皇室の縁談でも話題 「婚姻」と「結婚」、法的な違いは?
皇室の縁談が話題だ。報道では「婚姻」と「結婚」という用語が混同されている。しかし、法的には両者は全く別のものだ。
基本は「婚姻」
まず、憲法や民法などでは、「結婚」ではなく「婚姻」という用語だけが使われている。有名な憲法24条1項も「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し…」と規定されているし、次のとおり民法でも同様だ。
「男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない」
「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」
「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」
「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」
皇室典範の規定も、「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」というものだ。
刑法には「結婚」も
しかし、刑法には「婚姻」と「結婚」という2つの用語が登場する。例えば、次のようなものだ。
(1) 重婚罪
「配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、2年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする」
(2) 営利目的等略取誘拐罪
「営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を略取し、又は誘拐した者は、1年以上10年以下の懲役に処する」
(3) 人身売買罪
「営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、1年以上10年以下の懲役に処する」
2017年の刑法改正で(2)のわいせつ・結婚目的による略取誘拐が親告罪から非親告罪に変更されたが、改正前は、事件後に被害者が犯人と「婚姻」した場合、その無効・取消しの裁判が確定したあとでなければ告訴の効力はないとされていた。
届け出の有無がポイント
すなわち、法的には「婚姻」と「結婚」という用語は明確に使い分けられている。両者の違いだが、先ほど挙げた民法の規定からも明らかなとおり、婚姻届を提出し、受理されたものか否かという点になる。
「婚姻」は婚姻届を介した法的な人間関係、「結婚」はパートナーとの生活を含めた事実上の結びつきということになる。それこそ、法律には「結婚披露宴」という用語はあっても、「婚姻披露宴」という用語はない。
例えば、男性がある女性を妻にしたいと考え、事実上の夫婦生活を送るため、その意に反して拉致すれば、婚姻届を提出したか否かに関わりなく、(2)の結婚目的略取罪が成立する。
一方、配偶者のいる男性が妻以外の女性と不倫関係に至ったとしても、婚姻届の提出・受理がない以上、重婚罪は成立しない。わが国には姦通罪もないから、あくまで倫理上の問題に帰着するというわけだ。(了)