2012年の極私的ジャズ重大ニュース解説 怒涛の連続3アップ その1
ごきげんいかがですか? ボクの名前は富澤えいち。音楽ライター、ジャズ評論家という肩書きを名刺に刷って(つまりなにかの資格を取得しているというのではなく勝手に名乗っているというわけですが)文章を売ることをナリワイとしています。このたびYahoo!から「ジャズの情報を発信してもいいよ」と仰せつかったので、ジャズだなぁと感じたニュースを取り上げて、俎上に載せていこうと思います。よろしくお付き合いください。
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さて初回は、年も暮れようとしているというタイミングであり、このブログのオープニング記念ということもあるので、2012年を振り返ってみたいと思います。要するに、よく年末のテレビでダラダラと垂れ流されている「今年の重大ニュース!」的なものをやってみようということです。自分で“ダラダラと”と揶揄しているのに、よくそんな厚顔無恥なことを言えるもんだとも思うけれど、世間一般では「ジャズ」というニュースがどれくらい流通しているのかを確認してみようという、職業的な興味もあるのでお許しを。
早速、Yahoo!JAPANのニュースのタグをクリックし、「ジャズ」というキーワードを検索窓に打ち込んでみると、628件がヒットしました。そのうち“記事”は592件あるということなので、さかのぼってヘッドラインを読むと、8月のものがもっとも古い。そうか、4ヵ月くらいしか閲覧できないのか……。もちろん、新聞記事横断検索(G-Search)など有料サービスを申し込めば2年前までの新聞記事を調べることができるのだけれど、それだと多すぎそうだしなぁ……。ちなみに、フツーにYahoo!で「ジャズ 2012」と検索してみても約1,560,000,000件がヒットするので、これを無料で利用するという手もありますね。でも、量的に現実的ではないから、こっちも却下。まあ、2012年とジャズに関連するなにがしかの情報が15億6千万件もあるということは、それなりにジャズが日本で話題になっているという証拠なわけなんですけれど、それを1つ1つ検証していると、年を越してしまいますよねぇ。
ということで、Yahoo!JAPANのニュース・サイトにアップされた、さかのぼることが可能な8月からのニュースをチェックしたなかから、ボクが「おっ!」と感じたものを怒涛の3連続アップでお送りしましょう。
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●TVアニメ「坂道のアポロン」一夜限りのライブにファンが熱狂!|リッスンジャパン 8月31日(金)9時44分配信
8月27日に行なわれたTVアニメ「坂道のアポロン」スペシャル・ライヴの模様を伝える記事。
「坂道のアポロン」は、小玉ユキが小学館「月刊フラワーズ」に連載している漫画を原作として渡辺信一郎監督がアニメ化。渡辺監督は「カウボーイ・ビバップ」を手がけているので、アニメ・ファンのあいだでも放映前から話題だったのだが、演奏シーンが迫力あるとして放映後は音楽ファンのあいだでもさかんにツイートされるという盛り上がりを見せていた。
このイヴェントでは、劇中で演奏吹き替えをしていたプロ・ミュージシャンらが「名場面」と評判になった演奏シーンを生で再現し、会場は大いに沸いたと記事は伝えている。どちらかと言えば普段からジャズを観に行く層ではない人たちが集まったのではないかと推測されるのだが、いまやアニメは日本を代表する文化であり産業であり、それを支持しているアニメ・ファンは流行にことのほか敏感なトレンド・リーダー的存在であると言えるのだから、彼らが盛り上がったということは、ジャズ・シーンに大きな影響を与えかねない事象だったことを意味するわけだ。
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●ミシェル・ルグラン生誕80周年を記念して来日、オーケストラとの共演も!|CDジャーナル 9月4日(火)17時16分配信
ジャズ界の巨匠、ミシェル・ルグランの来日公演を告知する記事。エンタメ系の記事には、このようにライヴやアルバム発売の予告記事も多いのだけど、「な~んだ、宣伝か……」と読み飛ばされないようにすれば、「へぇ、どんな人なんだろうな」と興味をもってもらうきっかけにすることもできるんじゃないかと思っている。それができるかどうかは記者の力量にかかっているんだけど……。
ミシェル・ルグランの場合、数多くの名作映画の音楽を担当してアカデミー歌曲賞も受賞している音楽史に残るメロディ・メーカーであるということ、マイルス・デイヴィスらとのコラボレーションでジャズ・シーンでも名作を残していることなど、「へぇ」が盛り沢山なので、ジャズを知るきっかけになってくれることを大いに期待したい。
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●「和田誠ジャズカレンダー2013」、9月12日に発売|BARKS 9月8日(土)2時11分配信
ジャズ愛好家としても知られているイラストレーターの和田誠さんが制作したジャズカレンダー発売の告知。いろいろと趣向が凝らされているので、ついつい「マニアには垂涎のアイテムとなるにちがいない」的な論調に陥りがちなのだけれど、カレンダーというアナクロな商品が大きな注目を浴びるかもしれないと考えるのはいささか無理があるように思う。それよりも、レコード販売のディスクユニオンが「音楽好きの心をくすぐる関連雑貨の商品開発、販売を進めていく」という部分に注目したい。このような展開はヴィレッジヴァンガードや代官山蔦屋書店のようなビジネスモデルに追従するものだと思われるが、個々のセンスがシビアに問われる業態であるとも言える。これによって“和田誠の新たな魅力”および“ジャズを再発見”する視点が提起できる展開になることを祈念して――。
(この項つづく)