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元WBAスーパーライト級王者は復活できるか

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Alex Sanchez/Premier Boxing Champions

 今週末、リングに上がる元WBAスーパーライト級王者のローランド・ロメロ。

 今年3月に、同タイトルの初防衛戦でイサック・“ピットブル”・クルスに8ラウンドKOで敗れ、キャリア2度目の黒星を喫した。

 ロメロの初黒星は、2022年5月28日。ジャーボンテイ・"タンク"・デービスに6ラウンドKOで眠らされたものである。

Amanda Westcott
Amanda Westcott

 デービス戦を迎えるまでのロメロの戦績は、14戦全勝12KO。WBA暫定ライト級王座も獲得していた。連勝街道を走っていた頃のロメロは、まさに怖いもの無しといった調子で勢いがあった。

 14戦目の相手、スウェーデン人ファイター、アンソニー・イギットは挑戦者でありながらリミットを5.2パウンドもオーバーした。ロメロはそんなイギットを荒々しい攻撃で圧倒し、計3度のダウンを奪って快勝した。

Amanda Westcott
Amanda Westcott

 ただ、今振り返れば、14戦全勝12KOというレコードは、簡単に勝てる相手ばかりを選んだ"作られたもの"感が拭えない。技術の高さを披露していた訳ではなかった。それでも、デービスに屠られてから1年後の再起戦にWBAスーパーライト級タイトルマッチが用意されたように、ロメロは政治力を後ろ盾としている。

 同ファイトでは、先日、有明アリーナで平岡アンディにKO負けしたイズマエル・バローゾからダウンを奪われ、その後盛り返してレフェリーストップで勝利した。とはいえ、この日のロメロはスピードが無く、手数も少なく、8ラウンドまでの採点は75-76、74-77、73-78と40歳のバローゾにリードを許していた。

Alex Sanchez/Premier Boxing Champions
Alex Sanchez/Premier Boxing Champions

 第9ラウンド40秒過ぎ、ロメロはショートの連打から右フックを顎にヒットし、バローゾをキャンバスに沈める。その2分後、ロメロがフルスイングのパンチを連打するなかで、レフェリーは試合を止めた。

 バローゾのダメージが、それほど深刻では無いように見えた為、「早過ぎたストップ」として論議を生んでいる。 

Esther Lin/Premier Boxing Champions
Esther Lin/Premier Boxing Champions

 そして、今年3月のクルス戦である。初回に左フックを喰らったロメロは、膝が揺れる。何とか凌いだが、ダメージは深刻だった。デービス戦後は毎試合、打たれ脆さを示している。

Alex Sanchez/Premier Boxing Champions
Alex Sanchez/Premier Boxing Champions

 WBA/WBC/WBOスーパーミドル級タイトルマッチ、サウル・”カネロ”・アルバレスvs.エドガー・ベルランガの前座でカムバックするロメロは言う。

 「俺がリングに上がれば、誰もが素晴らしい時を過ごせる。特にファンはそうだ。重要なのは、人に喜んでもらうことさ。今回もインパクトのあるKOを見せるよ。

 今、調子がいい。対戦相手のマニュエル・ジャイメスに対して、何か言おうとは思わない。ただ、試合ができることに幸せを感じる。数年前、ボクシングへの情熱を失いかけた。しばらく、自分が分からなくなっていた。でも、今は心底、この競技を愛している」

Alex Sanchez/Premier Boxing Champions
Alex Sanchez/Premier Boxing Champions

 28歳のロメロは壊れてしまったのかーーー。"もう一度"はあるのか。明日はどっちだ?

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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