若き女優たちが「猫」になりきる!離島で出会った捨て猫をモデルにした物語は中学時代からの盟友と
もしかしたら、世界初(?)かもしれない。
映画「しまねこ」は、全編「猫語」、セリフのほとんどが「ニャー」や「ニャ」というユニークなネコ映画だ。
猫たちを少女の姿へと擬人化。鎌田らい樹、増田湖々、美咲姫という三人の若き女優たちがネコに扮し、瀬戸内海に浮かぶ北木島を舞台に、チョコ、ココア、ミントという捨て猫たちの日常と友情、そして出会いと別れを描き出す。
ただ、単に猫かわりがりした映画ではない。
捨て猫の現実や動物虐待といった、いまの日本の社会に厳然とある現実にも鋭く言及したドラマになっている。
手掛けたのは、井桁弘恵主演の「釜石ラーメン物語」や上大迫祐希主演の「青すぎる、青」など、近年も精力的に新作を発表している今関あきよし監督。
今も昔も変わることなく、魅力的なヒロイン映画を作り続ける名手に訊く。全五回/第二回
中学生のときからの付き合い、盟友、小林弘利氏について
前回(第一回はこちら)、3匹の猫のキャラクターのアイデアが浮かんで、それをもとに脚本を小林弘利氏に依頼をしたことを語ってくれた今関監督。
ご存じの方もいると思うが、小林氏は小説家として数々の書籍を発表する一方で脚本家としても活躍。
「L chage the World」や「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」「先生と迷い猫」など数々の映画の脚本を手掛けている。
今関監督とは学生時代からの親友になる。
「小林くんとはもうどれぐらいの付き合いになるんだろう。
なにせ中学生のときからの付き合いで、僕の監督デビュー作品になる1979年の8mm自主映画『ORANGING’79』では、照明をやってくれていました。あと、出演者のひとりに手塚眞くんがいるんですけど、彼の声は小林くんがアフレコしてくれています。
映画を好きになるより前、中学生のころ、僕も小林くんも車大好き少年だったんです。
当時、ホンダや日産などの新車の発表試乗会があると、免許ももっていなくて運転できないんですけど一緒に行く。
そして、試乗するおじさんにお願いして、後部座席に乗せてもらう。降りたらカタログ集めていたので、カタログをもらう。
ありがとうございましたと販売店の方に挨拶して帰る。
帰ってからが本番で、自分たちで運転もしていないのに車についてあれこれ批評するんですよ(笑)。
『今回はここがよくない』とか、『あれはダメだろう』とか、生意気にも。
ただ、小林くんがすごいのは当時から彼は文章を書くのが好きで、カー雑誌に投稿して実際に掲載されたんですよ。
もう一人車好きがいて3人組だったんですけど、僕らが『あれじゃぁマイナーチェンジの意味がない、フェイスを変えただけだ、中味はまったくかわっていない』みたいなことを言ったのを小林くんがまとめてくれて投稿したら、載りましたよ。
たぶん小林くんの文章が世に出たのはこれが最初だったかもしれない。
それぐらい彼は当時から活字が好きで、たとえば女の子が好きな男の子にラブレターを書きたいとなったときの代筆業もしていました(笑)。
その後の彼の作品につながっていくんですけど、女の子の気持ちがわかる、女の子うけする文章を書くのがうまい。
それから、当時もまあいまもかな、スヌーピーは女の子のファンが多いじゃないですか。
でも、僕らは車好きで、スヌーピー好きでもあって。
スヌーピーっていろいろと謎が多くて、それを二人でいろいろと研究して調べていたりもしました。
だから、僕も小林くんもちょっと変わった男子だったのかもしれないです」
脚本はどのようなやり取りを?
旧知の仲といえる、小林氏とどのような話し合いをして脚本を仕上げていったのだろうか?
「前回、お話をした通り、3匹の猫のキャラクターのアイデアが浮かんだので、それを伝えて、ひとつにまとめていってもらう。
そのやりとりを言葉で説明するのはなかなか難しいんですけど……。
僕の中で、パズルのピースのような形で見えているものがあるんです。
たとえば、こういう表情をした猫がここでこんなことをしているといったような。
そのピースを小林くんに投げると、いろいろな隙間を埋めてくれて、それまでピース単体だったものが2個、3個とはまってつながってくる。最後はすべてのピースがきっちりとはまって1枚の絵になる。
そんな感じでいつもひとつの物語が生まれますね」
(※第三回に続く)
「しまねこ」
プロデューサー・原案・監督:今関あきよし
出演:鎌田らい樹、増井湖々、美咲姫、利重剛、大島葉子、佐伯日菜子、
平岡京子、沖山マコトほか
脚本:小林弘利
公式サイト:https://mikata-ent.com/movie/1861/
全国順次公開中
筆者撮影以外の写真はすべて(C)「しまねこ」製作委員会