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羽生善治九段(49)と藤井聡太七段(17)の挑決三番勝負は実現するか? 竜王戦本戦進出11人決定

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 豊島将之竜王(30歳)への挑戦権を目指す第33期竜王戦決勝トーナメント(本戦)は出場11人の棋士が出揃いました。

 左側の山には1組優勝を果たした羽生善治九段(49歳)の名が大きくそびえています。

 羽生九段は今期本戦においても、やはり挑戦権獲得の本命格としてその名を挙げられるでしょう。

 羽生九段は1989年、19歳の時に初めて竜王位に就きました。以来、通算7期獲得。現在は「永世竜王」の資格を保持しています。

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 羽生九段のタイトル獲得数は通算99期。通算100期目がかかった2018年の竜王戦七番勝負は、広瀬章人八段の挑戦を受け、3勝4敗で竜王位を明け渡すことになりました。以来、竜王戦も含めてタイトル戦登場はありません。

 羽生九段は今年の秋には50歳となります。「19歳竜王」も偉業です。一方でタイトル通算100期とともに「50歳竜王」が実現すれば、こちらもまた大変な偉業と言えそうです。

 本戦出場の最年長者は1組4位の佐藤康光九段(50歳)。現役タイトルホルダーの永瀬拓矢二冠(27)を降しての進出となりました。

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 佐藤九段は竜王位を1期獲得。1993年、94年、95年と、羽生現九段と3期連続で竜王位を争うなど、この棋戦における主役の一人として活躍を続けてきました。本戦進出は今回で18回目となります。

 1組5位の木村一基王位(47歳)は昨年の挑決三番勝負進出者。豊島将之名人・王位(当時)と激闘を繰り広げました。

 竜王戦挑決では惜しくも1勝2敗で敗退。しかし王位戦七番勝負は豊島王位に4勝3敗で勝ち、激熱の「十番勝負」を終えています。

 木村王位はこれから藤井聡太七段(17)を挑戦者に迎え王位戦の防衛戦を戦います。もしかしたら昨年同様、王位戦七番勝負、挑決三番勝負を同じ2人がたたかう可能性もあります。

 5組優勝の梶浦宏孝六段(24歳)は昨年(6組優勝)に引き続いての本戦進出。

 4組優勝の石井健太郎六段(28歳)、6組優勝の高野智史五段(26歳)は初の本戦進出となります。

 高野五段は梶浦六段、石井六段を連破すれば、師匠・木村王位との公式戦初対戦が実現します。

 誰にでも挑戦への道が開かれている竜王戦ですが、5組、6組から本戦に進んで挑戦権を獲得し、七番勝負まで進出した例は過去に一度もありません。

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 また挑決まで進んだ例は1994年(第7期)の行方尚史四段(当時6組優勝)の1度だけです。今期はどうなるでしょうか。

 本戦、右側の山に目を移します。

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 1組2位の佐藤和俊七段(42歳)は1組決勝まで駆け上がって初の本戦進出を決めるという、稀有な記録を作りました。1組1回戦では年間最高勝率を更新する勢いで勝ち続けていた渡辺明三冠(竜王位通算11期)を止め、勢いに乗りました。

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 佐藤七段は四段昇段は25歳。年齢的にアラフォーとなってからNHK杯準優勝、順位戦C級1組昇級などの大きな実績を挙げてきました。棋士では少なくなった振り飛車党の一人として、ファンの声援も集まることでしょう。

 棋士は佐藤姓が多く、和俊七段もその一角です。もし康光九段と挑決三番勝負で相まみえれば、2016年度NHK杯決勝カードの再現となります。

 1組3位の久保利明九段(44歳)もまた、振り飛車党の星と言える存在です。竜王戦本戦は常連で、2010年、11年は2年連続で挑決まで進んでいます。昨年は藤井七段との対戦で歴史的な名局が生まれました。

 久保九段は最近、超早指しのAbemaTVトーナメントでも豊島竜王に勝ち、ファンをうならせました。

 2組優勝は佐々木勇気七段(25歳)。

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 佐々木七段は本戦2回目の出場。2017年7月2日におこなわれた▲佐々木勇気五段-△藤井聡太四段戦(段位はいずれも当時)は社会的な注目を集めました。

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 それ以来となる両者の公式戦対局がつい先日、B級2組1回戦でおこなわれました。

 佐々木七段とほぼ同年代で少し年長の永瀬拓矢二冠、菅井竜也八段、斎藤慎太郎八段、高見泰地七段らはすでにタイトルを獲得しています。その中に佐々木七段の名がつらなっても、なんら不思議ではありません。

 2組2位の丸山忠久九段(49歳)も竜王戦本戦出場の常連で、挑戦は3回。名人2期、棋王1期などの実績を残し、羽生九段、佐藤康光九段らとともに「黄金世代」を形成してきました。

 そして3組優勝は藤井聡太七段(17歳)。将棋界のあらゆる記録を塗り替えつつあるワンダーボーイです。

 3組決勝では師匠の杉本昌隆八段(51歳)に勝って優勝を決めました。

 竜王ランキング戦ではデビュー以来無敗で20連勝というとんでもない記録を継続中で、4期連続ランキング戦優勝は史上初のことです。

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 竜王戦本戦は早くも4回目の出場となりました。棋聖、王位も挑戦を決め、今期竜王戦でも当然挑戦者候補の一人でしょう。

 ちなみに1989年、当時18歳の羽生善治五段が竜王戦本戦を駆け上がった時は、3組優勝からの本戦進出でした。17歳、藤井七段も今期は3組からです。

 さて、多くの人が望んでいると思われるのが、挑決での羽生九段-藤井七段戦です。両者の対戦はすでに現将棋界での「ゴールデンカード」として認識されつつあります。

 羽生-藤井戦が実現する可能性は、かなり高そうにも思われます。一方で、他の本戦進出者もまた、一騎当千のつわもの。誰が勝ち上がっても、なんら不思議ではありません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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