“投手”大谷翔平を援護できるのは“打者”大谷翔平だけ?!エンジェルスが抱える3つの悩み
【打線の援護なく今季初黒星を喫した大谷選手】
エンジェルスの大谷翔平選手が、5月28日のアスレチックス戦で今シーズン7度目の登板に臨み、7回途中まで3安打3失点の好投を演じながら、打線の援護を受けられず初黒星を喫した。
試合後ジョー・マドン監督が「素晴らしかった。チームに勝つチャンスを与えてくれる投球だった」と絶賛しているとおり、敗戦投手になったものの投球自体は及第点以上の内容だった。
大谷選手が6イニング以上投げたのは、5月11日のアストロズ戦に続く今シーズン2度目のことだが、前回も7回4安打1失点の好投を演じながら、勝利投手になれていない。
主砲のマイク・トラウト選手が離脱中とはいえ、ここまでのエンジェルスのチーム打率は.247でMLB6位にランク。にもかかわらず、ここまで1勝止まりの大谷選手を見る限り、なかなか打線の援護に恵まれていないように見える。
【DH解除時の打線援護は通常時の3倍】
ただトラウト選手を欠いた現在の打線を牽引する存在と言えるのが、誰あろう大谷選手自身だ。そこでDH解除で自ら打席に立った試合と、投手に専念した試合で、降板時点でのチーム得点を比較してみると、予想通りの事実が明らかになった。
まずDH解除で臨んだ登板は4試合あり、降板時点でのチームの総得点は12点だった。その中に大谷選手の3打点も含まれている。また4試合のうち大谷選手が打点無しに終わっている2試合だけを見ると、チーム得点は2点に止まっている。
一方、投手に専念した登板は3試合あり、これらの試合で大谷選手が降板した時点でのチーム総得点はわずか3点しかなかった。これではいくら好投しても、なかなか勝利に結びつけることは困難だ。
つまりDH解除で臨んだ試合の平均得点は3点で、投手専念で臨んだ試合のそれは1点と、明らかな差がある。やはり“投手”大谷選手を援護できるのは、“打者”大谷選手だと言うことになる。
【登板翌日の打撃成績がDH解除と投手専念で大差】
だからと言って、今後も大谷選手をDH解除で登板させることを優先させた方が得策だと単純に言い切れない部分がある。それを裏づける、ちょっと気になるデータが存在するからだ。
つい最近メディアから、今シーズンの大谷選手は登板翌日の試合で打撃不振に陥っていると報じられていたが、これは決して正しいものではない。実はDH解除の試合と投手専念の試合で、まったく違った打撃成績を残している。
DH解除で臨んだ試合の翌日の打撃成績は11打数無安打であるのに対し、投手専念で臨んだ試合翌日は12打数5安打5打点2本塁打と、反対に打ちまくっているのだ。
大谷選手自身はDH解除の登板について「多少走塁に負担がかかる程度で、疲労度はあまり変わらない」と話しているが、翌日の打撃成績はDH解除と投手専念でこれほどの差が生じている。手放しでDH解除を続けさせるのは、なかなか簡単ではないのだ。
【先発陣最強の防御率ながら中5日登板は2回だけ】
さらに現在のエンジェルスが下位に低迷している主要因は、投手陣の不振だ。現時点でのチーム防御率は5.13でMLB最下位。さらに先発陣だけの防御率を見ると、5.33まで下がってしまう。
そんな先発陣の中で孤軍奮闘の活躍をしているのが、他ならない大谷選手だ。規定投球回数に達していないためランク外だとはいえ、ここまでの防御率2.72は、MLB21位にランクする好成績だ。
本来なら投手陣を立て直すためにも、大谷選手を中心にローテーションを回したいところだが、二刀流起用の負担もあり、ここまでローテーション通り中5日で投げられたのは2回しかない。後は右手中指のマメの影響や疲労を考慮し、登板日がずらされている。
投打ともにチーム内での大谷選手の存在感が大き過ぎるからこそ、チームが抱える深刻な悩みと言える。