独立後初のワンマン・ライブを成功させた、ふくい舞。
スケールの大きな優しき歌声の魅力と、日本語詞ながらも洋楽テイストを感じさせる節回しのオリジナリティ
2月13日(木)、ふくい舞のバレンタイン・イヴ・ライブ『Be Mai Valentine』が目黒Blues Alley Japanにて行われた。会場は、久しぶりのワンマン公演となったふくい舞の歌声を待ちわびたオーディエンスで満員となり、大盛況のなか全16曲を熱唱した。
ふくい舞は、2008年「アイのうた」(TBS系ドラマ『恋空』主題歌)のヒットによって、『第50回日本レコード大賞新人賞』を受賞された京都出身の女性シンガーだ。さらに、世界的大人気ゲーム『FINAL FANTASY XIII-2』の主題歌「約束の場所」では、作曲に元Superflyのメンバーとして知られる多保孝一を迎え、メロディアスなナンバーを歌唱していたことでも知られている。
彼女は、昨年末に所属レコード会社と事務所から独立した。
昨今、同じくメジャーレーベルを卒業し、独立した女性シンガーでRie fuがいるように、音楽業界がCDをセールスすることで成り立っていたビジネス・モデルが揺らぎつつあることもあってか、助走期間を経て走り出したアーティストが独立する事例が増えている。もちろん所属していた会社とは円満な関係のままだ。ここにスキャンダラスな事件性は一切無いことが、いまの時代性をあらわしている。ふくい舞も同じく、会場には当時のスタッフも多く集まり、本人は喜びの涙を浮かべながら自身の未来へ向かって大きな一歩を歩みだした。
アラニス・モリセットやネリー・ファータド、インディア・アリーを彷彿とさせる歌声を聴かせてくれる彼女。ジャンルであらわすならば、有機的なオーガニックソウル風な一面もありつつ、今様のR&Bを和洋折衷なボーカル&生バンドスタイルにて届けてくれる。MCでついつい自身の想いを込めすぎて涙してしまうなど感受性が豊かすぎる一面があるが、学校生活で悩んでいたファンに向けて書いたという「You are not alone」や、震災をテーマに書かれたという「あなたの恋文」では、会場中を涙に誘っていたことが忘れられない。音楽には人の心を動かすパワーがあるのだ。
注目すべきは、スケールの大きな優しき歌声の魅力と、日本語詞ながらも洋楽テイストを感じさせる節回しのオリジナリティだろう。ライブでも盛り上がっていた初期チューン「Can Can」のような、自身の詞曲で、リアルな心情を描いたポジティヴィティ溢れるロックチューンは、あらためて今後のふくい舞の志向性をあらわしているナンバーのように感じたのだ。
さらに、女性シンガーにとって声の質感こそが“命”だ。オープニング「I'm here with you」や、NYでの一人旅の際に作られたという「Meant To Be」、ラストチューンの桜ソング「いくたびの櫻」。そして、アンコールで聴けた「My Song For You」での寄り添うような歌声は魅力的だった。まだまだ可能性を感じさせる、ふくい舞のセカンドシーズンに注目していきたい。
2014年2月13日(木)『Be Mai Valentine』@目黒Blues Alley Japan
<セットリスト>
I'm here with you
ゴーイングマイウェイ
can can
約束の場所
Meant To Be
You are not alone
アイのうた
The Sound
やさしい人になりたい
Plastic Girls
Lucky
あなたへの恋文
Yeah Yeah Yeah
Peace Friend
いくたびの櫻
My Song For You