レノファ山口:成長が見えた2連勝! 小野瀬が決勝点。オナイウは今季6点目
J2レノファ山口FCは4月7日、山口市の維新みらいふスタジアム(維新百年記念公園陸上競技場)で大宮アルディージャと対戦し、オナイウ阿道、小野瀬康介のゴールで2-1で競り勝った。2連勝で上位をキープ。今季6点目を決めたオナイウはJ2得点ランキングで暫定トップに立っている。
明治安田生命J2リーグ第8節◇山口2-1大宮【得点者】山口=オナイウ阿道(前半2分)、小野瀬康介(後半39分) 大宮=マテウス(前半25分)【入場者数】5353人【会場】維新みらいふスタジアム
オナイウが先制点。開始直後のチャンス生かす
大宮はロビン・シモヴィッチが先発から外れ、マルセロ・トスカーノがスタメンに名を連ねた。シモヴィッチ対策を練ってきたレノファにとって拍子抜けの感は否めないが、霜田正浩監督は「シモヴィッチのような特別な選手が出なかったことをプラスにするには、結果を出すしかない」と気持ちを入れ直し、前線からのディフェンスとボールをつないでいくベーシックな攻撃を選手たちに促した。
試合は早い時間から動き、前半2分、瀬川和樹が「DFとGKの間にボールを入れる」という狙いで左サイドからクロスを供給。山下敬大や相手DFなどが競ったこぼれ球をオナイウ阿道がしずめ、レノファが先制する。「立ち上がりからみんなで前に行こうという意識があった。その中で取れたゴールだった」と話すオナイウはこれが今シーズン6ゴール目となった。
ただ、「1点を取れて勢いが増したのは良かったが、攻め急いでクオリティーが下がった」(霜田正浩監督)ことなどから中盤でのボールロストが増えたほか、両サイドで仕掛ける小野瀬康介と高木大輔の動きが大宮守備陣に制限され、攻めあぐねてしまう。大宮に押し込まれる時間が長くなり、シュートレンジまで持ち込まれるシーンも頻発。レノファはクロスをカットするなどして対応するが、それによって大宮に多くのセットプレーのチャンスを与えてしまう。大前元紀のプレースキックに対して何度かは跳ね返していたが、6本目のコーナーキックをマテウスに合わせられて失点。前半25分に1-1のタイスコアに戻った。
前半はこのまま1-1で終了。レノファが対応しなければならないポイントは明らかで、動きを縦横からフタをされた両ウイングを活性化させると同時に、ボール回しのリズムを回復させなければならなかった。特に後者は攻め急いで無理なタイミングでパスを出したり、逆に球離れが悪くなって大宮のハードディフェンスを正面で食らったりと、本来のポゼッションとはほど遠いものとなっていた。霜田監督はハーフタイムで「奪ったあと、落ち着いてボールを回そう」と指示し、勝ち越しを狙って選手たちを後半のピッチに送り出した。
小野瀬が鮮やかな一撃。勝ち越しに成功
修正が生きた後半は小野瀬と高木への供給が増えたほか、前貴之が小野瀬と三幸秀稔の間でボールを回収し、テンポ良くパスを配った。もっとも大宮に与えるセットプレーも続き、前半に比べて優勢とはいえレノファが流れを引き込んだとは言い切れなかった。
そうした中、後半21分にマテウスが2枚目のイエローカードで退場となり、レノファが数的優位に立つ。残りは25分ほど。人数ギャップができたことでお互いの目的ははっきりし、レノファは「ホーム戦で一人多くなったので、引き分けのままでは負けと同じ」(霜田監督)と攻勢を強め、大宮はリスクは背負わずブロックを築いてカウンターのタイミングを伺うようになる。
必然的にレノファのボール保持率が上がり、三幸のパスに抜け出した山下敬大がシュートを狙ったり、小野瀬のクロスに高木が合わせたりと、ゴールにあと一歩まで迫る。大宮のマルセロ・トスカーノにクロスバー直撃のミドルシュートを浴びるピンチもあったが、総じてレノファが押し込んだ状態でゲームを進め、ブロックの隙を突こうと揺さぶっていく。
試合を決したのは同39分だった。前、三幸と渡されたボールをペナルティーエリアの右端部で小野瀬が受け、巧みに切り返して相手DFをはがすと、クロスではなくシュートを選択。利き足とは異なる左足で放ったボールは、弧を描く鮮やかな弾道でゴール左奥へと吸い込まれた。「後半はフリーになる場面が増えた。得点に絡むプレーを続けて、結果を残したい」と小野瀬。これが決勝点となり、レノファは2連勝。ホーム戦では3月4日以来、一カ月ぶりの勝利となった。
手応え十分。ハードな4月戦線を好発進
シモヴィッチ不在とはいえ、個の力があり、充実した戦力を持っている大宮に勝利をおさめた。現状の順位差だけを見れば順当な結果なのかもしれないが、自信になる白星と言えるだろう。しかしながら、やはりJ1を経験してきたチームとの対戦は一筋縄ではいかず、セットプレーを含めた攻撃力に苦しめられ、守備のブロックに対しても崩すのには時間が掛かった。「まだ物足りない」。準備してきた戦法を出せたかと問われた霜田監督は、首を縦には振らなかった。「やってきたことをどのくらい出せて通用するか。それはこういうクラブと対戦するときに、勝ち負けと同じくらい大事な要素。まだまだ成長しなければならない」--。
それでも手応えといえるシーンはいくつもあった。例えばセットプレー。大宮にコーナーキックだけでも11本を与えていたが、ペナルティーエリア内での守備意識が高く、失点シーン以外は確実に跳ね返した。昨シーズンはセットプレーで崩れるケースが多かっただけに、ゴールを1本許したとはいえ、成長した点と胸を張れよう。
センターバックの渡辺広大は「謙虚でいないといけないが、自信は持っていいのかなと思う。セットプレーは気持ちで変わる。去年はやられすぎていて、そういう(やられそうな)雰囲気があったし、自分のところに来るなと思うと来てしまう」と言い、「練習でも厳しくでき、(試合で)集中できている」とメンタル面からも改善が進んでいるとした。
ハーフタイムでの戦術修正が効いたのも大きなプラス点だ。前半はシステムギャップが決してポジティブに働かず、中盤からFWにかけての選手たちが網に掛かったように自由を失っていた。15分の短いインターバルでボールの動かし方を見直し、人の動き方にも手を加えた。これが勝ち越しの一因になったわけだが、コーチングスタッフのゲームの読みが冴えていたことに加え、選手同士が主体的に声を掛け合って意識を共有したことも、修正の浸透に役立った。「試合中も、練習の中でも常にコミュニケーションを取れているのが得点につながっている」とオナイウ。コミュニケーションに根ざした修正力もレノファの動力源になっている。
4月は強豪との対戦が続き、成長がどこまで進んでいるかが見えてくる。良さを伸ばし、課題を修正するには、最良の時期と言えるだろう。今後は4月14日にレベルファイブスタジアムでアビスパ福岡と対戦し、同22日には町田市立陸上競技場でFC町田ゼルビアとの上位対決に臨む。次のホーム戦は4月28日で、天皇杯で対戦したことがあるアルビレックス新潟を維新みらいふスタジアムに迎える。
群雄割拠のリーグを先頭集団で駆け抜けるレノファ。真価が問われる4月戦線も自ら巻き起こす風に乗って、上位を突き進んでみせる。