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DL復帰後不調続きのケンリー・ジャンセンが下した命がけの決断

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
チームのために大きな決断を下したケンリー・ジャンセン投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 9日のロッキーズ戦後に宿泊ホテルで不整脈を訴え、そのまま病院に搬送され故障者リスト(DL)入りしていたドジャースの守護神ケンリー・ジャンセン投手。デンバーの病院である程度の検査を受けた後、ロサンゼルスに戻りさらに精密検査を受け、20日になって心臓専門医の許可が出て20日のカージナルス戦から復帰を果たした。

 守護神の離脱でドジャースのリリーフ陣が危機的状態に陥り、前田健太投手をリリーフに配置転換して切り抜けようとしたが、結局離脱中は5連敗を含む3勝6敗と大きく負け越し。熾烈な首位争いが続く中で地区首位タイから3位にまで後退してしまった。ジャンセン投手の復帰はドジャースにとって起死回生になるはずだった。

 しかしその期待を裏切るように、復帰後のジャンセン投手はまったく精彩を欠いている。20、22日のカージナルス戦に同点の場面で登板しそれぞれ決勝本塁打を喫し2試合連続で敗戦投手になると、25日のパドレス戦でも同点本塁打を打たれセーブに失敗。守護神としての仕事をまったく果たせていない。

 そんなジャンセン投手が地元紙の『Orange County Register』紙に、復帰後の不調の理由とともにチームのために“ある”決断を下したことを明らかにしているのだが、それがまさに命を賭したものなのだ。

 ジャンセン投手によると、心臓専門医から復帰の許可が出たものの、シーズン終了まで処方薬を服用することが義務づけられていた。この薬が合わず「まるで夢遊病のような感じで、身体の動きは遅いし、いつも眠気に襲われている」状態に陥っていたという。このままでは自分の投球ができないと判断し、医師に連絡をとり薬の服用を止める決断を下したのだ。

 「このままじゃチームに害を与えるだけだと思った。とにかく薬を遠ざけないといけないと感じた。薬を止めても僕の心臓が止まらないのであれば、このままじゃ投げられないと医師に伝えた」

 実はジャンセン投手は以前から心臓に問題を抱えている。2011年にも不整脈のためDL入りし約1ヶ月間戦線離脱しているし、さらに翌12年にも不整脈を起こし戦線離脱し、シーズン終了後に不整脈を改善する手術を受けている。そして今回も精密検査を受けた結果、シーズンオフに新たな手術を受けることが決まっている状況だった。

 あくまで医師からシーズン中の服用を勧められており、薬を止めるのは簡単な決断ではないはずだ。ただ医師からはすぐに意見を伴うものではないとの説明を受けており、今後もスマホのアプリを利用して医師に随時心電図を送ることで対応していくことになったようだ。

 過去2年間ドジャースがポストシーズンで好成績を残せたのは、今やMLB屈指のクローザーと認められているジャンセン投手の大車輪の活躍があったからこそだ。もちろんダイヤモンドバックス、ロッキーズとの熾烈な首位争いを抜け出し地区6連覇を飾るには、ジャンセン投手が本来の投球を取り戻さなければ不可能といっていいだろう。

 28日のレンジャーズ戦から薬を服用せずに登板に臨むジャンセン投手。まさに命を懸けた投球でドジャースの救世主になれるだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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