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ホロコースト体験のロールプレイングゲーム「The Light in the Darkness」

佐藤仁学術研究員・著述家
(The Light in the Darkness提供)

ホロコースト時代のフランスを舞台にしたゲーム、無料で配信

第二次大戦時にナチスドイツが600万人以上のユダヤ人を大量に虐殺したホロコースト。そのホロコーストを生き延びることができた生存者たちは、現在でも証言者として、博物館などで当時の様子を学生らに語っている。彼らも高齢化が進んでいき、生存者の数も年々減少している。

生存者らは老齢化が進み、肉体的にも対応できる人も少なくなってきている。こればかりは仕方ないことだ。そこで現在、ホロコーストの生存者らの証言や体験、記憶をデジタル化して残していく取組が全世界で進んでいる。いわゆる「ホロコーストの記憶のデジタル化」である。

ホロコースト生存者のインタビューを動画で撮影してデジタル化して世界に配信したり、ホロコースト生存者の動く姿を撮影し、それらを3Dのホログラムで表現したものもある。映画やドキュメンタリー、TikTokやYouTubeなどSNSを活用しデジタル化してホロコーストの記憶を後世に伝える取組の1つである。

ゲームなどによるデジタル化されたホロコーストの伝承もある。そして2023年2月には「The Light in the Darkness」というホロコーストの歴史を正確に伝えているロールプレイングゲームが開発された。エピック・ゲームズのストアで無料で配信されている。現在はパソコン版のみである。

第二次大戦時のナチス支配下のフランスで暮らしているユダヤ人家族がパリのル・ディブ競輪場に連行され、その後ピティビエ強制収容所に送られるストーリーをゲームのプレーヤーが体験する。

開発者のリュック・ベルナール氏はゲーム制作にあたってワシントンD.C.のホロコースト博物館で当時のホロコーストの歴史のアーカイブを研究したり、ホロコースト生存者からもヒアリングを行った。また祖母が戦時中にユダヤ人の子供をフランスからイギリスに移住させる作戦に参加していたという話もゲーム開発を行うきっかけになったそうだ。ベルナール氏は「ホロコーストの記憶を多くの人に伝えたい。記憶を絶やさないためにも多くの人に関心を持ってもらいたい」と語っている。

ホロコーストというユダヤ人にとって悲惨な歴史であるために、決して楽しいゲームではない。たくさんあるゲームの種類の中から、あえてホロコースト時代のユダヤ人の経験を体験するロールプレイングゲームをやってみようと思う人は決して多くない。

欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われており、ホロコーストに関する映画やドキュメンタリー、生存者の証言などデジタル化されたコンテンツを多く使用している。このゲームもホロコースト教育には最適であろう。

▼「The Light in the Darkness」

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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