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メルカリに出品すると海外で売れる? 「越境取引」盛り上がるか

山口健太ITジャーナリスト
台湾版のメルカリ(メルカリ提供資料より)

8月29日、メルカリが海外展開の新たな構想を発表しました。まずは台湾に進出し、越境販売を強化しています。

メルカリは米国事業で苦戦が続いているものの、日本のフリマの商品を海外から買えるようにする「越境取引」に活路を見出そうとしています。

業者を介した越境取引を台湾で強化

メルカリのフリマに出品すると、海外のお客さんが買ってくれる場合があります。これはメルカリの「越境販売」のサービスを利用したものです。

多くの出品者にとって海外にモノを売ることは想定していないと思われますが、海外とのやりとりや発送を代行する「Buyee」のような越境EC事業者との提携により実現しています。

海外から購入された場合でも、出品者は日本国内の指定の住所に発送すればOKとなっており、「出品者側で特別な対応は一切不要」とメルカリは説明しています。

この越境販売は2019年から5年近い実績があり、取引金額の多い中国や台湾では日本のメルカリに出品されているエンタメやホビーグッズなどが人気を博しているといいます。

台湾ではエンタメや推し活グッズが人気があるという(メルカリ提供資料より)
台湾ではエンタメや推し活グッズが人気があるという(メルカリ提供資料より)

これまでの取引は購入代行のサイトを介していましたが、今回発表した台湾進出により、メルカリのWebサイトに直接ユーザー登録をして買い物をすることが可能になっています。

実際に台湾版のWebサイトにアクセスしてみると、日本のメルカリに近い画面が表示されました(日本からアクセスした場合は日本版のサイトに転送されるため、以下の画面はVPNを利用したもの)。

台湾版のメルカリ。会員登録のキャンペーンを実施しているようだ(Webサイトより、筆者作成)
台湾版のメルカリ。会員登録のキャンペーンを実施しているようだ(Webサイトより、筆者作成)

たとえば「pokemon」で検索してみると、日本のメルカリに出品されているポケモンカードなど多数の商品がリストに表示されました。

商品の価格は、日本で555円のものが台湾では130台湾ドルとなっており、為替レートを考えると7%ほど高く感じます。送料は商品によるものの、おおむね500円から1500円程度、配送には1〜2週間かかるとのことです。

台湾からメルカリの商品を購入している様子。越境EC事業者としてBuyeeを利用しているようだ(メルカリ提供資料より)
台湾からメルカリの商品を購入している様子。越境EC事業者としてBuyeeを利用しているようだ(メルカリ提供資料より)

商品説明などは機械翻訳とみられ、一部には日本語表記が残っているものの、日本のメルカリに近い感覚で利用できる印象です。現時点で台湾からの出品はできませんが、将来的には出品もできるマーケットプレイス事業の立ち上げを計画しているようです。

なお、越境取引の金額が最も多い中国よりも先に台湾に進出した理由としては、「日本の商材への需要が高いこと、また規制やルールが日本と大きく変わらないことから、スピード感をもって進める上で判断した」(メルカリ 執行役員 General Manager Cross Borderの迫 俊亮氏)と説明しています。

発表会に登壇した執行役員の迫氏(メルカリ提供資料より)
発表会に登壇した執行役員の迫氏(メルカリ提供資料より)

商品によっては国外への輸出や台湾への輸入が規制されている可能性がありますが、そういった点は越境EC事業者が考慮しているとのことから、メルカリの出品者が意識する必要はなさそうです。

越境取引 国内のフリマにもメリットか

海外事業の具体的な目標は開示していないものの、越境取引を始めてからの約5年間で1700万件、流通金額(GMV)は3.5倍に伸びたとしています。

日本国内のフリマの規模に比べればはるかに小さいものの、高い値段で出品しても海外から買ってもらえたといった声があるとのことから、越境取引が日本のフリマを活性化させる効果はあるかもしれません。

また、6月からは韓国最大手の「雷市場」(ポンジャン)において、メルカリのファッションカテゴリーの商品を買える取り組みが始まっています。

韓国では現地のフリマアプリとの連携を始めるという(メルカリ提供資料より)
韓国では現地のフリマアプリとの連携を始めるという(メルカリ提供資料より)

他社の事例では、楽天ラクマが米国のeBayと試験的に連携しています。メルカリのWebサイトに集客するだけでなく、海外のフリマサイトからメルカリの商品を買えるようになるという動きにも注目したいところです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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