このままでは「岸田降ろし」すらできなくなる? 自民党最大の危機が忍び寄る
内閣支持率21.3%の衝撃
もはや“危険水域”(30%以下)どころではない。時事通信社が11月16日に公表した内閣支持率は21.3%と、政権発足以来の最低記録を更新した。6月の調査では35.1%だったが、その3分の2未満まで落ち込んだことになる。
驚愕の声とともに同調査の数字が永田町に出回ったのは、その前日である15日午後のこと。ある自民党関係者は、「ここまで来たら、(岸田文雄首相は)衆院を解散すらさせてもらえないんじゃないか」とため息をついた。
なお岸田首相は11月9日、官邸で記者団に対して「まずは経済対策、先送りできない課題にひとつひとつに一意専心、取り組んでいく。それ以外のことは考えていない」と述べ、それまで囁かれていた年内解散説を否定したばかり。そうした岸田首相の姿勢に対して、今回の内閣支持率の数字は嘲笑っているかのように見えてしまう。
内閣支持率がここまで下落した原因のひとつは、11月2日に発表された総合経済対策で岸田首相が華々しく「国民への還元」を打ち出したものの、減税の財源がないことを鈴木俊一財務大臣が暴露し、岸田首相の従兄の宮澤洋一自民党税制調査会長が「(所得減税は)当然1年限り」と冷や水を浴びせたことだろう。閣内どころか党内においても、岸田首相のリーダーシップが欠如していることを国民が痛感し、拒否反応を示したわけだ。
さらに女性問題で山田太郎前文科大臣政務官、江東区長選を巡る公職選挙法違反疑惑で柿沢未途前法務副大臣が続いて辞任した上、神田憲次前財務副大臣に至っては、過去に税金の滞納で4度も差し押さえられたことが発覚。神田氏が税理士資格を持つ上、国の財政を担う財務省のナンバー2である副大臣であったことで、いっそう激しく批判された。これらが内閣支持率に大きく影響したことは否めない。
支持率低下は止まらず
それらばかりではない。“不祥事”の発覚はなお続く。11月16日発売の週刊文春は、自見英子万博担当大臣のパワハラ問題、三宅伸吾防衛大臣政務官のセクハラ疑惑を報じた。自見氏が厚労大臣政務官時代、当時の秘書官に対して過度に厳しい仕事上の要求を行い、秘書官に欝状態を発症させて辞職に追い込んだというものだ。
また三宅氏のケースは10年前に事務所の秘書を務めた女性が三宅氏からセクハラを受けたという告発だが、自見氏の事務所も三宅氏もこれらの事実を否定。三宅氏は15日夕方、コメントをもらおうと防衛省に集まった記者団に「文春に抗議文を出す」と述べて立ち去った。
そして11月16日午後、柿沢氏の地元事務所などに東京地検特捜部が家宅捜索に入ったことが報じられた。柿沢氏が選挙で支援した木村弥生前江東区長はその前日に辞任したばかりで、事件はさらに拡大する様子だ。
これらは次回の世論調査に反映されることになるだろうが、そうなると内閣支持率はさらに下落し、2割を切りかねない。しかも問題はそれに止まらない。最近の地方選で、自民党の敗北が目立っているのだ。
自民の敗北が相次ぐ意味
9月の立川市長選、11月の立川市選挙区の都議補選と青梅市長選で、自民党が推薦した候補が敗北した。青梅市長選では公明党も自民党推薦の現職を応援した。10月に行われた宮城県議選で自民党は4議席減らし、11月の福島県議選では4名の自民党公認候補が落選した。
もっとも東京では、10増10減によって新設された衆院東京28区を巡って自公が対立。5月25日には公明党の石井啓一幹事長が「自公の信頼関係は地に落ちた」と言うまでに至った。
9月に岸田首相と山口那津男公明党代表の“手打ち”が行われ、関係は修復したように見えているが、実際の亀裂はかなり深いようだ。それでも、「うちは従前と同様に、選挙には全力を尽くしている」と公明党関係者は断言し、「票を減らしたのは、むしろ自民党ではないか」と皮肉った。
確かにその兆候は、10月22日に行われた衆院長崎4区補選でも伺える。西日本新聞が10月23日に報じたところによると、自民党公認の金子容三氏は告示日に先立つ10月6日、元長崎県知事で衆参議員をも務めた父・原二郎氏とともに福岡市内の創価学会の重鎮を訪ね、公明党からの推薦をもらう代わりに次期衆院選で1万票を超える比例票を公明党に入れることを約束したという。そして公明党は9日に金子氏の推薦を決定し、告示日の10日に推薦状を渡した。結果的に金子氏は5万3915票を獲得し、立憲民主党の末次精一氏に“7016票差”で当選した。
実際に今回の時事通信の調査による自民党の政党支持率は19.1%で、2012年12月に政権復帰して以来の最低記録を更新。その数字は内閣支持率より低いのだ。
その傾向がこれからも続いていくのなら、自民党は岸田首相を降ろす力すらなくなってしまうかもしれない。政権と与野党が三方竦みのまま、日本の政治は沈むのか。