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英クリスマス商戦が記録的繁盛 ―毎秒タブレットを売った百貨店も

小林恭子ジャーナリスト
英百貨店「ジョン・ルイス」のクリスマスショッピング用サイト

今年も残すところ、数日となった。英国はクリスマスから新年明けまでの休暇シーズンに入った。いざ仕事でメールを送っても「来年までは戻りません」などの返事が返ってくるようになった。

年間で最高のショッピング・シーズンとなるのもこの季節。特にネットショッピングの人気が高い。この期間にどれだけモノが売れるかで景気の動向が推測できるようになってきた。

ー「ブラック・フライデー」

11月最後の金曜日となった28日(通称「ブラック・フライデー」)は、英国ではクリスマス商戦の開始の日となった。

「ブラック」には「小売業者が儲かり、黒字になる」という意味もあるが、もともとは米国の感謝祭(11月の第4木曜日)の翌日の金曜日を指す。今ではクリスマスに向けて、米英の国民が大きな買い物をする時期の到来を指すようになった。

この日、中流階級向け百貨店「ジョン・ルイス」はタブレット1台を毎秒ごとに、テレビ1台を毎分ごとに売りさばいた。11月の最後の週は150年前の創業以来、最高額の売上げを記録したという。真夜中から始まったセールの開始にネット・ショッピングの客が殺到し、衣類、ハンドバック、電子機器の注文を行った。オンラインショッピングの売上げは前年の同日と比較して42%増加した。

英国内の各地にある実際の店舗での売上げも好調で、11月29日までの1週間で売り上げは1億7900万ポンド(約333億円)(前年比22%増)に上った。

ブラック・フライデーは英アマゾンにとっても最高の日となった。この日だけで約5万5000個の品物が販売され、64項目の品物については毎秒ごとに売れたという。ジョン・ルイスの場合もそうだが、「毎秒ごとに」という数字が出ると、ショッピングのすさまじさが伝わってくる。ネットショッパーたちが殺到したために一時つながりにくくなったサイトも出てしまったという。

一方、ロンドン、北部マンチェスター、スコットランドのダンディーなどのスーパーの店舗では、買い物客が品物を取り合い、警察が沈静化のために動員される事態にまで発生した。

英国で経済のけん引役は、国内の経済活動の3分の2を占める個人消費。IHSグローバル・インサイト社の小売専門アナリストによれば、高い消費者マインド、低い失業率、低インフレなどの要素が大きな消費熱の背景という。

ークリスマスの過ごし方は?

ショッピング熱の次のピークは24日になる。翌日25日までに家族や友人、親戚へのプレゼントを用意したり、クリスマス・ディナー(定番はロースト・ターキーと「クリスマス・プディング」=非常に味の濃いフルーツケーキに似ている=だ)の準備、そして年末年始の買い置きのために、買って、買って、買いまくる。

25日は自宅で家族と一緒に集まるか、作るのが面倒な人はレストランで高額ディナーを楽しむ。午後3時過ぎには、恒例のエリザベス女王による「クリスマス・メッセージ」(テレビで放映される)を視聴。腹ごしらえに散歩をした後、またさらに食べ続け、クリスマス特番などを見て夜を過ごすーーこれが典型的なパターンだ。

26日は「ボクシング・デー」と呼ばれ、この日も休日になる。27日以降は、年末セールの開始で忙しい。

31日、大晦日のパーティーやディナーで盛り上がり、12時を待つ。なぜかと言うと、時計台ビッグベンの周りに人が集まり、12時までのカウントダウンを行うのだ。12時を打つと、いっせいに花火が打ち上げられる。この模様はテレビで生中継される。非常に美しく、感動するイベントだ。

花火の様子(Visitbigbenのサイトより)
花火の様子(Visitbigbenのサイトより)

そして1月1日。この日は静かに過ごす人が多いようだ。2日ぐらいから、「あのクリスマスや年末の喧騒はなんだったの?」という感じですっかり日常に戻り、仕事が始まることになる。

(週刊「エコノミスト」12月23日号掲載の「ワールドウオッチ」コラム筆者担当分に補足しました。)

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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