3人の若き女優が「猫」になりきる!モデルとなったのは離島で出会った悲しげな捨て猫たち
もしかしたら、世界初(?)かもしれない。
映画「しまねこ」は、全編「猫語」、セリフのほとんどが「ニャー」や「ニャ」というユニークなネコ映画だ。
猫たちを少女の姿へと擬人化。鎌田らい樹、増井湖々、美咲姫という三人の若き女優たちがネコに扮し、瀬戸内海に浮かぶ北木島を舞台に、チョコ、ココア、ミントという捨て猫たちの日常と友情、そして出会いと別れを描き出す。
ただ、単に猫かわいがりした映画ではない。
捨て猫の現実や動物虐待といった、いまの日本の社会に厳然とある現実にも鋭く言及したドラマになっている。
手掛けたのは、井桁弘恵主演の「釜石ラーメン物語」や上大迫祐希主演の「青すぎる、青」など、近年も精力的に新作を発表している今関あきよし監督。
今も昔も変わることなく、魅力的なヒロイン映画を作り続ける名手に訊く。全五回/第一回
岡山県の離島・北木島が舞台に
はじめに本作は、岡山県の離島・北木島を舞台にしている。
どのようにして企画は始まったのだろうか?
「実はもとをたどるとまったくの別の理由から始まっているんです。
今回の北木島ではない、同じ瀬戸内のある島の方から、『映画を撮りませんか』というお話をいただいて。
まあ、その時点で実現の見込みがあるのかはわからないわけですけど、せっかく声をかけていただいたし、まず観光がてら現地に行ってみたんです。
島に行ってみると、まあいいところで正直なところ『実現できるなら実現したい』と思ったんです。
でも、実際のところ、いろいろな条件や状況を突き詰めていくとかなり実現するには難しい。
島のみなさんにバックアップしていただいて、頓挫してしまったら申し訳ない。それで申し訳ないんですけど難しいですと伝えて終わったんです。
ただ、瀬戸内にいって島でなにか映画を撮るのはいいなと思って。
それでたまたまなんですけど、いま地域おこし協力隊というのがあるじゃないですか。それで、今回の舞台になる北木島に僕の知り合いが来ていた。
彼のことは良く知っていて、最近もSNSでやりとりをしていて、北木島でどんな活動をしているのか近況を知っていたんです。
そして、彼は昔からの映画仲間だったんです。
ということで彼に電話をして相談したんです。『瀬戸内の島を舞台に映画を撮りたいと思っているんだけど』と。
伝えたら話にのってくれて、もともと映画人でプロデューサーやCMのディレクター経験もあるので、なにが必要でどういう手順で進めればいいかわかっているから、すぐに根回しに動いてくれたんですよ。
そのようにして企画が始動した感じですね」
島を歩いてみると、捨て猫の多さに驚く
猫の物語にしようというアイデアはどこから出てきたのだろうか?
「はじめは漠然と瀬戸内海の島の物語を撮ろうと考えていました。
そこからシナハンというか視察というか観光という感じで(笑)、島をまあ周ってみたんですけど……。
やたらと野良猫、捨て猫ということになるのでしょうけど、誰かが飼っているわけではない猫が目につく。
さきほどいったように島の物語を作ろうと構想していたんですけど、なんか猫の方が気になって仕方がない。
それで急遽、猫が主人公の映画にすることにしようと方向転換しました」
島で暮らす捨てられた三匹の猫のキャラクターのアイデアが浮かぶ
そこから脚本はどのようにできていったのだろうか?
「島をめぐって猫たちを見ている中で、まず僕の中で、島で暮らす捨てられた三匹の猫のキャラクターのアイデアが浮かびました。
一匹は足が少し悪くて、人間から虐待されていた過去がある猫。
次に、自分を取り繕うためにちょっとした見栄を張ってしまう、悪気はない嘘をついてしまうというか。自分のことを不憫に思ってほしくなくて、つい『いい家の猫だったの』と悪気のない嘘をついてしまうような猫。
最後に、猫って基本的には水が大嫌い。それなのに、なぜか泳ごうとする猫。
この三匹の猫のキャラクターだけがパッと思い浮かんだんですよ。
その三匹の猫をもとにひとつの物語を紡いでほしいということで、脚本家の小林(弘利)くんにボールを投げました」
(※第二回に続く)
「しまねこ」
プロデューサー・原案・監督:今関あきよし
出演:鎌田らい樹、増井湖々、美咲姫、利重剛、大島葉子、佐伯日菜子、
平岡京子、沖山マコトほか
脚本:小林弘利
公式サイト:https://mikata-ent.com/movie/1861/
全国順次公開中
筆者撮影以外の写真はすべて(C)「しまねこ」製作委員会