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ユニクロが商品開発力と社会貢献強化に向けスウェーデン五輪チームと新プロジェクト、柳井Jr.が責任者

松下久美ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表
プロジェクトを率いる柳井康治ファーストリテイリング グループ上席執行役員(公式)

「ユニクロ」(UNIQLO)は、さらなる良質なLifeWearの開発と社会貢献の強化に向けて、スウェーデンオリンピック・パラリンピック委員会(以下、スウェーデン五輪委員会)や選手との取り組みを前進させている。プロジェクトの責任者を務めるのは、柳井正会長兼社長の次男である柳井康治ファーストリテイリング グループ上席執行役員だ。

「新型コロナウィルスの蔓延で世の中の状況が大変変わってしまったとわれわれも痛感させられている。この時代において、企業のあり方もどんどん変わってきている。これまではアパレルブランドとして、日常生活を支えるLifeWearをこの世に送り出すことで世の中に貢献していきたいと思ってきたが、これからはそれだけではなく、本業に加えて、社会貢献活動にもより一層力を入れていきたいとユニクロは思っている」。

22日に東京とスウェーデンから行ったオンライン記者会見では、2019年1月にスウェーデン五輪委員会とパートナー契約(*1)を結んだのに続き、2021年開催予定の東京オリンピック・パラリンピック競技会(以下、五輪)に向けて、スウェーデンのアスリートによるチームブランドアンバサダー「ユニクロ チーム スウェーデン」(UNIQLO TEAM SWEDEN)を結成したことを発表。同時に、東京五輪に向けて共同声明「TOGETHER FOR THE FUTURE」を出し、年内に「ドリーム プロジェクト バイ ユニクロ」(DREAM PROJECT by UNIQLO)を立ち上げることを明かした。スウェーデンの子どもや若者たちがアスリートとの交流を通じて健康的な過ごし方を体験する場を提供していく。

  • 1=オリンピック・パラリンピックチームのメインパートナー兼オフィシャル・クロージング・パートナー契約を締結。2020年開催予定だった東京五輪と、2022年開催予定の北京冬季五輪を含め、4年間にわたり、練習や試合、大会において、スウェーデンの代表選手団と大会関係者にユニクロのアイテムを提供するというもの。
本業である生活を良くする服の提供に加え、社会貢献活動にも力を入れていきたいと語る柳井康治ファーストリテイリング取締役兼ファーストリテイリング グループ上席執行役員
本業である生活を良くする服の提供に加え、社会貢献活動にも力を入れていきたいと語る柳井康治ファーストリテイリング取締役兼ファーストリテイリング グループ上席執行役員

柳井上席執行役員は「ユニクロはこれまで、個別の個人競技のアスリートとグローバルブランドアンバサダー契約を結んできた。車椅子テニスの国枝慎吾選手、テニスの錦織圭選手、ゴルフのアダム・スコット選手、車椅子テニスのゴードン・リード選手、近年ではテニスのロジャー・フェデラー選手とスノーボードとスケートボードで活躍する平野歩夢選手の6人に活躍いただいている。

このたび13人のスウェーデンのオリンピアン、パラリンピアン、レジェンドとユニクロ初のチームブランドアンバサダー契約を結んだ。東京五輪でメダルの獲得が期待される現役のオリンピアン、パラリンピアン11人に、2人のレジェンドアスリートを加えた13人の『UNIQLO TEAM SWEDEN』とわれわれが一緒に取り組んでいくことの1つが、『オフィシャルクロージングの開発』だ。東京五輪の際、競技だけではなく、それ以外の24時間、365日の日常生活を支える新しいLifeWearのコレクションになる予定だ。とてもいい商品ができ上がってきているので、ぜひ近日中にお披露目したい」と語る。

新たに結成された「UNIQLO TEAM SWEDEN」と密に協力し、彼らの優れた洞察を活かし、高品質で革新的、かつサステナビリティの要素を含む新しいコレクションをデザイン。なおかつ、世界を舞台に挑戦し続けるアスリートの姿を通して、ユニクロが追求する“品質(クオリティ)”“革新性(イノベーション)”“持続可能性(サステナビリティ)”への取り組みを世の中に伝えていくというものだ。

取り組みの2つ目は、「ユニクロの新しい社会貢献プロジェクト『DREAM PROJECT by UNIQLO』の開始だ。スウェーデン国内の若者や子どもたちがアクティブでより健康的に過ごしていけるような社会を目指すための社会貢献プログラムになっている。このプログラムにも、『UNIQLO TEAM SWEDEN』のアスリートにも参加してもらおうと思っている」と続ける。

「今回、『UNIQLO TEAM SWEDEN』のアスリートの方々と新しいLifeWearコレクションを世の中に送り出すとともに、『DREAM PROJECT by UNIQLO』によって次の世代にもつながる新しい社会貢献の形を模索していきたい。これまでと違って、自社だけの利益のために活動するのではなく、次の世代にまで続く社会貢献活動も本業とともに力を入れていくことは、我々がこれから行っていく使命だと思っている。みなさまにはぜひわれわれの活動に注目いただき、ご期待に応えられるように頑張っていくので、ご支援のほど、よろしくお願いします」と呼びかけた。

移動式のサッカーやテニスのモジュール施設を開発し、スウェーデンの主要な都市を巡回。トップアスリートと交流しながら、子どもや若者がスポーツを楽しめる機会を提供する。プロジェクトの詳細を説明する遠藤真廣部長
移動式のサッカーやテニスのモジュール施設を開発し、スウェーデンの主要な都市を巡回。トップアスリートと交流しながら、子どもや若者がスポーツを楽しめる機会を提供する。プロジェクトの詳細を説明する遠藤真廣部長

具体的な内容については、遠藤真廣ユニクロ 2020_2022オリンピックパラリンピックプロジェクト部長が説明。

「『UNIQLO TEAM SWEDEN』は現役アスリート11人、過去に驚異的な記録を残した伝説のレジェンド2人の13人で結成。いずれの方々も人間的に素晴らしい魅力をお持ちだ。競技も多岐にわたっている。すばらしいダイバーシティを実現できるチームができたと思う」。

「ユニクロの服、『LifeWearコレクション』の開発への参画では、ユニクロのR&D、MD、生産チームと共にワンチームになって商品開発を進め、世界トップレベルのアスリートが、競技中はもちろん、普段の生活でも満足できるレベルの革新性、品質、そしてサステナビリティの3つの要素を持った全く新しい『LifeWearコレクション』を作り、2021年初夏に世界で販売を開始する」。

「『DREAM PROJECT by UNIQLO』では、チームのメンバーと共に、子どもや若者たちがスポーツを通して交流するイベントを行い、アクティブで健康的な生活を過ごせるような機会を提供するなど社会貢献活動を本年9月から実施していく。サッカーやテニスが楽しめる移動式のモジュール施設を開発し、スウェーデンの主要な都市を回り、一人でも多くの若者や子供たちにこのような機会を提供していきたいと考えている」

「スポーツと服の力を通して、一緒に世界を良い方向にもっていきましょう」

メディアからの主なQ&Aは以下の通り。柳井上席執行役員の人柄が垣間見える回答になっている。

Q:選手の選定基準を教えてほしい。なぜこの13人を選んだ選考ポイントは?

柳井上席執行役員:委員会の方々と一緒に選ばせてもらった。アスリートとしてのパフォーマンスが素晴らしいことみならず、人間性が素晴らしいことも選定基準に入れて選んだ。ユニクロという日本のブランドの特性上、日本と所縁(ゆかり)のある方を基準に選ばせてもらった。たとえば、レスリングのソフィア(・マットン)選手は、吉田沙保里選手と常に世界の舞台で戦われていた方や、セーリングのアントン(・ダールベリ)選手やフレドリック(・ベリストローム)選手は日本が大好きな方で、茅ケ崎で合宿をされたときには毎晩のように日本の居酒屋でお酒を飲み交わしていたという話もお聞きしながら、キャラクターに富んだ方々を選ばせていただいた。

Q:スウェーデンのアスリートとチームアンバサダーと契約した理由について。これまでの錦織選手のように、個人ではなくチームと契約を結んだ理由と、それがユニクロの価値向上にとってどんな意味があるのか?

柳井上席執行役員:今まで個人のアスリートの方々と一緒にもの作りをさせていただくと、その方個人のフィーリングや感触を中心にフィードバックをいただくことがある。今回、チームの13人という多い人数の方々と一緒にものづくりをさせていただくので、多様な価値観や競技も多岐に及んでいる。それぞれの競技の特性に合わせて求められる機能性など、われわれも気付けなかったことをたくさん学ばせていただいている点が大きな利点だ。なぜチームと締結したのかというと、やはりこれまで以上にパートナーやチームという多くの方々と共に成長していくことがとても大切な時代になってきていると感じている。その中でも今回、競技を多岐にわたって、多様な価値観を持たれる方々と一緒にやっていくことが、ユニクロがあらゆる人々に対してLifeWearという生活をより豊かに過ごしていただくための商品を作っていくうえで非常に有益だとわれわれも確信したから、ということになる。

Q:スウエーデンチームで最も関心がある競技はどの競技?

柳井上席執行役員:個人的には先ほど申し上げたセーリングの2人組に僕は注目している。アントン選手とフレデリック選手の2人組だが、アントン選手は非常にベテランのセイラーで経験豊かで、フレデリック選手が若手のころに憧れていた先輩にあたる。直接お話させていただいたときに、ペアを組むにあたって一つだけ決めているルールがあるとエピソードをうかがった。どんな試合でどんな結果が起こっても試合終了後には絶対に2人で飲みに行くことをルールとして決めていると。勝利も敗北もどちらかのおかげ、どちらかのせいで起こったものではなく、2人の結果であること。そして、世代を超えて2人でお酒を酌み交わしながら語り合うことでチームとしてペアとして成長していけるのだとマイルール、アワールールを決めていて、とても微笑ましかった。フレデリック選手はアントン選手をとても尊敬していて、アントン選手もフレデリック選手の能力を年下だけど高く評価している。お会いしてお話をしてとてもファンになったので、彼らに注目したいなと思っている。

柳井康治氏プロフィール:1977年5月19日生まれ、山口県出身。2001年3月横浜市立大学商学部経済学科卒業 。2001年4月三菱商事に入社、生活産業グループ配属 、製菓原料の輸入実務、生花店との合弁事業担当。2006年4月リテイル事業ユニットへ異動。日本国内スーパーマーケットへのコンサルティング業務 、国内小売業(コンビニエンスストア、外食チェーン、100 円ショップ等)の海外展開サポート業務を担当。2009年4月三菱商事在英国食品事業子会社Princes Limited へ出向。Chairman’s Office Manager(経営計画室)、Regional Development Manager(地域事業開発) を担当。2012年9月にファーストリテイリング入社。ユニクロでスポーツマーケティング担当。2013年9月ファーストリテイリング グループ執行役員、2018 年11 月ファーストリテイリング取締役(現任)、2020年6月ファーストリテイリング グループ上席執行役員(現任)、ユニクロ2020_2022オリンピック・パラリンピックプロジェクト担当。

「UNIQLO TEAM SWEDEN」とともに、「LifeWearコレクション」の開発と、子どもや若者向けのスポーツプロジェクトを行っていくことを発表した
「UNIQLO TEAM SWEDEN」とともに、「LifeWearコレクション」の開発と、子どもや若者向けのスポーツプロジェクトを行っていくことを発表した

なお、会見には来賓として東京会場からスウェーデン大使館のレーナ・フォン=シドー公使参事官、ストックホルムからスウェーデンオリンピック委員会のピーター・レイネボCEO、同パラリンピック委員会のオーサ・リナレス・ノーリン会長が参加した。

来賓として東京会場から登壇したスウェーデン大使館のレーナ・フォン=シドー公使参事官

「今回、スウェーデンと日本の強固な絆(きずな)を祝う席に出席できて嬉しい。両国は150年以上にわたり友好関係を築いてきた。共通の価値観があり、緊密な連携をさまざまな分野で行っている。共にどのようにつながり、さまざまな社会に対するソリューションを見つけるか。そして、持続可能で健康的な社会づくりをするかということに取り組んでいる。今の状況を鑑み、こういった活動は今まで以上に重要になってくる。ユニクロとスウェーデン五輪委員会のパートナーシップはまさに素晴らしい事例だ。将来に向かっていく、「TOGETHER FOR THE FUTURE」という共通のビジョンはサステナブルで活動的でヘルシーなライフスタイルを標榜し、次世代のアスリートに刺激を与えるものになっている。共通のビジョンとして手と手を携え学びあい、そして共通の課題に向かっていく姿勢だ。スポーツとファッションには境界線はない。このパートナーシップはさまざまなチャンスをスウェーデンの人にも日本の人にも与えると思っている。お互いにより深く知り合い、2つの国の友好的な絆を深められる機会になると思っている。スウェーデン大使館を代表して、今回の活動に幸多かれと思う。また、東京五輪の機会にすべてをぶつけていただきたいと思っている。来年、2021年にお目にかかるのを楽しみにしている。

ストックホルムから参加したスウェーデンオリンピック委員会のピーター・レイネボCEO

ユニクロとの素晴らしいパートナーシップは、ただメダルをとるだけのものでも服を作るというだけのものでもない。サステナビリティや社会貢献という意味もある。開催が延期され、コロナ禍から立ち直ろうとする中で、サステナブルでより健康的な生活をスポーツと服の力で復興していきたい。2019年1月にパートナーシップが発表されて以来、ユニクロと一緒に公式アパレルを作ってきた。ユニフォームはスウェーデンチームがベストなパフォーマンスができるように、ユニクロのLifeWearの大量の粋(スイ)を集めたもの。選手の24時間・365日をトレーニングでもレジャーでも試合でもサポートするコレクションになっている。東京の猛暑と高い湿度の中でもアスリートが涼しさを維持できるように開発されている。すばらしい機能性、シンプルなスタイル、スタイリッシュなデザインで、LifeWearにコミットメントし、品質、イノベーション、サステナビリティを追求することで社会をよりベターなものに、生活をより豊かなものにようとしている。子どもたち、そして、すべての人々にスポーツを楽しみ、よりアクティブに健康な生活が送れるようにというものだ。目標は、2021年に少なくとも2万210人の子どもたちが新たなスポーツと出合い、さらにアスリートが東京大会でメダルを獲得することだ。「TOGETHER FOR THE FUTURE」の共通のビジョンの下、「友情」「尊重」「卓越性」の価値の創造を目指しながら、このプロジェクトを通じてスウェーデンの若者や子どもたちが好きなスポーツを見つけることを応援し、人々がアクティブで健康的なライフスタイルを過ごせるようになることを願っている。「人々の暮らしと社会をよりよくするため、未来に向けて共に!」。

スウェーデンパラリンピック委員会のオーサ・リナレス・ノーリン会長

ユニクロと共に冒険に歩み出すことをとてもうれしく思っている。スポーツや体を動かすアクティビティにより、自立したサステナブルな生活が見いだせると思う。東京の2021年が私たちのショーケースになる。私たちのロールモデルとなる選手たちがより多くの人々の刺激となり、とくに障害を持つ人々や子供たちが活発にスポーツに取り組めるようになってほしい。それが自信を高め、夢の実現につながることは間違いない。「DREAM PROJECT by UNIQLO」がそれを可能にしてくれると思う。ユニクロさん、ありがとう。スウェーデンのパラリンピアンやすべてのパラスポーツ選手のために、スポーツの持続可能性や強さを共に築くことができると信じている。人々の健康的なライフスタイルのキーとなり、将来のより強いチームを構築するための基盤となると信じている。

ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表

「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上にわたり、ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。「ザラ」「H&M」「ユニクロ」などのグローバルSPA企業や、アダストリア、ストライプインターナショナル、バロックジャパンリミテッド、マッシュホールディングスなどの国内有力企業、「ユナイテッドアローズ」「ビームス」を筆頭としたセレクトショップの他、百貨店やファッションビルも担当。TGCの愛称で知られる「東京ガールズコレクション」の特別番組では解説を担当。2017年に独立。著書に「ユニクロ進化論」(ビジネス社)。

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